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Photo by
watakirin
許しと未練の狭間で
ふとした瞬間に、昔嫌いだったあいつのことを思い出してしまう。今どうしているんだろう、どんな人生を歩んでいるんだろう──そんなことを考えたところで、出てくるのは邪な感情ばかりだ。
自分に酷いことをした人間に天罰が下っていないか。もし今の自分が苦しい状況にいるなら、なおさらあいつが自分より幸せそうにしているのは許せない。そんな風に思ってしまう自分が嫌で仕方ない。もし今、あいつと会ったらどう感じるだろう? あいつの状況次第で、自分の心は変わるのだろうか? そんなことを考え始めると、なんだか余計に惨めな気持ちになる。
とはいえ、もう関わることもないだろうし、そもそも会いたいとも思わない。でも、思い出してしまうのだ。そして、思い出すたびに自分があいつのことを許せていないことを痛感する。いい大人になった今でも、あのときの仕打ちを思い出すと、心の奥底で怒りや悔しさがくすぶっているのがわかる。「昔のことをいつまでも根に持つなんて」と言われるかもしれないが、やられた側は一生傷を抱えて生きることになる。忘れたくても、忘れられない。
別に仕返しがしたいわけじゃない。ただ、許せていないだけ。心の中にまだ消えない傷があって、その傷を思い出すたびに、あいつの顔が浮かぶ。そのたびに、苦しくなる。
こんなことを考えても意味がないとわかっている。そんなことを気にするより、自分の人生を充実させることにエネルギーを注いだほうがいいに決まってる。あいつのことなんか忘れてしまうくらい、楽しくて、幸せで、満たされた人生を生きるほうがずっといい。
それでも──ふとした瞬間に、また思い出してしまうことがある。そのたびに、自分の中の許せない気持ちと向き合うしかないのかもしれない。