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妻と歩んだ日33〜託された思いと旅立ち〜

2022年6月

東京旅行から2日目…


日が昇ると、死の恐怖が少し薄らぐ…


今日は在宅医療の日…


いつもより早く先生が来る…

妻を見て…


看取られる場合は、早めにご家族を呼んで下さい。


呼吸が努力呼吸になっている。と説明された。

苦しそうだから、酸素はした方が良いか確認。


ここまでくると、もう苦しくはないけど、酸素をいれると苦しくなるだけ。と。

だから、酸素も点滴も、もうしなくて大丈夫。


ただ、今日はずっと側に居てあげて下さい。


訪問看護師にも連携を取っておきます。


何かあれば、すぐに電話を下さい。と。


最後に、東京旅行行けて良かったですね。と。


そして、先生が出て行ったすぐ後に、訪問看護師が。


今日は予定に無かったが、ただ心配になって来たとの事。

妻の様子を見て…


東京旅行行けて良かった。と。

また、何かあればすぐに電話して下さい。と。


子ども達は小学校と保育園。

お義母さんは、連絡と買い物へ。



家に2人っきり。



急に妻がこっちを見て手を伸ばす…


手を取ろうとすると、自分の腕を強く握りしめ、上半身を起こす…


驚くほど強い力で妻は自分の両腕を掴み…


そして、じっと見つめてくる…


だんだん強くなる妻の力…


そして、あーあーあー。と、何かを伝えてきた…


伝え終わったら、満足したのかまた横になる…


どっちだろう…


あれは子どもを幸せにしろと、妻の最期の願いなのか…


もしくは、自分への恨み言なのか…


未だどちらかは分からないが、それが最後の力を振り絞って妻がした意思表示…


夜、東京旅行に行ったメンバーが全員集合…




19時55分…

妻の様子がおかしい…


呼吸をする度に鳴っていた音が小さくなる…


呼び掛けても反応もない…


皆んなで妻の布団の側に集まる…

皆んなで妻の名前を呼ぶ。


手と手首を握っていたが、妻の脈がどんどん小さくなる…


まるで手ですくった水が落ちて行くように…


それくらいハッキリと生命が失われていく瞬間…


あぁ、行かないで…


まだ叶えてあげられてない事だって、たくさんあるのに…



一緒にやろうと約束した事、いつか行こうと約束した場所…




まだまだやり残した事はたくさんあるのに…



そして、妻が最期の呼吸をする…


もう脈拍も感じない…


妻に掛ける言葉…


頑張れ…もうそんな言葉出てこない…



こんなに頑張ってたのに…


出てきた言葉は…



お疲れ様。よく頑張ったな。ゆっくり休んで。


…愛してる。





時計を見るとちょうど20時00分…


妻は少し微笑みを浮かべ、満足そうな顔をしてる…


たまに抜けていて、決して完璧な夫ではなかったけど、妻は幸せだったのかな?


もっと一緒に居たかった…


子ども達が大きくなって独り立ちしたら、また、たくさん旅行に行く予定だったのにな…



…寂しいよ…




あぁ、電話しなきゃ…



きっちりしてた妻に怒られるな…

在宅医に電話。


すぐに向かうとの事。


1時間後、在宅医と訪問看護師が到着。


21時09分、死亡確認…


そこから、色々な所に電話。


葬儀会社が来るまで、訪問看護師が身体を拭いたり、着替えや化粧、ウィッグをしてくれた。


普段使ってる化粧品ありますか?と。


妻の化粧ポーチを持ってくる…


青系のアイシャドウ…


よくデートで付けてたな…


そして、綺麗になった妻は、やっぱり綺麗で、何で付き合えたのか、未だに分からない。


ただ、分かるのは、最期の最期まで妻は、やっぱり綺麗だったな…


そして、こんなに愛してるのにな…

妻の闘病中何度も思った…

なぜ自分じゃないのか…
なぜ代わってあげられないのか…


治る方法が有れば、お金も自分の命も全部差し出すのに…


自分なんかが生きているより、妻が生きていた方が、嬉しいのに…










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