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尊敬する人

誰にでも一人や二人、もっと
多いのかな、
尊敬する人がいると思います。
人嫌いな私にも、尊敬に値する人が
一人だけいます。
その人と出会ってから私は
考え方が本当に変わりました。
どろどろと溶岩が流れ出るような心の
私を、陽の光と優しい風と、
季節ごとの可愛らしい花などの存在を
教えてもらえた、そんな気がします。

私の尊敬する人は、長男です。

私自身が生んだ子供を尊敬するなんて
おかしいかもしれません。
けれど、私は彼ほどの心のきれいさと
優しさを持ち合わせた人に
出会ったことがなかったのです。

長男には知的障害があります。
生まれたときの事故で、脳に酸素がいかない
時間があり、その後遺症?というのか
気づいたときには知的障害でした。
赤ちゃんの時は体も弱く、
ぜんそくやアトピーで苦しみました。
何度か死にそうになって
入院もしました。
首の座りも遅く、斜頸気味だったので
いつも同じ方向を見ていて、
成長段階もすべて平均の
半年以上かかっていました。
会話が普通にできるようになったのは
幼稚園の年長さんのころでしょうか。

障害を持っている人たちは
経験済みかもしれませんが、
彼も例外なく、差別と偏見に
さらされました。
いじめもありました。
小さい頃は小さい頃なりの、
青春期には青春期なりの、
そして、大人になった現在でも
それはあるでしょう。

私たちは、家族全員で
長男を守る為に闘いました。
何度も泣きたくなるような
出来事があり、
差別者たちに憎しみをおぼえました。
こちらの正当性が認められて
謝罪されたとしても、
私を含め、長男以外の子供たちは、
差別者に対する憎悪を消せませんでした。
けれど、当事者の長男は違いました。
「ごめんなさいをしてくれたから、もういいんだよ」
と言いました。
それまで受けたひどいいじめも
差別と偏見も、
たった一言の「ごめんなさい」で
彼には無かったことにできるのです。

私は母親として、出来がいい方ではありません。
長男はいつも「大丈夫」と言って
慰めてくれます。
そんな長男も30歳を超えました。
高校を卒業してから、介護施設で働き、
10数年経ちました。
長男の優しさは、お年寄りたちの
癒しにもなるでしょう。
最初は介護補助だった仕事内容も、
今では資格も取り、りっぱな
介護士になりました。

融通が利かなくて、まじめなだけが取り柄ですが、
ハンデをものともせず、
一生懸命生きる長男は
私の誇りであり、尊敬できる人であります。

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