横浜Love Story 第8話 "恋愛小説で学ぶ中国語"
--- これまでのあらすじ ---
主人公の草間圭は横浜のとある会社の企画部で働く独身33歳。ある日、彼の部署に台湾人の新入社員が配属されてきた。彼女の名前は加藤香織(日本語名)。日本人の母を持つ彼女は、日本語ペラペラの23歳。この10歳も年の離れた新入社員に、草間は一目惚れしてしまったのである。
(著者:りとるけい/中国語監修:YayaLee)
第4話 はじまりはマグニチュード5.0
第5話 過福はあざなえる縄のごとし
◇ ◇ ◇
第8話 コスモクロックで空中散歩
さっそく俺たちは、さっき窓から見えたあの観覧車「コスモクロック」の乗り場にやってきた。
「啊!你看你看!」 ※あ、見て見て
はしゃぐ加藤が指差したその先には、こう書かれていた。
--- シースルーゴンドラ
「シースルーゴンドラ~???」
なんと、一部のゴンドラが、全面ガラス張りになっているというのである。
「我想搭這個~~~!!」
※これ、乗りたいです~~~!!
加藤が興奮気味に叫んだ。
「いや、だめだ。加藤、やめとけ」
「え~~~~? あ、もしかして草間さんって高いところ駄目な人ですか?」
「いや、そうじゃない、お前、スカートだろ?やばいじゃないか、シースルーなんて」
「え~~~?スカート長いから大丈夫ですよ~~」
(こいつ・・・ぜんぜん、そういうことにめげないタイプか・・・)
俺は別に高いところが駄目なわけじゃなかったが、シースルーゴンドラなんて目立つものに乗れば、注目を浴びすぎる。万一誰かに写真でも撮られて、facebookか何かにアップされ、それを会社の誰かに見られたら大変なことになる。
--- 行動は慎重にしなければならない・・・
俺がそんなことをウダウダ考えている隙に、加藤はすでに鎖から放たれた子犬のように、シースルーゴンドラの列の方に走り出していた。
「あ、おい、加藤、ちょっと待て!」
結局、俺たちはシースルーゴンドラに乗ることになった。ただ、いざ列に並んでみると、皆自分たちのことで頭がいっぱいで、他人の写真を撮るようなヒマな奴はいないことがわかり、ホッとした。
--- 15分の空中散歩
念願がかなって加藤と二人で乗る観覧車に心が躍った。ゴンドラがゆっくりと上がるにつれ、みなとみらいの街や港が少しずつ眼下に広がり、まさに空中を散歩しているような開放感があった。
「あ、あっち!」
加藤が石川町駅の方を指差した。
「我外婆家在那個方向!」
※おばあちゃんの家、あっちの方なの
加藤の母親の実家は、石川町駅の先の山手の丘の上にあるらしく、小さい頃は根岸森林公園でよく遊んだと言っていた。
「根岸森林公園、真是令人懷念」
※根岸森林公園懐かしいなあ~
俺は、「じゃあ、今度一緒に行ってみるか?」と喉のすぐそこまで言いかけてやめた。
(入社したばかりの、10歳も年が離れた外国人の部下を誘うなんて、セクハラと言われても仕方ないからな・・・)
そんな俺の胸の内も知らずに、加藤はさっきからあちこち指さして、楽しそうにしていた。
「你去根岸森林公園都做什麼?」
※根岸森林公園でいつも何して遊んだんだ?
「賞櫻花!」
「ん?なんだそれ?」
加藤が何と言ったのかうまく聞き取れなかった。
「お花見です」
「原來如此」 ※なるほど
「你中文講得很好,太棒了」※中国語上手ですよ、すごいですよ
「不會不會,你過獎了」 ※そんなことない、ほめすぎだ
実は加藤の朝の中国語をこっそり聞いていたから、ひとくち会話は結構マスターしたのだった。
「草間さん、もしかして、朝の中国語レッスンこっそり聞いてました?あははは」
(ひっ!!!鋭い!!!)
俺はそれには答えず、話題を花見に戻した。
「根岸森林公園は、春になると桜がきれいだよな」
「對對對!你去看過嗎?」
※そうそうそう!見たことあるんですか?
「我小時候去過一次,很漂亮」
※子供の頃一度だけな。とってもきれいだった
俺がそう言うと、加藤は目をキラキラさせて、「ねえ、草間さん!」と身を乗り出した。
「ん?」
「じゃあ、春になったら~一緒にお花見しませんか?根岸森林公園で」
(え???)
加藤がどういうつもりでこんなことを言うのか、俺には見当もつかなかった。
「ははは、そうだな。夏が終わって、秋が来て、冬を越せば春だ」
「あはは、まだずっと先の話ですね~」
--- 楽しい・・・
知り合ってまだ間もない女性とこんな風に打ち解けて話せるというのは、もしかして年がものすごく離れているせいなのかもしれない・・・
俺は、この自分にはまったく理解できない行動パターンを持つ加藤という女にどんどん魅かれていくのがわかった。
◇ ◇ ◇
書籍の第6話で、草間は加藤と横浜の桜木町で待ち合わせることになり、第8話はその流れで、コスモクロックや赤レンガパークを訪れます。第6話以降は、中国語の会話が増えてきますので、書籍の中国語部分には、ピンインがふってあります。ピンインは本来、簡体字用の発音記号で、台湾では、注音(ジューイン)という発音記号が使われますが、これは一般の中国語学習者には馴染みが薄いので、ここでは取り上げていません。
恋愛小説で学ぶ中国語【繁体字】『横浜Love Story』総集編(第1章~3章)
恋愛小説で学ぶ中国語【簡体字】『横浜Love Story』総集編(第1章~3章)
※中国語の日常会話を例文とともに紹介しています。50フレーズを目標に始めましたが、まだ9フレーズしかアップしていません^^