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美術展「ボテロ展 ふくよかな魔法」Bunkamura ザ・ミュージアム:量感が迫ってくる絵

人間も、果物も、花も、すべてが膨れている。マッスの迫力がすごい。柔らかでいながら、中世美術のように硬直している。ほほえましさがあふれる一方、皮肉が効いている。

《黄色の花》《青の花》《赤の花》の3点組の巨大な静物画は、ぽってりとした花瓶にぽってりとした花の束が生けられている。花、花瓶、背景、台の色合いも計算し尽くされているのだろう。花瓶の周りに両手を回して抱きかかえたいという衝動に駆られた。

梨の絵には、梨から顔を出す虫がいる。近くで見ると、虫にはかわいらしい顔、目と口が、点と曲線で描かれている。

異様な宗教画もあった。太っていて脇毛の生えているキリストの絵は初めて見た。現代の服を着たり、太っていたりする、聖女、聖母子、天使も描かれている。

太っていて足を上げているバレエダンサーの絵は、身体の各部が球体などに分割できるようにも見えて、抽象画のような趣も感じた。

宗教画にも政治家の肖像画にも、皮肉があふれている。

近年になると、ややマンネリ化が進み、筆致のニュアンスが乏しくなっているようにも見えた。

人物の顔は、無表情の仮面をかぶりながら、実は雄弁である。

会場内の年譜のパネルには、イラクのアブグレイブ刑務所の囚人が拷問を受けている絵のシリーズについて記載されていた。そのシリーズも展示してほしかった。全体としてほんわかとした雰囲気にしたいという展示意図のために省かれたのだろうか?

構図や色彩が綿密に組み立てられている印象。硬さと柔らかさが同居する画風だ。

「クラーナハにならって」という絵もよかったが、ポストカードにはなっていなかったようだ。


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