泣いても、いいんだよ。
ちょっと前から、心の奥がカタッと音を立てている。何度か重なったことで、自分のなかで言語化ができた話。
息子のリクエストによって、二人でお風呂に入ることが多い我が家。
そんな二人のお風呂タイムに、たまに耳にする言葉が心に残っていた。
カタッ。
コトッ。
カタッ。
心の音が続いてくる。ちょっと一呼吸してから、声を出す。
熱血スポーツマン&男三兄弟の環境で育った夫が、以前息子にかけていた言葉を知っている。
なにげなく、すごくポジティブに、大きな笑顔と共に発せられた言葉を横目に、私の心の中ではカタッと音がなっていたのを覚えている。
こうやって言われたのを覚えているから、お風呂の中でチリっとしみる傷口を見せながら、胸を張って「泣かなかった」ことを紹介してくれる。
「日本人って、痛い時も我慢するから損してるよなー」
そんなことを幼い心に思ったのは2000年代のワールドカップの頃。
ちょうどイギリス生活を終えて、日本に戻って、日本人になろうと頑張っていた頃に、テレビの中の選手たちを見ておぼえた違和感。
赤や黄色のユニフォームの海外選手たちは、痛いシーンに遭遇するとアクションが激しい。
「いたーーーーーーい!!あぁー、もうダメだ。立ち上がれない。ちょっとレフリー、見てたでしょ。ねぇ、もう足折れたかもしれないよ。こりゃ絶対ペナルティーだわ。あーー、痛い!!」と言ってるのが、遠くから見ていてもわかるほど。
一方で、ブルーのユニフォームに日本人は、同じくらい痛いんだろうけど「痛がる姿はカッコ悪い」とでも言わんばかりに、サッと立ち上がる。ぼーっと見ている人は、彼が痛いシーンに出くわしたことなんて気づかないくらい。
誇張に感じる人もいるかもしれないけど、でも‘’海外帰りの中学生”という繊細な心を持っていた当時、この違いは鮮明に映った。
海外暮らしから人生が始まった息子。どれくらい海外が長くなるのかは分からないけど、日本人らしさは大切にしてほしいという思いで、とりわけ渋い名前を付けた。
でも「自分を表現すること」「ネガティブなこともちゃんと伝えること」に関しては、日本人を真似なくていいと思う。
だって、周りの人たちは500倍くらいのアピール力を持って「痛いことは痛い」「嫌なことは嫌」「好きなものは好き」と表現しているんだもん。
そんな中で「歯を食いしばって耐える」なんてやってたら、自分がつぶれちゃうでしょ。
そんな、お母ちゃんの、思い。お風呂で何度も繰り返したら、伝わるかな。
▼すりむいた場所が「チリッ」とするお話。