「そのうちなんとかなるだろう」
僕は毎月ボブディランのアルバムを1枚買っている。ただ、最近飽きてきたので、今月はクレイジーキャッツのベストを買った。『クレイジーキャッツ スーパーデラックス 平成無責任増補版』というやつだ。何と、大瀧詠一さんがプロデュースしている。
僕が好きな曲は『だまって俺について来い』だ。もちろん平成生まれの僕はこの曲をリアルタイムで聴いているわけがない。ただ、この曲はアニメの『こち亀』のオープニングだかエンディングで誰かがカバーしていたので知っていた。
ぜにのないやつぁ
俺のとこへこい
俺もないけど 心配すんな
みろよ 青い空 白い雲
そのうちなんとかなるだろう
この詞が好きだ。「そのうちなんとかなるだろう」ってのが好きだ。
僕は今鬱で悩んでいる。これを鬱に変えるとこうなるだろう。
元気のないやつぁ
俺のとこへこい
俺もないけど 心配すんな
みろよ 青い空 白い雲
そのうちなんとかなるだろう
もちろん僕は元気のない人を受け入れる器の大きさが無い。だからこの器の大きさに憧れる。
まだこのベスト盤を聞き込んではいないが、詞をちらほらと読んだ。『無責任』や『サラリーマン』が良く出てくる。また人間の業を肯定しているような詞が多い。立川談志さんは落語とは『人間の業の肯定』と言った。僕はこういうのが好きですね。
また、『スーダラ節』という曲がある。「分かっちゃいるけど やめられねぇ」でおなじみの曲だ。この曲に関する、植木等さんのエピソードが好きだ。
「スーダラ節」の楽譜をはじめて渡された時には、「この曲を歌うと自分の人生が変わってしまうのでは」と真剣に悩んだ。父親に相談すると「どんな歌なんだ?」というので植木はスーダラ節を歌ってみた。激しい正義感の持ち主の父の前で歌ったあまりにふざけた歌詞に激怒されると思いきや、父は「すばらしい!」と涙を流さんばかりに感動した。唖然とする等が理由を尋ねると、「この歌詞は我が浄土真宗の宗祖、親鸞聖人の教えそのものだ。親鸞さまは90歳まで生きられて、あれをやっちゃいけない、これをやっちゃいけない、そういうことを最後までみんなやっちゃった。人類が生きている限り、このわかっちゃいるけどやめられないという生活はなくならない。これこそ親鸞聖人の教えなのだ。そういうものを人類の真理というんだ。上出来だ。がんばってこい!」と諭され、植木は歌うことを決意した。このエピソードは、植木が歌手として生きていく上で生涯の支えになったという。
このエピソードが好きだ。
クレイジーキャッツの曲は今年30歳になった僕にとって、座右の銘になりかねない。