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アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』:全編が歌の圧巻パフォーマンス

新型コロナウイルス感染症で世界中で公演中止、外出制限の状況の中、アンドリュー・ロイド・ウェバーが「The Shows Must Go On!」と称した企画で、毎週、自身が手掛けたミュージカルの公演映像を期間限定で無料配信。

第2弾として、2012年に上演された『ジーザス・クライスト・スーパースター(Jesus Christ Superstar)』が配信された(イギリス時間の2020年4月10日(金)19時~4月12日(日)19時)。

劇場ではなくアリーナでの上演で、劇中で「バーミンガム」と呼び掛けているので、バーミンガムでの上演映像?

映像は英語字幕付きだが、所々、省略したようなつづりになっていたり、つづりが違っていたり、言葉が抜けていたりした。

本作では、イエス・キリストが十字架にかけられるまでの最後の7日間が、ロックミュージックに乗せて描かれる。1971年にブロードウェイで初演。作曲はアンドリュー・ロイド=ウェバー(『オペラ座の怪人』『キャッツ』)、作詞はティム・ライス(『エビータ』『ライオンキング』『アイーダ』)で、2人とも当時20代という若さ(劇団四季のサイトより)。

世界各地で民衆が立ち上がった動きを踏まえた演出で、舞台上の大きなスクリーンには、民衆、SNSなどネット上の書き込み、テレビショーの画面、マスコミといった現代的なモチーフが映し出される。アリーナは広大なので、スクリーンは、歌っている主要人物をアップで映し出すという重要な役割も果たしていた。

全編ほぼすべてが歌で構成され、「ロック・オペラ」「ロック・ミュージカル」と称されるのにふさわしい作りだ。「ミュージカル」は文字通り音楽(曲と歌)なのだと思い知らされた。出演者たちの圧倒的な歌唱力、パフォーマンスに見られるスター性、そして演奏家たちによる生演奏と、映像で見ていてもすごい迫力だ。

ところでこのミュージカル、全編通してずっと泣きながら見るものなのだろうか?(笑)私はキリスト教徒ではないし、キリスト教が好きでもないのだが、もちろんパフォーマンスに感動したのもあるが、イエスやユダやマグダラのマリアなどを思って悲しくて切なくて、ずっと泣いていた。

子どものとき、初めて、「イエス・キリストは神の子として生まれ、それゆえに30歳くらいで死ななければならなかった、救世主になるために」という話を聞いたとき、「それってつら過ぎるんじゃないか。なぜ『父』であるはずの神は『子』であるイエスを死なせたのか?」と疑問に思ったときの気持ちを思い出したからかもしれない。もしかして、キリスト教圏で育った人も、同じように思うことがあるのだろうか?

民衆、群衆に勝手に期待され、その期待に応えようとし、しかし応えきれずに、見限られる。

新約聖書に描かれている内容を忠実に取り上げてはいるのだが、イエスはマグダラのマリア(娼婦だったがイエスと出会い聖女になった)と恋愛関係として愛し合い、そして最後に明かされるように、「裏切者」のユダはイエスを愛しているという設定。しかしこの設定は、俗人としての私たちが常に妄想してきたものでもある。

聖書と違うのではと思われる部分は、イエスの母、聖母マリアが登場しないこと。でも、イエスが成長してからは、聖書にもあまり登場しないのかもしれない。しかし、少なくともキリスト教絵画や彫刻では、イエスがゴルゴタの丘に連れていかれるときは聖母マリアがそれを見て嘆いているし、亡くなった後は聖母がイエスを抱えて嘆き悲しむという「ピエタ」というモチーフもある。

しかし、このミュージカルでは、死ぬ間際にイエスが「Where is my mother?(母はどこにいるんだ?)」と叫ぶように、母親は不在だ。死後もイエスを抱えるのはマグダラのマリア。彼女に聖母の姿も重ねられているというところもあるのかもしれないが。

イエス・キリストと書いてきたが、英語ではミュージカルのタイトル通り、「ジーザス・クライスト」のように発音する。そして英語では、「Jesus Christ!」や「Jesus!」は感嘆の表現として使われることがある。ただし、敬虔なキリスト教徒などの立場からは品のない表現とされ、使うのは避けた方がよいとされている。「jeez」や「geez」はその婉曲表現だ。

しかし、このミュージカルでは、当然だが、「Jesus Christ」が呼び掛けとして使われる。それが面白い効果を発揮しているように思う。

聖書の物語を、人間味あふれる、そして常に更新され続ける、しかし歴史に通底している事象として描いた、たぐいまれなミュージカルなのではないだろうか。

作品情報

Director Laurence Connor presents this contemporary re-imagining of Andrew Lloyd Webber and Tim Rice's legendary rock musical Jesus Christ Superstar. The world renowned phenomenon portrays the story of the last seven days of Christ leading up to his crucifixion as seen through the eyes of Judas Iscariot. Filmed as an arena rock opera, the performance features a star-studded line-up which includes award-winning musical comedian, Tim Minchin as the role of Judas Iscariot; pop icon and former Spice Girl Melanie C as Mary Magdalene; radio DJ Chris Moyles in his stage debut as King Herod; and Ben Forster, to take on the title role of Jesus. This award-winning creative team is sure to captivate audiences and transform the hugely popular stage production into a unique, modern, state-of-the-art spectacular.

TRACK LIST:

1. "Overture" 00:18
2. "Heaven on Their Minds" 04:49
3. "What's the Buzz/Strange Thing Mystifying" 09:32
4. "Everything's Alright" 13:46
5. "This Jesus Must Die" 18:06
6. "Hosanna" 21:46
7. "Simon Zealotes/Poor Jerusalem" 24:44
8. "Pilate's Dream" 30:10
9. "The Temple" 31:49
10. "Everything's Alright (reprise)" 37:04
11. "I Don't Know How to Love Him" 37:36
12. "Damned for All Time/Blood Money" 41:30
13. "The Last Supper" 47:22
14. "Gethsemane (I Only Want to Say)" 54:11
15. "The Arrest" 1:00:57
16. "Peter's Denial" 1:04:23
17. "Pilate and Christ" 1:05:50
18. "King Herod's Song" 1:08:35
19. “Could we start again, please?” 1:12:44
20. "Judas' Death" 1:15:25
21. "Trial Before Pilate (Including the 39 Lashes)" 1:20:57
22. "Superstar" 1:27:23
23. "The Crucifixion" 1:32:02

▼The Shows Must Go On

▼Jesus Christ Superstar - FULL STAGE SHOW | The Shows Must Go On - Stay Home #WithMe


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