コース料理の組み立て方


今回はコース料理の組み立て方を書いていきたいと思います。

はじめに

おまかせの料理を考える上で初めに認識しなくてはいけない事は三者の関係性です。それは以下になります。

  • ゲスト もてなされる側

  • ホスト もてなす側

  • お店  サービスする側

この三者の関係性とパワーバランスを深く考察する事がメニュー構成において重要だと考えます。

和食の場合には必然的に三者の上下パワーバランスが存在しその機微を汲み取る事が重要です。誰を1番に喜ばせ、誰が得をするべきか、結果的に三方良しに繋がるのかの判断が大切だと考えます。このトライアングルバランスの微調整がお店の仕事です。

よくあるサービス側のミスとして本人は頑張ろうとした結果視野が狭くなり、ホストを挟まずにゲストと直に会話や名刺交換をしてしまう事がよくあります。これは料理も一緒で「喜ばせるべき人」「得をするべき人」の区別と優先順位の見立てがズレているからです。


割烹料理のおまかせ

おまかせのコースを考える上で初めに大きく2通り考えます。

  • 自信のある料理を提案する。

  • お客様の好きなもの、求めていそうな料理を提案する。

一見さんの場合は自信のある料理を8割の力感で準備し、2割当日のお客様の雰囲気で決める余裕が理想だと思います。

常連さんの場合は来店目的を理解し求めているものを汲み取る力が重要です。2割の今日1番自信のある一品を用意した上で、好きそうな、求めていそうな8割の料理を準備します。


料理構成

私の場合は料理構成を考える上でまず初めにコースの山場をイメージします。

  • 「右肩上がりの盛り上げ型」は料理が進むにつれメリハリの効いた味付けや演出を心掛けます。一般的に非日常を楽しみたい方に向いています。

  • 「右肩下がりの余韻型」は出汁の効いた薄味を意識し季節感を大切にします。八寸などはお酒のあてを意識する事でお酒が好きな方や会食機会の多い方に向いています。

  • 「高水準の水平型」は一品一品の味の繋がりとバランスなど1番センスを問われます。料理人の「人となり」がでますのでそれを楽しみたい方に向いています。


また料理を考える上で次の要素も意識します。

  • 四季。  走り、旬、名残り。

  • 五色。  赤、青、黄色、白、黒、

  • 五感。  味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚、

  • 五味。  甘味、塩味、酸味、苦味、旨味、

  • 五つの調理方法。 割つ、蒸す、煮る、焼く、揚げる、

  • 五つの美味しいと感じる条件。  「初めて見る、もしくは食べた味」「小さい時に好きだった味」「~産などブランドがある味」「素材や技術の良さを感じる味」「珍味などの癖になる味」

  • 器、 陶器、磁器、漆器、ガラス製品、etc

  • 当日の天気

  • 脳は13回目くらいから味を記憶し、視覚からの情報だけでも唾液が分泌される。

上記を踏まえてこのような構成にする事が多いです。

先付  嗅覚 視覚 旬 素材の良さを感じる味
前八寸 視覚 走り 旬 珍味などの癖になる味 初めて見る知る味
お造り 視覚 走り 旬 素材の良さを感じる味 ブランドがある味
煮物椀 視覚 嗅覚 旬 初めて見る味 技術の良さを感じる味
焼物  嗅覚 旬 名残 ブランドがある味 素材の良さを感じる味
食事  嗅覚 視覚 旬 13回以上の料理
甘味  視覚 小さい時に好きだった味 13回以上の料理

私の場合は当日の天気によっても料理の順番や内容をよくかえていました。

ほとんどのお客様がストレスなどによりマイナス感情で来店される事が多いのが現実です。よって初期対応が大変重要になり、挨拶、最初のお飲み物、一品目でどこまでマイナスからプラマイゼロまで持ってこれるかが重要です。



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