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三東瑠璃『Matou』セッションオンライン劇場

三東瑠璃氏が振付・出演の『Matou』(2015年初演)が「セッションオンライン劇場」でライブ配信された。アーカイブ動画が配信後2週間、2020年6月7日(日)まで公開される。

三東氏のダンスは、公演「平原慎太郎ベストアルバム―Grease3」で少し見たことがあり、それ以来、この『Matou』はずっと見てみたかった作品だ。

ライブ配信で見始めて、最初は無音。徐々に、波の音のような、何かが擦れるような音が入ってくる。

肌に密着する肌色の衣装で、うずくまる体が、もぞもぞと、ゆっくり動き出す。

呼吸による体の一部の隆起も、足指の細かい動きも、すべて振付となっている。

首を床に着けて、うずくまる体の背中が映し出され、だんだん、どっちが体の上(首)か舌(お尻)かがわからなくなってくる!

その体勢から両脚を床に着け、上半身を腰からゆらゆらさせるさまは、上半身と下半身がまったく別個の生き物として接続しているようだ。

こんなに体の隅々まで「使える」身体が、この世に存在するとは。

開始直後ですでに踊りと体に魅入られていたが、突然、ライブ配信が中断されてしまった。「YouTubeの利用規約違反のため削除」されたとの表示。原因は、「体に密着する肌色の衣装だったので、自動的に裸と判断されてしまったためか?」と推測されるらしい。

20時開始だったが、急遽、新たな動画URLが設定され、衣装を変えて、20:45に再スタートした。

今度は「稽古着」的な衣装。Tシャツと花柄のスパッツのようなものだ。30分ほどのダンス、やはり素晴らしかったが、皮膚を「まとう」というコンセプトの衣装でなかった分、本来の衣装の効果の高さが実感できた。

三東氏の踊りを見ていると、「人間の体って、なんなんだったっけ?」と改めてその存在が不思議に思えてきて、初めて見るもののように探求したくなってくる。慣れ親しんでいると思い込んでいたものが、そうでなかったと気付かされ、畏怖の念すら湧いてくる。

上演後には、YouTubeのチャット機能を利用して視聴者から感想や質問を募り、トーク。

本日の司会はダンサーの中村蓉氏、動画撮影はダンサーの伊藤麻希氏。中村氏はまじめに質問をさばき、伊藤氏のカメラワークもとてもよかった。時折、三東氏の体の一部しか映らないことがあり、「そっちも見たい!」という欲求が刺激され、なんだかかえってよかった(笑)。意図的?!

三東氏がダンスで大事にしているのはやはり「体」で、新型コロナウイルス感染症対策で緊急事態宣言が出て稽古場に行けなくなったこの2カ月間は、踊ることができず、なぜ踊ってきたのかを考え、今後踊り続けられるだろうかと自問自答し、不安にもなったらしい。

今回のオンライン公演が踊りを再開するきっかけになったそうで、『Matou』が賞を取ったときに審査員長に言われた「一生踊り続ける罰」が継続されることになった模様。よかった!!本当に、こういう人は「踊らないことが罪」でしょう。



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