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千葉と北海道の森の意外な共通点~似ているけどちょっと違う~
森と木が大好きな北海道の佐野です。
実は、昨年3月までは、千葉に住んでいました。千葉では、真冬でも氷点下になる日はほとんどなく、雪も滅多に降らないので、冬の北海道は、厳しかったですね。
気象庁のデータを見ると、1月の平均気温が千葉市が5.7℃、札幌市が-3.6℃でした。
意外とそっくりだった森の姿
このように、全く気候が異なる千葉と北海道なのですが、意外なことに、千葉の森と北海道の森には、外見上の特徴に共通点があったのです。
千葉県元清澄山
北海道旭岳
南国の丘陵地帯と北海道の山岳地帯が同じ!
1枚目の写真と2枚目の写真、何となく似ていると感じませんか?
どちらも、針葉樹と広葉樹が混ざりあった、針広混交林となっています。
ところが、1枚目の写真は、千葉県南房総の元清澄山の山頂付近で標高300m付近で、2枚目の写真は、北海道の屋根である大雪山系の旭岳の中腹で標高800m付近なんです。
南国千葉の丘陵地帯と雪国北海道の山岳地帯の森の外観が似ているなんて、不思議ですよね。
逃げ場を失った樹木たち
千葉の針広混交林を構成する針葉樹は、モミ、ツガ、ヒメコマツです。このうち、モミは比較的暖かい土地にも適応できるのですが、ツガやヒメコマツは、本来の生育適地は、もっと標高が高い場所です。
それでは、どうして、千葉の低い山に生育しているのでしょうか?
実は、逃げ場がなかったからです。
今よりも気温が低かった氷河期は、千葉の森に広範囲にツガやヒメコマツが生えていました。その後、温暖化が進み、樹木たちは、徐々に標高の高い場所に生育地を移動させていたのですが、千葉県には、最高峰の山でも400mしかありません。本来は、もっと、高い場所に移動したかったはずなのですが、仕方なく、低い山で耐え忍んでいるわけです。
このような現象を寸詰まり現象と呼びます。
似ていてちょっと違う千葉と北海道
なお、千葉県の針広混交林は、寸詰まり現象の結果、山頂付近に局所的に残存している感じですが、北海道では、低地帯から山地帯まで、広範囲に針広混交林が広がっています。それでは、千葉と北海道の針広混交林を細かく比較してみましょう。
針葉樹の比較
まずは、針葉樹です。千葉では主にモミとツガですが、北海道ではトドマツとエゾマツ・アカエゾマツとなります。さすがに、気候が違いますから、ひとくちに針葉樹といっても、暖かい場所が好きな樹種と寒くて雪が得意な樹種は違いますよね。
千葉のモミ
北海道のトドマツ
千葉のツガ
北海道のエゾマツ
広葉樹の比較
続いて、広葉樹を比べてみましょう。
千葉の針広混交林を構成する広葉樹は、コナラやヤマモミジ等の落葉広葉樹やシラカシやスダジイ等の常緑広葉樹です。
一方で、北海道の針広混交林は、標高によって異なりますが、ミズナラやイタヤカエデ、ダケカンバ、シナノキ、ヤチダモ等の落葉広葉樹が生えていますが、千葉のような高木の常緑広葉樹は生えていません。
このため、冬になると、北海道では、森の中で緑を保っているのは針葉樹だけになります。
千葉のコナラ
北海道のミズナラ
千葉のシラカシ
冬の北海道の森
札幌にはコナラとミズナラが両方ある
やや、話しは脱線しますが、札幌市を含むい石狩平野は、コナラの分布北限であり、ミズナラとコナラが隣あわせで生えている森が存在します。
千葉に住んでいた私としては、コナラを見ると、ちょっと安心してしまいますね。
下の写真が、コナラとミズナラの葉っぱがまるで挨拶しているような様子です。大きい葉がミズナラ、小さい葉がコナラですね。
見た目は同じだけど、構成員が異なる千葉と北海道
ということで、さすがに、生えている樹種は異なりましたが、遠く離れ、気候も違う千葉と北海道の森に、外見上とはいえ、似ているところがあるなんて、面白いですよね。
もしかしたら、まだまだ、思わぬ共通点が見つかるかもしれませんね。
木と人の出会いをつくるWEBアプリ
NPO法人リトカルは、もっと多くの方が木と出会い、木をもっと深く知り、癒されながら、生命のつながりの深さ、森の尊さを知っていただきたいと考えています。
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