3.うつとこ

 日々のエセー『まいにちとことこ』。
第3回は、「うつとこ」抑うつについて。

 2022年の夏、ぼくはとうとう限界を迎えた。

 その年、ぼくは教育実習に大学院入試、卒論の提出を控え、気ばっか焦っていた。7月の第1週には新型コロナに初めて罹り、ビジネスホテルに隔離されて、余計に焦っていた。

 そんな日々を過ごした後、7月中旬に、急にお腹が痛くなった。その前の年の暮れ(2021年12月)に街の居酒屋で鳥刺しを食べてカンピロバクターに当たった以来の強烈な痛さと不快さ。あのときは、獨協大学で開かれていた無料のインターナショナル・フォーラムにZoomで参加するために我慢した結果、緊急入院するはめになった。しかも、すぐには良く治らなくて、退院して数日あいたのち、同じ病院の、同じ病室に2回も入院することになる。結局、14万円が飛んでった。

 そんなこんながあったから、その後遺症かなと思っていた。精密検査もした。初めての(鼻から)胃カメラに、超音波エコー、レントゲン、すべてやった。けど、結果は異常なし。むしろ病院の先生から「良い胃腸だね!」と謎に褒められるくらい。

 でも鳩尾付近の謎の鈍痛と抑うつがよくならなくて、院試のために飛行機で大阪に行く前日に、ようやく予約が取れて、心療内科なるところに初めて行った。
 問診を終えると、先生は言った。「断定はできませんが、内科的な異常がない以上は、やはり精神的なところから来てると思います」。
 その瞬間、ほんの少しだけホッとした。診断は、「持続性抑うつ障害(気分変調症)」、もしくは「身体表現性障害」ということだった。投薬での治療を勧められたが、院試前ということと、投薬への抵抗感があって、結局はしなかった。

 それで今に至る。胃腸の不調は治まったから「身体表現性障害」の可能性は限りなくなくなったけど、抑うつは波を伴って続いている。希死念慮がほとんどないのが幸いだ。10年以上前から続く抑うつとは、死ぬまで付き合い続けるんだと思う。熟年離婚しないようにしないと。

[2024.8.14]