本当にそういうこと?
なるべくお金は、趣味に回したい。
できれば書店で本を買いたいし、ゾーンにぶっ飛ばしてくれるライブは惜しまず行きたいし、これは持っておきたいと思うグッズも惜しまず買いたい。
バイトを始めて以降、金銭感覚が歪んだ。
割引シールが貼られた惣菜があれば迷わずそちらを選ぶ。
肉を買うときも、安いパックを手に取る。重さに乗じた値段になっているから、その分だけ量が少ないわけだが、「買った肉が200gか175gか」なんて知ったことではない。だったら、たとえ十数円でも安い方を選ぶ。
一方で、お金を引き下ろすのはめっきりコンビニのATMを利用している。その都度、手数料として数百円取られている。
安い肉を買ったり割引シールの商品を買うくらいなら、しっかり郵便局へ行って正規のゆうちょのATMで引き下ろした方が絶対に良い。
歩くのがめんどくさい、という理由でコンビニに行ってしまう。
このように、金銭感覚が変な歪み方をしている。
試しに「野菜炒め レシピ」と検索してみる。
一番上に出てくるレシピに書かれている主な材料は、「豚バラ、にんじん、キャベツ、ピーマン、もやし」となっている。
一人暮らし始めたての頃はこれくらい材料があった気がするが、今の僕が作る野菜炒めにはキャベツと肉しか入っていない。
鍋からはエノキもマロニーも鶏肉も鶏団子もネギもなくなって、豚肉と白菜と豆腐だけになった。
餃子を作るときに、ニラを買わなくなった。
焼きそばの具はキャベツだけになった。
青椒肉絲からはタケノコが消えた。
お茶漬けを食べるときに鮭を焼かなくなり、代わりに「鮭茶漬けふりかけ」を買うようになった。
カレーを食べるときに、福神漬けは買わなくなった。
チャーハンや焼きそばに紅生姜を入れたくなるが、それも買わなくなった。
金の節約にはなっているのかもしれないけど、最近、「本当にそういうこと?」と思うようになってきた。
餃子のニラ代、鍋のエノキ代、青椒肉絲のタケノコ代、お茶漬けの焼き鮭代、カレーの福神漬け代をケチって、何をしようとしているんだろうか。
一度しかない人生の、限りある食事を、ちょっとずつ削って、一抹の"物足りなさ"を抱えて、「人生って本当にそういうこと?」って。
「だったら一時間多くバイトすれば?」という意見にすら太刀打ちできないと思う。
「食欲」「性欲」「睡眠欲」と、”三大欲求”に肩を並べているだけあって、「食を削っているな」という感覚はすごくある。
三大欲求のうちの“食欲”を満たすものだけは直接金で買えるような気がする。
”睡眠欲”を満たすものは、あくまで促進やサポート。
”性欲"に関しては、買える人は買えるんじゃないですかね。知らないですけど。
カレーのために福神漬けを買う。たったそれだけで得られる幸福感というのがあるはずである。
500円のカレーを600円のカレーにグレードアップするんじゃなくて、500円のカレーに100円の福神漬けをつける。
その行為に意味がある。
#274 本当にそういうこと?