「ガケ書房の頃」「古くてあたらしい仕事」
読みました。「ガケ書房の頃」山下賢ニ 夏葉社
「古くてあたらしい仕事」島田潤一郎 新潮社
「夏葉社」の本をコンプリートしてみようとと思って、読んだ1冊。
京都の「ガケ書房」は恵文社と並んで、センスのいい書店だった。
2000年代にガケ書房までわざわざ足を運んだことを思い出す。
そのガケ書房がいつのまにか、「ホホホ座」と店名を変え、再出発
したというニュースを聞いた。
ガケ書房はずっと前からあって、ずっとあると思っていた。
本屋の棚をお客さんがつくっていく。棚は生きている。
わたしもその棚の前にたった1人であった。
10年間、お客さんには見えない苦悩があったんだぁ。
車が壁に突っ込んだ外観はとんがっていて、かっこよくて、
そのような苦悩を抱えているとは全然思わなかったよ。
この本を読んだきっかけは、「島田潤一郎」という著者がずっと
気になる人、本として、脳内にエントリーされていたから。
ひとり出版社、夏葉社を立ち上げた島田潤一郎さんの、
「古くて新しい仕事」を読んで、夏葉社の本全部読んでみたくなって
検索かけたら、夏葉社が出した本の中に、
あの「ガケ書房」の本があるーー!
そして、この1冊に辿り着いた。
島田さんは、「古くて新しい仕事」の中で、「本屋さんにいる人たちは
なぜかぼくと同じように孤独に見えた。夜の町のなかで白く輝く店の
光。立ち読みする人々の背。横顔」と書いていた。
島田さんが書いたこの言葉から、島田潤一郎という人は、
本と、本と人が出会う時間、空間をどう捉えていたのかが見える。
そして、この島田さんが手がけた、ガケ書房の本でも、
著者でありガケ書房店主の山下さんは、「僕は本屋は勝者のための空間
ではなく、敗者のための空間なんじゃないかと思っている。
誰でも敗者になったときは、町の本屋にへ駆け込んだらいい」と言っていた。
本屋、図書館にいる私の姿に重なる。
鬱で仕事をしていない、日中やることがない。
じゃあ、働けよって感じだが、働くほどのエネルギーはない。
やることがないから、本屋や図書館をぶらぶらする。
本と本がある場所をつくる人たちは、こんなわたしを待っていてくれるのだ。
1冊の本は意思を「表現」したもの。
夏葉社という出版社を通して、島田さんが表したいことが
本という表現を通して、見えてくることがある。