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昭和12年のお嬢様料理「トマトオムレツ」
トマトオムレツ
掲載:「料理の友」昭和12年8月号(原文抜粋)
【材料】五人前
トマト三個、玉子十個、ハム三匁、牛乳五勺、
莢隠元少々、盬、胡椒、バター、パセリ
【拵へ方】
ハムは二分角の賽の目切にします。トマトは熱湯をかけて皮をむき二分厚さ位に輪切にし、自然に種子は出てしまひますから、横に二分位に小さく切ります。玉子をよく溶き牛乳五勺まぜ、ハムとトマトを入れて静かにかきまぜます。フライ鍋にバターを煮溶かし、一度に五分の一づつ入れて、手早く箸でかきまぜ半熟程度になつた時、半分を返し重ねて半月形に型をとり、外がほどよく焼けたらさらに移します。莢隠元は筋をとりバター炒めし盬胡椒で味をあつさり付けて附合わせ、パセリも添えます。食盬を少々振って頂きますと大變結構です。
まずは読み解く
散文レシピの情緒はともかく、明解さにはちょっと遠い……。しかも単語もあれこれわからない。ということで、読解からです。
「匁」は「め」と読みがなが振られていますが、ざっと1匁=3.75gということでいきましょう。同様、「勺」は1勺=18.039mlということに。
が!
正直、そんな細かい指定を守る意義を感じないので、現代的におきかえることにします。
1匁≒小さじ1/2(2.5g)強(3gを目指すかんじで)
1勺≒大さじ1(15cc)強(表面張力ばんざいなかんじで)
このくらいで妥当なんじゃないでしょうか。料理は合理的に。
言い忘れました。「分」は1分=3.03mmなので、まるめて3mmとします。
(追記:「盬」は塩の旧字です)
【作り方】()内は私の想像
(1)ハムは6mm厚の賽の目切りにする
(2)トマトを湯むきした後、6mm厚の輪切りにする。種が流れ出るのに任せて、さらに6mm程度の厚みになるよう、横に包丁を入れる。(要するに賽の目?)
(3)玉子を割り溶き、牛乳75ccを入れる。
(4)(3)に(1)と(2)をいれて、静かに混ぜ合わせる。
(5)フライパンにバターを溶かして、(4)を5回に分けて流し入れ、箸で手早く混ぜながら、半熟を目指す。
(6)半熟になったところで、玉子を半月形に折り返す。
(7)さやいんげんはバター炒めにする。
なるほど理解。それほど難しくない。
問題は五人前という分量。何しろうちは人間二人と猫一匹のちい所帯、食べきれないのはよろしくない。
ということで、実際につくるのは二人前に減量することにします。
味わうのが目的ですからね。多すぎるのも、味を損ねる要因です。
作ってみた
と思ったところで、いきなり頓挫。
ハムです。ハムの正体。家の冷蔵庫には薄切りハムがありますが、たぶん、レシピで想定しているのは塊のハムです。「料理の友」に広告が出てた鎌倉ハムさんのハム、薄切りじゃない気がするし、そもそも、薄切りハムは6ミリ厚にできない。
(私向けメモ:当時のハムの流通経路が知りたいので、調べよう。)
ないものはあるもので作るのが家庭料理。そう、これはお嬢様料理だけれども家庭で作るのが大前提。あるもので、あるもので。
付け合わせのサヤエンドウは用意がないのと、バターが嫌いなひとがいるために割愛します。バターの代替品はオリーブオイルです。
二人前にしたときに玉子は4個、トマトは2個、スライスハムは(ハムの容量が5枚入り58gだったので)1枚としました。
手順通りにやって、フライパン上。半月形にするのが難しくて……いびつ。
湯むき用のお湯を沸かすところからカウントしても、ここまで30分弱でした。
できあがりはこんなかんじです。アップにしてあるのは、シズル感をみて貰いたかったからです。トマトの水分でややパシャっとしています。
たまご部分はふわふわで、トマトのやさしい酸味と甘みで大變結構でございました。
所感
日常メニューに追加していい味と手軽さだと思うんですが、トマトの水分対策は必要だと思う。なので、個人的には【作り方】(4)のところで、先にトマトをフライパンにいれて、じわじわと火を通して水気を飛ばし、ハム入り卵汁を投入するのをおすすめします。
そうやって作ったのがこちら。
ふわっと感が控えめなのは、玉子も控えめだからです。取り急ぎ、玉子2個、トマト1個で作ったバージョンです。薄味が好きなら、ケチャップ等の調味料はいりません。(もちろん、お好みでどうぞ!)
ごちそうさまでした。
(了)