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コロナ禍でのこどもたちの創作ミュージカル ①新しい創作プロセスのデザイン

2020夏の舞台に向けて動き出そうとした矢先のコロナ禍……「推進する勇気」と「撤退する勇気」2つの勇気を持って、コロナ禍で取り組む「オリジナル舞台」までの道のりを綴ります。

ソーシャルディスタンス・マスク・窓全開・消毒・検温・少人数制・大声のワークは工夫。できる対策は全て行う。大切なのは、情報を掴み取り、自分の行動基準を持つこと。こどもたちを守るための自己アラート基準は厳しく。活動3日目には、早速自己アラートを発動することとなった。

2年ぶりの創作ミュージカルは原点回帰

大人スタッフ代表の出産のため、1年間の活動休止後復活に向けて動いていた矢先のコロナ禍。その前に有識者と2年にわたる実践研究も行い、「大切にしたいこと」を実現するためにどうあるべきか、分析も進めていた。大切にしたいこととは、7年前に活動を開始した時から変わらない。一人ひとりが生きる糧となる「自分らしさ」に出会い、舞台という場で輝き放つこと。

うまさとか、派手さとか、そういうわかりやすいものだけではない。すでに自分の内側にあるもの、溢れ出てしまうもの。新たに挑戦したことによって知り得る未知のもの。誰かの真似ではなく、その先にある「自分らしさ」だ。そして、自分らしさが見えるものこそアートであり、それが咲き乱れた舞台を創りたい。

それにはどうしたらいいのか?表現するという文化は、ネアンデールタール人からの積み重ねがある。創作におけるプロセスや学問的な背景をまとめた創作ミュージカル・ガイドは100頁以上に渡った。

でも、ここに集まったこどもたちが全て。どうこどもたちの感性と知性を信じきるか、力を発揮できる環境を創れるか。細かいことはおいておいて、3つを意識しながら、1年ぶりに活動を進めていこう、決意新たにした矢先のコロナ禍。活動はオンラインから始まることになった。

①感性・知性を信じるために、その思想とプログラムの構造を常に意識する。
②自分らしさに気づくために、問いの「広さ、深さ、高さ」を意識する。
③自分らしい表現のために、アーティストの視点に「触発」する認知プロセスを意識すること。

創作ミュージカルのプロセス

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プロジェクトは、そこに集うメンバーが混じり合い、触発されることで化学変化を起こし、蠢きながら進んでいく。そのため、毎度目的や狙いや構成もアウトプットも違ってくるものの、だいたい以下のようなプロセスがある。

(1)テーマ発見 :心理的安全な場所作りと同時に、答えのないものや目に見えないものを想像し創造する演劇体験を経て、作品のテーマを発見する

(2)配役決定 (3)プロットの完成 (4)ミュージカル化: 演劇体験に加え、言葉にできない感情を音楽を使って自己解放と自己表現する体験を経て、つくってはこわすを繰り返し、作品を立体的にストーリーや舞台をプロトタイプする

(5)稽古 :活動自体がドラマと一致し、想像と経験が結びつく体験、紡ぎ出した作品と心情やキャラクターをより深く知り、なりきることから新たな自分に出会う

(6)エンディング創作 :体験とドラマが一体化し、本当のエンディング・テーマに気づくことで視点を広げ、自信を持って舞台コミュニケーションに挑む

(7)本番 :舞台という装置で表現することで、お客さんとコミュニケーションする

コロナ禍における創作ミュージカルのデザイン

自己アラートを設けての開始

オンラインでの活動を経て、1ヶ月は活動はおやすみ。ウイルスの性格がある程度わかってきて対策が取れること、感染状況が落ちついている今しかないと7月を迎えた頃、夏休み中の活動と限定して観客はほぼ家族だけの舞台でオリジナル作品を発表する活動を行うことに決めた。

①期間は1ヶ月(通常の5分の1) ②人数は10人以下(通常の半分) ③ソーシャルディスタンス・マスクでの活動 ④自己アラートを設定し、オンラインとオフラインの臨機応変に切り替え ⑤完全招待指定席 

テーマ発見プロセスの設計

プロジェクトの始まりはとても大切な時間。新しい仲間と出会い、仲間を知ること、自分を知ることから創作のテーマを見つけていく。通常は20名から30名の参加者で4-6日15-25時間くらいかけていくが、今回は短期間である故に、以下のように変更した。

まず、オンライン(ビデオ通話)での面談:参加するこどもたちと一対一でお話、その後に保護者の皆さんと面談をして、ひとりひとりの状況・状態をある程度把握した。創作のテーマはスタッフ間で予め設定した。

その後は可能な限りオフライン(3日間):少人数で行うため、全員が一同に介せない。「年齢が近いグループ → 多年齢でのグループ →多年齢でのグループ」することで、発見を増やしていくデザインに。小学生は中高生と触れ合うことで方法を学び憧れをもつ、中高生は小学生と触れ合うことで自由な発想を得たり、思いやる力を自然と発揮するように。

そのため、創作のテーマは、誰もがそれぞれの発達段階で考えられ、「広く・深く・高く」視点を変えることができるもの、さらに四日市リトル・ミュージカルの再開を印象づける意味ももたせた。この3日間ののち、その後のプロセスを再度設計する。

オンラインとオフライン地続きの創作&表現活動

対面での活動でオンライン参加を可能にしたこと、リスクを感じたらすぐにオンラインに切り替える。自己アラートに従い、安全に活動を行うことから見えてきたことがある。

対面にオンライン参加はできる

対面で、オンラインのメンバーがいるとき。彼が映し出されたパソコンが置かれた椅子に、人格を帯びたように感じた。もし当日舞台に立てなくても舞台にパソコンが登場しても伝わる表現もできるのではないか。そうすることで、舞台での表現活動を諦めざるを得ない人が少なくなるのかもしれない、そんなアートの可能性すら感じた。なんと言ってもこれが成立するのは、対面で活動するメンバーの意識の持ち方ができていたからである。

場の特性を知り共有すること

対面2日目のワークショップ後高熱がでたメンバーがいたことから、3日目の活動は、すぐさまオンラインに切り替えた。withコロナ時代のあり方をこどもたちは非常にポジティブに捉えている。オンラインではマスクもなくフラットに話せることで、建設的なディスカッションやエチュード(即興演劇)もできた。マスクで表情が見えない、近づけない、大声も出せないことが心理的な安全性を確立仕切れない課題も生まれていたが、結果的に3日目にオンラインとなったことで、2日で出会ったメンバーの表情がよく見える上に、空間を使いながら全身で演技しなくてはいけない大変さから解放された。「顔が見えてやっぱりいいね」「会話に集中してみよう」会話に集中すれば良いと、制約が味方をして小学生たちは即興会話劇に集中できた。

コロナ禍では、いつ対面の活動をオンラインに切り替える必要があるか日々読めないが、今後は特性を生かし、ハイブリッドな活動で個性を大切にすることもできそうだ。

少人数単位でのワークでも全体での一体感は出せる

グループ分けをしっかり行うことで、中高生が小学生を気遣い、小学生たちが中高生を憧れる雰囲気が自然と生まれている。毎回新しいメンバーとあうという緊張感が残ったが、こどもたちに聞いてみるとそれもポジティブに捉えていた。こどもたちの力を信じることの大切さを感じた。

ミッションを共有することでポジティブな発想の転換ができる

今回の活動がどういう活動なのか、どうみんなで乗り越えるのかを共有することがとても大切であった。最初のビデオ面談はとても大切な時間である。何に注意をするかも確認しあった。ソーシャルディスタンスを意識できるようなワークを多く入れ込んだことで、こどもたちからも自らソーシャルディスタンスを意識するような表現が現れた。

余白を持つことの大切さ

短時間。換気・消毒、そして短時間での活動。昼ごはんも一緒にできない。しかし、余白を持つことで、冷静に振り返りができた。制約があることから理解できることは、このコロナ禍で気付かされるところが多い。



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