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アフガン トラベル・パーミットの取り方        (2024年)

 アフガニスタン旅行に際し、トラベル・パーミット(旅行許可証)を取得する必要があり、個人旅行者はこれを自力でやらねばならない。
 カブールで発行される旅行全般に関わるパーミット(以下、全体パーミットと記す)と各州ごとのパーミット(州もしくは各州パーミットと記す)がある。

慈悲深いアッラーの御名の下に発行されるパーミット

 街中をぶらぶらしたり、宿で沈没していたり、市場を冷やかしたりする分にはパーミットは必要ないが、モスクや遺跡等を観光する際、紙の提示を要求されることがある。すべての訪問先でいちいち求められるわけではないにせよ、特にイスラム教の宗教施設、タリバン兵に管理されている名所旧跡、政治的に微妙な州、人里離れた地域を訪れる予定の場合、あった方が無難だろう。料金は無料である。少し前まで全体パーミットだけでなく各州パーミットも1000アフガニ取っていたようだが…。
 この旅行手形はタリバン政府の御紋のついた印籠とでも考えたらいい。地元関係者には、現地語で書かれた当局の権威あるお墨付きであり、日本の国のパスポートよりも効果的に身分を保証し、安全を確保し、旅の目的をかなえてくれる。
 カブールでの全体パーミット申請の際に自分の訪問予定州を申告し、それはパーミットの紙に明記される。その上で各州の出先機関に赴いて登録を行い、州パーミットを得る。
 ここに記す手続きは2024年5月の記録で、5月17日に起きたバーミヤン銃撃事件以前のもの。旅行者は男性で、西のイランから入り東のパキスタンに抜け、カブールでの全体パーミットの申請は旅の中盤に行った。
 この国の旅行ルールは頻繁に変更される。最新状況は各自確認されたい。

全体パーミット取り方 
カッコ内に場所の緯度経度の位置情報を記す。

①パスポートを持ってカブールの情報文化省(34.5251009, 69.1742322)に行く。木午後と金休み。一帯はアフガンの霞が関であり、検問をクリアし、武装警備兵に用件を伝え、中に入れてもらう。担当官のところで申請用紙をもらい記入。訪問予定州は出来上がるパーミットに記入されるので、事前にきちんと検討し、多めに申告しておいて損はない。バルフ州にあるマザーリシャリフのように地名と一致しない州名に注意がいる。申請用紙でチェックした州がそのまま記載される。コピー等はやってくれる。指示に従い、同棟や別棟の偉い人のところを回って次々サインをもらう。

申請用紙

②出来上がった書類を持って、別の場所にある情報文化省の観光局(34.5144307, 69.1976958)に行く。3〜4km離れている。タクシー150アフガニ、徒歩45分。英語看板あり。申請用紙を提出。打ち出してくれるA4紙パーミットに責任者のサインをもらって出来上がり。全部で2〜3時間。午前中はつぶれる。

情報文化省観光局

 この全体パーミットはカブールでしか取れない。空路や東のパキスタンからの陸路入国の場合、旅の始めにさっさと片付けることができる事務手続きだが、北のタジキスタンやウズベキスタン、西のイランから入るならば首都は遠い。その場合、クンドゥーズ、マザーリシャリフ、ヘラートの各州出先機関で事情を話し、州パーミットをとった方がいいかもしれない。自分はイランから入り、旅の中盤にカブールに到達するまでこの全体パーミットが手元になかった。西から陸路で来るヨーロッパ人旅行者も同様である。ヘラートでヘラート州のパーミットを取り、ゴール州のジャームのミナレット、バーミヤン州の石仏石窟&バンデアミール湖では、それで融通をつけてもらえた。何とかなるものなのか、運がよかったのかは不明だが、何らかの公的な現地書類はあった方が保険になるかもしれない。

各州ごとのパーミットの取り方
 全体パーミットとは別に、訪問する各州で個別にパーミットを手に入れる必要がある。それぞれの州にある情報文化省の出先機関にパスポートと全体パーミットをもって出向き、登録・発行してもらう。州によって顔写真やパスポート&ビザコピーが要る。観光地を訪れる予定の州ならば宿泊しなくてもあった方が無難。通過だけ、もしくは観光しない州なら不要。所要1時間程度。書式等は各州まちまち。

私が行った情報文化省各州支所
○ヘラート州 (34.3485495, 62.2004633)
 情報文化省ヘラート観光総局。門前に自動小銃の警備兵がおり、ツーリストだなどというと、2階オフィス担当官のもとに連れていってくれる。

○バーミヤン州 (34.8069305, 67.8250328)
 バンデアミール湖もバーミヤン州、行く場合ここでとる。顔写真必要。

○バルフ州 (36.7059842, 67.1060264)
 古都バルフでなく州都マザーリシャリフにある。英語の情報文化省の表示あり。顔写真とパスポート&ビザコピー必要。向かいにコピー屋あり。文化財保護の研修で日本に来たことのある担当官がいて、上野の国立博物館前等で撮った写真を嬉しそうに見せてくれた。

○カンダハル州 (31.6149204, 65.7024378)
 英語表示あり。州内全ての施設に有効なパーミットが1枚。それとは別に、開祖ムハンマドが身にまとった聖なるマントのモスクに行く場合、専用のパーミットが必要になり、言えば作ってくれる。両方とも手書き。

○パンジシール州 (35.2813301, 69.4804456)
 カブールからのシェアタクは州行政機関のある一帯に停まる。タワーの立つ円形交差点の西側(川の反対側)に警備されている庁舎群がある。情報文化省出先はそのうちの一つ。現地語の表示すらない。顔写真1枚必要。

パンジシール州の出先機関

○ヌーリスタン州 (電子地図使えない)
 パルーンのメインストリートを川沿いに一番北まで行って左の橋を渡る。National Park Hotelを左手に見ながら坂を上り、突き当たりを左に岩滝にかかる橋を渡る。そのまま坂を上り、少し下った辺りの右手高台に目指す建物がある。ロゴに小さい英語表示あり。

ヌーリスタン州の出先機関

 興味深いことに、全体パーミット、カンダハル州、ヌーリスタン州はパシュトー語で、ヘラート州、バーミヤン州、バルフ州、パンジシール州はダリー語で書かれている。
 個人的な感触では、旅行許可証の所持や提示については多民族国家らしく地域による温度差があり、パシュトゥーン人地域の方が厳格で、バーミヤン州はややうるさい印象を受けた。
 本稿はアフガニスタン旅行を推奨するものではないが、制止・抑止もしない。


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