考えることに疲れた私たちを巧みに利用する考察系動画投稿者
こんばんは。初めて、投稿するものです。
突然ですが、某動画サイトでこんなものを見つけました。
ある動画内で使われたこちらの画像は、
劇場アニメ 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイに対して
「登場人物の会話シーンの内容が難しすぎる!」という視聴者の要望を受けて製作されたものらしいのですが・・・
おかしいですよね!
なぜ、おかしいと私が思うのか。その理由を書きます。
作品に対して考えることを辞めてしまった人達
昨今、youtubeなどの動画投稿サイトにアニメや漫画についての解説や考察を謳う動画が散見されます。
それらは、数分から数十分の比較的短い時間で誰が見ても理解できる内容になっています。
「~の真実は?」だとか、「このシーンはこういう意味だ!」とか。
見てもらわないと、何も始まりませんから目を惹くタイトルや奇抜なサムネイルのものが多いように思えます。
それらを皆さん一度は視聴したことがあり、作品の理解を深めるために教科書代わりにしている方も多いのではないでしょうか。
いかに時間を省略して、多くのコンテンツを視聴できるか。
そんなタイパ(タイムパフォーマンス)至上主義を掲げる現代人にとっては願ってもないものなのかもしれません。
しかし、それらは本当に私たちの役に立つものなのでしょうか。
私はそれらに価値を感じません。
価値どころか視聴すること自体、時間の無駄だと思います。
なぜなら、考察動画を見るということは裏を返すと、
自分で考えることを放棄していることになるからです。
よくよく考えてみてください。
考察動画で語られる内容はあくまでも投稿者の主観であり、
あなたが作品を観た上で感じたことではないですよね。
確かに動画内のものと似た結論に至ることもあるかと思います。
しかし、寸分たがわず同じだなんてことはないはずです。
では、なぜ動画を見ると、納得してしまうのでしょうか。
それは、私たちの嫌な癖のせいなんです。
妥協という罠
「私の思ってたことを言葉にしてくれた。ありがとう。」
ある考察動画のコメント欄に寄せられたものです。
妥協という言葉がありますよね。
正にこのような場合に使われる言葉でしょう。
このコメントの主は、「自分で考える」という労力、時間を惜しんで、
動画の内容が自分の考えと似ていることを言い訳にして思考停止している。
つまり、妥協しているんです。
そうしたい気持ちはわかります。
「娯楽として見ているものに対して、何で考えなきゃいけないんだ!
それじゃ、楽していることにならないじゃないか!」
とお思いかもしれません。ごもっともです。
しかし、娯楽という日々私たちが味わっているストレスを忘れるための
オアシスに土足で踏み込んで利用しているんです。彼らは。
疲れた私たちを。考察動画という形で。
それだけでなく、投稿者は動画内容を賛美するコメントを読んで承認欲求を満たし、再生回数に準じてお金まで稼いでます。広告収益として。
腹が立ちませんか?
正しい情報を発信している保証もないのに。
利用されてるんですよ、私たちは。目を覚ましましょう!
と、ここまでは私の感情論も混じった理由を書いてきましたが、本番は
ここからです。
これから、なぜ考察動画を見ることに意味がないのか。
具体的に、論理的に書いていきます。
そのためには、そもそも「考察」とは何か?
根っこの部分から話していく必要があります。
「考察」とは?
考察・・・物事を明らかにするためによく考え調べること。
また、「考察」という言葉には「ある物事の詳細をよく調べ、検討したり分析したりする」というニュアンスが込められているだけでなく、ある問題点や自分の意見について、どのようにその答えを導き出したのかという過程が求められると言えます。 したがって、自分の考えや思いを述べただけの感想や答えだけでは考察とはいえません。
非常にわかりやすい意味の説明ですね。少し検索するだけでこの結果です。
ネットとは便利なものですね。
さて、私はこの「考察」という言葉の意味を正しく理解できてないまま使っているように思えるんです。考察系動画投稿者たちが。
ですので私が、「作品の考察って何ですか?」
そう聞かれた時の回答はこうです。
「その作品の全体的なテーマ性、思想性。そして各シーンにおける人物の立ち位置や目線、台詞の言い回し、立体物の色彩などの細かい違和感に気づき、どのような意味が込められているか、なぜそのシーンが必要なのかを考えること。」
皆さんの思い描く考察とは意味が違うように感じましたか?
それは、考察動画に洗脳されているという証拠です。
「考察とは、伏線を見つけること。」
そう理解していたのではないですか?
大きな間違いです。
考察動画内で語られる内容のほとんどは、
根拠の無い、ただの間違い探しゲームです。
伏線を見つけるなんてことは、時間をかけて同じマンガを読み込んだり、
映画を見続けたりすれば誰だってできます。
この記事を読んでいるあなたでも。
なので、考察動画を投稿している人が特別、知識があるわけでもなければ、作品に対する理解力が高いわけでもないのです。
投稿者が時間を掛けて作品について調べたり、動画を作ったりしていることは、尊敬に値します。
ただ、本質は私達とそうは変わらないと思うんです。
なぜなら、彼らは大きな要素を忘れたままは、動画を作っているからです。
台詞にしか意味がないと思っている
ここで、頭に紹介した画像を一度見てほしいのですが。
違和感に気づきますか?
会話のシーンのみを抜粋していますよね。それも小説のように。
残念ですが、これでは解説したことにならないんです。
キャラクターの立ち位置、目線、背景、色彩、オブジェクト(建物など)の位置、挙げればキリがないですが、アニメには台詞以外にもキャラクターの心情を表現するための色々な要素があります。
そもそもアニメーションは動きが連続するもので、同じシーンは一つとしてないわけですから、場面写を数枚載せて、台詞を羅列するだけではキャラクターの発した台詞にどんな意味があるのか理解できるはずがないんです。
つまり、台詞以外の大事な要素が抜け落ちている解説ということです。
色々な要素を含んだ解説、考察動画をショートケーキで例えてみましょう。
となると、上記の画像を使っている動画は、ただのシフォンケーキで、
生クリームは塗ってないしイチゴはトッピングされてないことになります。
果たしてそれをショートケーキと呼べるでしょうか?
呼べないですよね。
しかし、私たちはそれをショートケーキだと錯覚して、おいしそうにムシャムシャ食べていたんです。ショートケーキじゃないのに。
無理もありません。私だって最初から気づいていたわけでなく、
最近になってようやく分かってきたんです。
アニメは台詞だけで作られているものではないと。
総括
作品については、自分で考えましょう。これにつきます。
考察動画を見たって、近道にならないんです。
それどころか、自分で考えるのを辞めてしまったり、
動画で見た先入観に引っ張られて、自分なりの意見が持てなくなってしまうかもしれません。
それって、結果、遠回りになってませんか?
答えは一つじゃないんです。
いかようにも解釈できるそれがいい作品の条件だと私は思います。
最後に一言。
表裏一体
一見、便利そうなものにも頻繁に活用することで支払う代償があり、
気づいた時には、依存して辞められなくなっている。
あなたがそうなってしまう前にこの現状に警鐘を鳴らすことがこの記事を書いた私の目的であると覚えておいてください。
それでは。長文読んでくださり、ありがとうございました。