向上心と不満足
末っ子は今年22歳になります。
大手の会社でSEをやっています。
最終学歴は、専門学校卒。
上の子供たちは、
みんな高卒や高校中退。
末っ子の会社は、大卒で入社するのが
ほとんどですが、
末っ子の頑張りにより、
入社させてもらえたのだと思います。
その会社での雑談で、
末っ子は、塾に行ったことがない、と
話すと、今時塾にも行っていないというのは
どういうことなのか、
小学校や中学校でいわゆる「お受験」を
しなかったのは、どういうことなのか、
と聞かれたそうです。
末っ子の会社に勤めている人たちは
きっと、年収の高いおうちで
育った方が多いのでしょう。
塾も、お受験も当たり前のように
行かせてもらえて、
留学や、海外旅行もできて当たり前の
環境で育てられたのでしょう。
うちのようにDV家庭から脱出したり、
片親で、6人もの子供を育てるという
環境が、信じられないといった感じなのでしょう。
私自身、小さい頃から貧乏で
学歴も高くはありません。
底辺を生きてきた、と言ってもいいでしょう。
けれど、大人になって
DV夫から逃げて自由になって、
子供たちのことは飢えさせないように、
一生懸命育てました。
周りにそれほど多くの子供が
塾に行ったりしていることに
気づけませんでした。
ただ、ただ、
飢えさせないように、私の子供の頃のように
ならないように
そう思って、子供たちを大人になるまで
育てました。
けれど、きっと
それだけでは足りなかったのでしょうね。
私はずっと、どんな不遇の状況でも、
「足るを知る。」という心持で
生きてきました。
私自身は、「足るを知る」だけで
良かったのでしょう。
けれど、子供たちに対して
それではいけなかったんじゃないか、と
今は思っています。
末っ子は向上心の高い子です。
自分の目標を決め、それに向かって
努力する子です。
その結果、今の会社に
就職できたのだと思います。
末っ子は、
あの状況で、子供の誰一人捨てずに、
6人もの子供を
飢えさせず育てたのだから、
お母さんは間違いじゃないよ、と
言ってくれました。
それでも、
小さい頃から、きちんとした教育を
受けられたら、努力などせずとも
容易に、今の立場になっていた、と
考えているようです。
向上心の塊の末っ子は、
「満足」しません。
常に「不満足」であり続けます。
私の「足るを知る」という考え方は、
負け犬のように感じているのかもしれません。
末っ子から話を聞いているうちに、
私のような親は、
子供たちにとって恥ずかしい存在なのではないか、
と思ってしまいました。
子供たちは、末っ子も含め、
私に感謝の言葉をくれます。
けれど、本当にこれで正しかったのか、
わからなくなります。
今更、間違っているとわかっても
どうすることもできませんが、
もしも子供たちが幸せでないと
感じているのならば、
それは、母親である私の責任でしょう。
どうやって詫びたら、
どうやって償ったらいいのかわかりません。