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「子ども・青少年のためのアートメディエーション入門」フランスの美術館の事例紹介(オンライン講演会)

アンスティチュ・フランセ東京のオンライン講演会「子ども・青少年のためのアートメディエーション入門」の視聴メモ。

ライブ動画配信で、日本語はYouTube、フランス語はFacebookで配信された。YouTubeは視聴者110~130人程度。

登壇者:マルタン・ブルギニャ(ポンピドゥ―・センター)の話

・まず見て、五感、感覚でアートを捉える。
・メディエーターは、アートに触れる人に伴走し導く役割。
・ポンピドゥーでは子どもたちに体験してもらう。作る。

▼18歳以下対象のポンピドゥー・センターのウェブページ

■子どものアトリエ
・子どもや若者向けのエリア「子どものアトリエ」はオープンにしており、館の入り口近くにあり、子どもや若者を重視していると示している。
・中高生向けのエリアがある。作る実践も大事。
・理論的なものではなく、日常生活に近いものからアートを体験。
・25~30人の子どもに2人のメディエーターを付ける。
・ゲームのルールは教えるが、子どもたちが自分で作ること自体が大事。
・まず作って、次に作品を鑑賞する、という順番。既存のアート作品が先入観につながらないように。
・ポンピドゥーの建物、建築は三角錐でできている。三角錐の素材を組み合わせて大きな物を作る活動(アクティビティー)もしている。
・ポンピドゥーの建物に使われている鮮やかな色のチューブを使うアクティビティーも。
・アトリエの空間も含めて自由に考えてもらってクリエーションをしてもらっている。

■子どものギャラリー
・毎週日曜はポンピドゥーの無料開館日で、「子どものギャラリー」を開ける。
・年2回展覧会をしている。
・子どもが仮装をして展示作品の中に入る展覧会などがあった。世界巡回展。
Alain Bublex, “Habiter 2050” (2010):このアーティストのほかの作品とは作風(見た目)が異なる。2050年の世界をつくり、子どもたちがその中で体験するもの。アーティストのサイトポンピドゥーのサイト
”Mon œil” (2016):タイトルは「私の目/まさか」の意。5人のアーティストが映像(ビデオ)作品を作った。視線、視点を考える作品。ポンピドゥーのサイト(動画が視聴できる)

Davide Balula, “37.5℃” (2018):空間のあり方を感じる。寝転がったり、聴診器で自分の鼓動を聞いたり、自分の熱を感じたりする。ポンピドゥーのサイト

■製作所 La Fabrique
・8~12歳の子どもたちのために新たにつくった空間。
・機械を使い、仕組みも知る。
・装置は移動式。装置の大きさは子どもの体の大きさに合わせている。
・常にスタッフがいて、機械の使い方などを伝えている。

Studio 13/16
・13~16歳向け。
・無料。学校の授業がない日に開放。
・友達と映像を見たり雑誌を読んだりもできる。
・アーティストと関われる。
・この場所にまず慣れてもらい、そこから展示室などに行ってもらえるとよい。
・ワークショップもあるし、音楽やダンスなどのパーティーも開催。「お祭り」。
・ポンピドゥーのほかの場所も使ってティーンエージャーが参加できるイベントをすることも。
“Fashion Factory” (2011):ファッションデザインや雑誌制作を知る。身近なファッションも、アート、アーティストと関係していることがわかる。ポンピドゥーのサイト

登壇者:サラ・マテラ(ミル・フォルム)の話

・ミル・フォルムは、6歳までの子どもたちのための施設。
・ポンピドゥーとパートナーシップを結んでいる。
・2019年オープン。
・アートの実践。
・付き添いの大人も一緒にアートに触れる。

▼ミル・フォルムのサイト

・「アートを発見」できるアートセンターとして、内装も工夫。
・自由に動き回れる。(導線が固定されていない?)
・アクセスしやすい。
・組み立てられる、台や椅子などいろいろな用途がある道具を置いている。想像力を育む。
・「アゴラ」というエリア。舞台もあり、赤ちゃんも過ごせるし、音楽、ダンス、演劇などの公演も。棚に収めたミニアート展示も。
・赤ちゃんにミルクをあげたり、食事ができたりするエリア。毎週、食育を視野に入れたイベントを開催。
・さまざまな活動ができるが、「何もしない」がOKのエリアもある。
・子どもを連れてくる大人も、アートを発見する。
・水曜から日曜まで開館。(フランスでは水・土・日は学校が休み)
・予約不要で来館できる。「いつでも来られる」のが大事。
・アーティストのPaul Coxが文字ではなくなるべく絵でわかるように記号的な図(アイコン)をこの施設のために作った。施設のシンボリックなものになっている。※板橋区立美術館「つくる・つながる・ポール・コックス展」のサイト
・アーティストが作った作品を展示。定期的に展示替え。
Adrien Rovero, “La maison magique”:木製の家のような作品。その中を探索する。調理場と浴室がつながっている、暖炉がテーブルになる(?)など、「普通の家」とは違う造り。
・アーティストにとっては、アートプロジェクトを考えるヒントにもなる。
・オートクチュールの刺繍作家のプロジェクト。みんなで1つの刺繍作品を作る(期間を経て徐々にできていく)。共同作業、人とつながる。この施設では、子どもも大人も差はなく、同じレベルの人間になる。
・メディエーションの訓練を受けたスタッフがいる。時には一歩引く。さまざまな試みにも参加。
・来館者には施設の利用法を最初に説明するが、あとは必要とされるまで来館者を放っておく。発見につながる導きだけ行い、手出しし過ぎないのが大事。
・2歳までの子どものエリア。Elise Gabrielというアーティストなどがこれまでに空間をつくっている。コルクなどの材質を、触ったり上に乗ったり動いたりして、感じる、など。口に入れて味を感じる。
・2歳までのエリアで、トレッキングのような体験ができる空間をつくったアーティストもいる。木、トンネル。
・料理デザイン。Hopla Studioによる。チョコレートの粒に粉状の食べられるものを付けて味わう、など。
・施設内に小さな映画館がある。10分間の短編映画などを上映。子どものためにセレクトした作品。短編映画祭の上映作品も紹介。
Sylvie Amblardというダンサーがレジデンスを行い、制作。“Les rendez-vous dansés”というダンスを見せた。(ライブショー)
・初の子どものためのアートセンターとして、講演会やシンポジウムも開催。
・毎週金曜の朝に館内のカフェに、親子が来て、カウンセラーなどに相談できる。
・館外活動もしている。
・施設にアーティストが来て関わってもらうことを重視している。それがメディエーターを育てることにもつながる。
・施設は山など自然の多い地域にあるので、山の上でファミリーコンサートも行った。ハイキングと音楽の組み合わせ。

Q&A

・アーティストとの共同作業の最大予算は、1000万円くらい。
・ポンピドゥーに作品が所蔵されているアーティストのうち、子どもや若者向けの作品制作ができそうな人を、プロジェクトマネージャーが選んで、依頼する。美術館の展覧会向けではないので、柔軟にそれを理解し対応できる人。子どもが好きな人。
・ミル・フォルムでは、子ども向けの作品を作っていないアーティストにも頼んでいる。
・ミル・フォルムでは「アートを発見」してもらう目的。クリエーションの中に浸り、ほかの人と交流して関係を築き、よい生活ができるように。活動の中を生きてもらう。学校のように「成果」を求める場ではない。
・ポンピドゥーでも、成果や評価は求めない。「できるようになる」「役に立つ」というものではない。体験は一人ずつ異なる。
・コロナ禍のロックダウン中は、オンラインの活動をした。映像作品を公開したり、ワークショップ動画を公開したりした。ミル・フォルムでは学校向けの動画を公開した。
・ミル・フォルムは市から予算が出ている。
・アート体験の地域差は、フランスではそんなにないと思う。パリでは機会は多いが、アートへのアプローチ法やメディエーションのレベルは国内どこでも同じと考えている。
・ミル・フォルムのメディエーションのスタッフはフルタイム7人、パートタイム2人。契約は11カ月。美術学校、演劇学校の新卒者など。教育、研修としての意味合いで短期間の雇用をしている。
・ポンピドゥーでは、「メディエーター」はプロジェクトやプログラム設計などをして(?)、「アニメーター」がワークショップの現場で子どもに接する役割。(メディエーターは英語では「ファシリテーター」)
・難しい年頃のティーンエージャーに、自主的に美術館に来てもらうのは大変なので、興味深い企画をして、飽きないように変えていく工夫が必要。映画、写真、グラフィックアートが好きという特性を踏まえる。
・ティーンエージャー向けには、ワークショップでも、好きな時間に自由に出入りできるようにした。拘束しないことが重要だが、魅力的なプログラムをしなくてはならないということでもある。

イベント情報

オンライン講演会:子ども・青少年のためのアートメディエーション入門

登壇者:サラ・マテラ(ミル・フォルム)、マルタン・ブルギニャ(ポンピドゥ―・センター)
進行:杉浦幸子(武蔵野美術大学)

日時:2022年1月26日(水)18時~20時(オンライン配信)

参加無料・予約:Peatix https://peatix.com/event/3104396/view

使用言語:日本語、フランス語(同時通訳付き)

対象:アートメディエーションに関心のある文化関係者、アーティスト、学生の方など誰でもOK

主催:アンスティチュ・フランセ日本
協力:ポンピドゥー・センター、ミル・フォルム

イベント詳細

サイトより抜粋引用

アートメディエーションとは、アート作品や文化遺産と、多様な鑑賞者との距離を近づけ、作品との出会いを最高の形で提供することを目的とする活動です。伝達、翻訳、解釈、意見交換、共有など、様々な実践や取り組みのかたちがあり、フランスでは30年以上前から広く行われています。
本プロジェクトはそのなかでも、子ども・青少年のためのアートメディエーションに焦点をあてます。生まれてからの数年間が「文化の砂漠」とならないよう、幼児から思春期の子どもたちが容易に文化へアクセスできるようにするために、フランスではどのようなアートメディエーション活動が行われているのか、さらに、アートメディエーションにおける文化機関の役割や、社会、家庭、学校での教育における文化の位置づけについても考えます。
ポンピドゥー・センターは、子ども・青少年のためのアートメディエーションをそのアイデンティティのひとつとしており、2019年にはクレルモン・フェラン市と共同で、0歳から6歳までの子どもを対象とする初のアート・イニシエーション・センター「ミル・フォルム(mille formes)」を設立しました。
本プロジェクトは、2つのフェーズで開催されます。第一のフェーズとして、今回はポンピドゥー・センターならびにミル・フォルムの取り組みを紹介する講演会を開催します。
第二のフェーズでは、実践編として、日本の文化関係者が子ども・青少年のためのアートメディエーションを学ぶワークショップを開催する予定です。
登壇者:サラ・マテラ Sarah Mattera(ミル・フォルム)
美術史と、文化プロジェクトの企画・マネージメントについて学んだ後、ロット・エ・ガロンヌ県のモンサンプロン・リボス城で現代アートの仕事に携わる。その後、パリのポンピドゥー・センターのアートメディエーション部門のプロジェクトマネージャーを経て、同部門の主任となる。幼児のためのアートの重要性を説き、現在、ポンピドゥー・センターと共同で創設されたクレルモン・フェランにある0歳から6歳までの子どものためのアート・イニシエーション・センター「ミル・フォルム」のディレクターを務める。子どもや青少年のためのアートに関する著書があり、多くのアーティストのカタログにも寄稿している。
登壇者:マルタン・ブルギニャ Martin Bourguignat(ポンピドゥ―・センター)
パリのパンテオン・ソルボンヌ大学にて芸術・文化遺産の振興について学び、2009年よりポンピドゥー・センターに勤務。13歳から16歳までの子どものためのスペース「スタジオ13/16」の創設とそのプログラムに携わる。子どもや青少年向けの活動開発を担当した後、巡回展の主任として、ポンピドゥー・センターのオフサイト活動や同館による企画展の巡回業務を担当。2015年には、オフサイト活動とパートナーシップ部門の主任となる。文化芸術へのアクセスの拡大を目的とする地域的・国際的な活動を通じて、アートメディエーション部門のプロジェクトやノウハウの普及に貢献する。また、ポンピドゥー・センターのプロフェッショナル・スクールが行っているコンサルティングのミッションも担当している。
進行:杉浦幸子(武蔵野美術大学)
大学で美術史を学んだ後、競馬を運営する特殊法人に勤務。しかし、アートと社会をつなぎ生まれる可能性を学び直したいと考え、イギリス、ウェールズ大学院教育学部に留学、美術館教育学と出会う。帰国後、フリーランスのギャラリーエデュケイターとして、3-12歳の子どもたちを対象とした鑑賞ワークショップのデザイン・実施を開始。2001年に「横浜トリエンナーレ」の教育プログラムをデザイン、森美術館でパブリックプログラム部門を立ち上げる。2005年から美術大学に軸足を移し、アートを社会資源と捉え、多様な人々のために活かす教育活動、プロジェクト、コンサルタントを行なっている。2014年から国内各所の美術館と連携した0歳児によるアート鑑賞研究、2017年から保育園を美術館に変換するプロジェクトを行っている。
ポンピドゥー・センター国立近代美術館 教育普及・パブリック局
ポンピドゥ―・センターの教育普及・パブリック局、アートメディエーション部門は、同センターが実施する文化プロジェクトを、定期的にあるいは特別なイベントの一環として、さまざまなメディエーション活動を通じてサポートすることをミッションとしています。さらに、ポンピドゥー・センター内や外部の施設において、子ども・青少年向けの芸術・教育プログラムを企画・実施しています。ポンピドゥー・センターでは、文化コーディネートに関するさまざまな課題について、専門知識やノウハウを提供するコンサルタント業務を展開しています。これらのミッションは、文化施設の創設、芸術・文化教育プログラムのデザイン、あるいは特定のプロジェクトにおける専門家や事業者の支援に関するものです。
ミル・フォルム
ミル・フォルム(mille formes)は、クレルモン・フェラン市がポンピドゥー・センターとのパートナーシップに基づき2019年に開館した、0歳から6歳までの子どもを対象とする初のアート・イニシエーション・センターです。子どもやその親や家族のために特別にデザインされたアートプログラムを通じて、小さな子どもたちが、夢を見たり、創造したり、アクティビティを行ったりと、創造性のあらゆる分野を探求する機会を提供しています。ミル・フォルムは、アートと幼児期に関連するさまざまな課題のリソースや研究のためのスペースでもあり、専門家だけでなく親たちもこれらのテーマについて交流することができます。

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