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2006年ウイグルの旅 5*音楽のお妃様

 ポスカムの隣、ヤルカンドへ。ここには伝統音楽をまとめたお妃様、アマニシャーハンのお墓がある。

北京時間と新疆時間

 一週間の旅で、我々はここまでたどり着いた。

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 写真真ん中の「ヤルカンド」すぐ下の「沢普(ズォープー)」が、ポスカムの中国名である。ちなみにポスカムのずっと南にはちょうどニューデリーがあり、ほぼ北にはカザフスタンのアルマトイがある(アルマトイのほうが少し西)。インドと日本の時差は3時間30分なので、新疆の西の方も時間間隔としては日本と3時間差くらいなのであるが、中国では一律に北京時間を用いている。中国と日本は1時間差なので、こちらの感覚としては、朝がまだ明けきらないうちに活動が開始され、まだ昼下がりなのに夕飯の準備が始まるということになる。

 そして最も大変なのが、非公式の標準時である新疆時間というものがあることだ。実質の感覚に従い、北京時間より2時間遅い新疆時間に従って行動すると、夜明けとともに時計も朝の時間になり、夕日とともに時計も夜の時間がやってくるのだ。我々は、なぜか夕飯だけはそれに従ってとっていた。新疆時間の夜10時や11時まで飲食飲酒が続く。それから部屋に帰りシャワーを浴びるなどする。二人部屋なのでシャワーや寝る準備を終え、部屋の電気を消すまでに1時間はかかる。そして朝は北京時間で8時に集合。集合前には朝食と、だいたい1泊で次の町へと進むのでパッキングが必要なのだが、これには1時間半はかかる。実質ベッドで寝ることができるのは5時間弱程度。この旅行で、これが最も大変だった。(バスで移動中にいつも寝てしまっていました。この経験から、私は旅行中には寝る前に必ず、翌朝使う化粧品等以外の荷物をスーツケースに入れるくせがつきました)

※ 以下はウルムチのレストランでの一例です

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 夕食はたいていビールで始まるが、

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 ワインがテーブルに出てくる。特産だからね。
 ただし、「ワインは女性の飲み物」なのだとか。男性陣は何を飲むかというと、

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 白酒(パイチュウ)。私は中国を旅するときにはなぜか白酒を勧められることが多いのだが、新疆では「白酒は男の飲み物だ!」とかで勧められずに済んだ。助かった!
 ともあれ、そんなふうであったため、朝がなかなか大変だったよというお話。

ヤルカンド、伝統音楽をまとめたお妃様の町

 ヤルカンド・ハン国という国があった。『地球の歩き方'05~'06 西安とシルクロード』(265ページ)によれば、ヤルカンド・ハン国は1514~1680年(現地案内板には1682年までと書いてあった)、東チャガタイ・ハン国の地方政権で、ここヤルカンドを首都と定めていたという。そしてここには、音楽好きな私には見逃せない人物がいた。

 アマニシャーハンである。

 アマニシャーハンはヤルカンド・ハン国の第2代国王の后であり、ウイグルの伝統音楽ムカームを体系づけた人物だ。いま「12ムカーム」と称される伝統音楽は彼女が収集、整理したものだという。

 現地に設置されている案内板(2006年当時)によると、次のようにある。

詩人アマニシャーハンは1526年にヤルカンドに生まれ、1540年にヤルカンド・ハン国(1514~1682年)の国王アブドラ・ラシッドの王妃となった。彼女は『アマニシャーハン詩集』などの不朽の著作を遺した。

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 アマニシャーハンのお墓がある、アルトゥンルク。お墓を写真に撮るのはいいのだろうかと逡巡したが、あまりにも美しいので失礼して撮影した。

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寄付のために買うもの

 アルトゥンルクにはモスクもある。その外で、興味深いものを見つけた。

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 これ、何だと思いますか?

 答えは……

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 塔の上の装飾!

 モスクには必ずある塔(ミナレット)。アザーン、つまり礼拝呼びかけが行われる場所である。ここのモスクのミナレットには三日月の装飾がなされている。その装飾が、モスク外の市場で売られているのだ。モスクに通う人たちがここで三日月の装飾を買い求め、モスクに寄付するのである。

 宗教施設の外で、その宗教施設に寄付するものや参拝時に使うものを売るというのはよくあることだ。山東省の孔子廟では大きな線香を売っていたし、日本でも絵馬が売られている。直接的にお金、お賽銭を寄付するのはもっと普遍的ではないだろうか。ミナレットの飾りも同様なのだ。宗教を越えて調査してみたくもある。

(続く)

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