#44 【和訳】 Health Surface - Crass
初の試み、和訳! 僕の好きなバンド Crass の一曲を紹介したい。
Crass はイギリスのパンクバンドで、70-80年代に活躍した。
DIY (Do it yourself, 自分でやりなさい)精神を実践した数少ないバンドで、
レコードを自分で刷ったことがある(大きく損をした)。
あまりの人気の無さから、日本では知る人ぞ知るバンドになってしまったがパンク好きには絶対おすすめしたい。
おすすめの曲は Big A Little A だが、詩の評価では今回紹介する
Health Surface が格段に高い。
大まかに言えば医療サービスへの批判なのだが、実際には批判はしていない。ただ、医療の現場の惨状を写実的かつ叙情的に書き上げているため、僕たちに身も凍る冷たさを与えてくれる。
僕は昔から病院がこわかったのだが、その気持ちをこれほど見事に表現した詩は類を見ない。
Health Surface は Health Serviceのもじりだと思われる。
曲を聴きながら和訳を見てもらえると嬉しい。
直訳はChatGPTができる時代なので、意訳とする。
Places of sickness nurse me cold,
病床は私を冷たく看取り
Attendant whiteness glare in dark,
白衣は暗闇で輝く
Straighten out the winding sheet
Twisted round in poorest dreams.
哀れな夢を見てもだえる病人の
たわんだシーツを伸ばしてゆく
Shattered proofing of the lost,
崩れ落ちた喪失の痕、
Splinter shackled little wounds
Of cruelty and truth, they tie
抜けない棘の刺さった、残酷さと真実の小さな傷
The one way sickness up inside.
それは治らない病を示している
Regressive smile, a baby's laugh,
退廃的な笑顔、赤子の笑い
A learnt contortion of the mouth,
学習された口の歪み
Places of laughter leave me cool,
病院での笑いは私をぞっとさせる
Hot fire dying down to ash.
熱い炎が灰へと変わる
Beauty breezes through so swift,
Endless roundabout of grief.
美しさは終わりなき哀しみの渦を爽やかに吹く
Not much to ask, a rightful place
Where nothing matters, but can't touch
非の打ち所がない完璧な場所
何も問題ではなく、触れることもできない
Without a sinking heart, this sigh
Could be the wind among the leaves.
沈みゆく心をおいて、このため息は葉をすり抜ける風になるだろうか
This pain does not belong to me,
They've taken everything away
この痛みは私のものではない
彼らが取り去ってしまったから
To nurse the sicknesses of loss,
Instilled with fear and bleachy guilt
Impatient winds up in her cloth.
喪失の病を癒すために
消えない罪悪感と恐怖を植えつけられた
焦燥のうちの不幸な結末が彼女の服に残る
The tired shoes are splitting up
くたびれた靴は壊れてしまった
With weighty promises of love,
Waiting for the last to fall away
重い愛の約束と共に最後の時を待っている
Buckle noose around the strap
首にかけるストラップ
All that separates the flesh
それは肉を分けるもの
From green grass or sinking mud.
草原から沈みゆく泥の中と
Stagnating, knowing the delusion,
活気がなく、妄想がある
Clean sheets waiting for a body,
死体を待ち受ける清潔なシーツが
Slapped into life and slowly gutted.
生命に叩きつけられ、ゆっくり腑を抜かれる。
A place of sickness is to die in
病院は死ぬところである。
Tired of the cruelty and lying,
Drip-fed tears of the forsaken.
残酷さと嘘にくたびれ
捨てられたことへの点滴の涙がしたる
They say, "Well soon have you up and walking".
医師は「すぐに起きて歩けるようにしてあげましょう」と言う。
Took the prison for a stronghold.
牢獄を最後の要塞に見立て
Took the lies for a love-song.
嘘をラブソングに見立てる。
Paid for life on a shoestring.
わずかな金で生涯雇われている。
Waiting for the last to fall away
最後の時を待っている
Buckle noose around the strap
All that separates the flesh
From green grass or sinking mud
首にかけるストラップ
肉を草原から沈みゆく泥の中とをわけるもの
以上です。僕的に好きな部分は Place of sickness という表現です。
病院のことを病気の場所と呼ぶのがぞっとしますね。
ちなみにドラマーのペニー・ランボーは
アルチュール・ランボーの詩集を読んでいたそうです。
芸名つけちゃうくらい詩人なんですね。
や!終わり!