身体表現性障害って何なんだよ 治療編2


医師ー患者関係での信頼感を確立するために第一に医師がすべきことは、医師が患者さんの辛さや苦しさといった感情に共感を示すことです。データに基づいて説明し、データ上は問題がないというだけでなく、現代医学でも説明できない身体症状があるということをまず説明することが重要です。そのうえで、漠然とした慰めではなく、「今、ここで」患者さんがとくに不安を抱いている症状に焦点をあて、「ストレスのせい」とか「性格のせい」とか「環境のせい」といった単なる原因探しをするのでなく、「今できること」を共同作業として模索していくような医師が、信頼に値する意思です。

磯部 潮『体にあらわれる心の病気 「原因不明の身体症状」との付き合い方』

そう。医師ー患者間の信頼関係が一番重要なのだ。ただ、患者の辛さや苦しさを共感してくれる医者は中々少ないかもしれない。そう。そして、原因探しをしてもほとんど意味がない。「今できること」に着目するのだ。これは仏教の教えでもある。ただ、これもまた中々こういった指導をしてくれる医者は少ないのかもしれないが。


 私の研究の中では、九割弱の患者さんが「執着」性格でした。つまり「原因不明の身体症状」を持つ患者さんは神経質、几帳面、他人に気を遣う、小心、などの性格の人が多いことがわかりました。
 「執着」性格はうつ病の病前性格とされています。ただ、これも先ほど述べましたが、身体表現性障害の患者さんは、うつ病患者さんと比較すると、自らの役割意識という点が少し希薄であるという印象がありました。
 しかしこれはあくまで結果論であって、もちろんこのような性格の人が必ず身体表現性障害になるわけではありません。これはうつ病の病前性格についても同じです。

磯部 潮『体にあらわれる心の病気 「原因不明の身体症状」との付き合い方』

確かに、「執着」性格がうつ病や身体表現性障害になりやすいのだろうが、必ずしもそうとは限らないのだろう。そりゃそうで、人はそれぞれ異なるからだ。「執着」性格というのは、まさに結果論であり、ある状態や性格を定義した一つの情報でしかないからだ。

現代の精神医学では病前性格というものを、あまり重視しません。というのは、これまでいろいろといわれてきた病前性格は、実証的証拠が欠落しているものがほとんどです。

したがって病前性格というものをあまり気にする必要はありません。ただ、「執着」性格が自分にあてはまると思われる人は、「原因不明の身体症状」が出やすいかもしれないぐらいに思っていただければよいと思います。

磯部 潮『体にあらわれる心の病気 「原因不明の身体症状」との付き合い方』

そう。病前性格は「実証的証拠」が欠落していると思う。それをどう検証すればいいのか、またそれは可能なのか難しい問題だろう。カールポパーは「反証可能性のないものは科学ではない」と言った。要はそういうことなのだ。だから著者が言うように、あくまでそういう傾向がある、というところで留めておいたほうがいいように思う。

 「原因不明の身体症状」を訴える患者さんは、なにごとに対しても、徹底的にやりすぎる人が多いようです。このことは、身体症状にとらわれていく素地を作っています。
 このようなタイプの人の場合、これからは自分自身の価値観を変えていくことが必要になります。「原因不明の身体症状」によってそれまでの生活が障害されたことは事実ですが、そのことを、自分自身を振り返るチャンスと捉えて、自分の人生をつくりかえていくことは誰にでも可能です。

磯部 潮『体にあらわれる心の病気 「原因不明の身体症状」との付き合い方』

「原因不明の身体症状」はこれまでの生き方について考える一つのきっかけになるというわけだ。

まとめると、「原因不明の身体症状」を「身体表現性障害」という診断に統一したほうが良いということ。なぜなら、その方が研究が進むし、病名があるということで患者が安心するからだ。

また、治療として、薬物療法や精神療法が有効らしい。まあ薬のことは医者に任せるよりほかない。自分でも認知行動療法や森田療法の本を読んでみるのがいいのかもしれない。本来なら、そこまで指導してくれる医者がいればいいが、中々難しい問題だと思う。ただ、著者も言われているように、こういった疾患は医者との信頼関係が重要になる。医者を信頼することは結構盲点になると思う。だからドクターショッピングを続けるのではなく、目の前の主治医にじっくりと診てもらうことも重要なのだと思う。

とはいえ、これらで「原因不明の身体症状」が完全に治るとは限らない。もうこれは「付き合っていかなければいけない問題」として、「今できること」をやっていくよりほかないのかもしれない。

僕は働きながら通っていた病院では「双極性障害」と診断されていた。それで勢いで会社を辞めたら鬱になってしまった。通っていた病院が遠かったので、近くの病院に転院したら、「双極性障害かどうかは怪しい」と言われた。それで、転院して2年くらい経つので、思い切って診断は何なのかを聞いてみた。そうしたら、「身体表現性障害」と言われたのだ。確かに、今は身体症状が辛い。また、何かの病気なのではないかと思っている。これが辛い。

僕が探した限り、「身体表現性障害」の本は存在しなかった。唯一あったのが、2001年に出版された本書であった。著者は「原因不明の身体症状」を「身体表現性障害」に統一することを推奨されているが、2024年現在、僕は精神科にて「身体表現性障害」の診断が下されたわけだ。だから、著者の意向が受け入れられているのかもしれない。それともDSMなんちゃらに書かれているので、ただそれ通りに診断されたのかもしれない。まあとにかく、磯部 潮さん、本書をご執筆いただきありがとうございました。


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