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Hip Hopの4大要素〜ブレイクダンス編〜
昨今のフリースタイルラップバトルの流行により老若男女にHip Hopの「一部」が広く認知され始めているが、Hip Hopは決して音楽の一ジャンルではない。MC(ラップ)、DJ、ブレイクダンス、グラフィティの4大要素から構成される「文化・芸術的要素の総称」なのである。今回はKRS-ONE著書の「Gospel of Hip Hop」に基づき、「ブレイクダンス」を解説する。
日本において「Hip Hop」と聞くと、ダンスを連想する方が非常に多い。私が勤務している大学で、学生に「Hip Hopが好き」と言うと、「ダンスはいつからやっているんですか」と質問される場面が多々ある。昨今の日本語ラップブーム以前、ダンス甲子園※1がテレビで放送され、中学校の体育でダンスが必修化※2されるなど、日本人が「Hip Hop的ダンス」に触れる機会が多いため無理もないだろう。
そもそもHip Hopにおけるダンスとは、ブレイクダンス(Break Dance)のことを指し、ブレイクダンスとはストリートダンスを意味する。また、ブレイクダンスのブレイクとは、ブレイクビーツ(前回のDJの解説参照)を意味し、ブレイクダンスの実践者「ブレイクダンサー」はこのブレイクビーツ上で、様々な技を組み合わせ踊る。また、Hip Hopの創世記である1970年代に、ギャングによる抗争や暴力事件を解決するためにブレイクダンスのバトルを用いたため、ブレイクダンスにはバトルの要素が多分に含まれている。
<ブレイクダンスバトル / 映画『Beat Steet』>
日本におけるHip Hopシーンもブレイクダンスから始まったと言っても過言ではない。伝説的ブレイクダンス・クルーのロック・ステディー・クルー(Rock Steady Crew)から暖簾分けされたRock Steady Crew JapanのリーダーであるクレイジーA(Crazy-A)が、Hip Hopのヒの字も日本で認知されていない1980年代、ブレイクダンスを通して日本にHip Hopシーンを根付かせ始めた。ちなみに、Crazy-Aは日本最大規模のHip Hopイベント「B-Boy Park」の創始者でもある。
<インタビュー / Crazy-A>
このインタビュー映像でも言及されていた「B-Boy」とは、ブレイクダンスの実践者「ブレイクダンサー」のことを意味し、B-Boy、B-Girl、Breakerと呼称される。日本においてはこのB-Boy / Girl、もしくはB系と言う呼称は、Hip Hop好きの者たち、もしくはHip Hop系のファッションを身にまとう者たちを総称して使用されている※3。しかし、B-BoyのBがBreakのBを指しているように、ブレイクダンスを踊らない者たちをこれらで呼称することは大きな誤りなのである。日本語・英語のバイリンガルなラップをすることで有名なシンゴツー(Shing02)※4も、彼の「一揆」という楽曲内で、この点について非難している。
<一揆(52分32秒から) / Shing02>
日本における「B」の使用方法や解釈には賛否あるが、日本人ラップ・アーティスト、イーゴ(EGO)の楽曲「B」※5でも言及されているように、「B」であることは日本人Hip Hopperのアイデンティティーの一部を成しており、日本に根付いた一Hip Hop文化の側面と捉えることも可能であろう。
【同記事はアメブロに投稿した記事の再投稿である。】
https://ameblo.jp/lit-hiphop/entry-12439211599.html
※1:「天才・たけしの元気が出るテレビ」内の企画で、1990年代初頭に放送されていた。基本的にノンジャンルで、高校生であれば出場できる企画なのだが、ストリートダンスが主だった。
※2:中学校指導要領解説保健体育編(2008年)によると、ダンスは「創作ダンス」、「フォークダンス」、「現代的なリズムのダンス」で構成されている。「現代的なリズムのダンス」であるため、「Hip Hop的ダンス」には限定されていないが、実質「現代的なリズムのダンス」=「Hip Hop的ダンス」と理解されている。ちなみに、日本の学術論文が検索できるデータベース・サービス「CiNii」で、「Hip Hop」と検索すると、Hip Hop音楽を用いたダンスの教育手法及び実践が多数ヒットする。
※3:この「B」はアフリカ系アメリカ人(黒人:Black)のBを意味している。アメリカのHip Hopシーン(主にラップ)はアフリカ系アメリカ人がマジョリティであり、このようなアーティストに影響を受けたため、その憧れの対象であるBlack(黒人)のBをとっている。
※4:アメリカ(ベイエリア[サンフランシスコ近郊]・ロサンゼルス)を主に活動拠点にするバイリンガルMC。Shing02のラップの特徴は、日本語・英語を完全に分けたラップをしており、両言語が一つの楽曲内に混在することは稀である。また、この「一揆」は初期音源集「絵夢詩ノススメ」の楽曲であり、一揆の前曲の「先制口撃」という楽曲でも非常に尖った攻撃的なラップをしているように、現在のラップスタイルとは非常にかけ離れている。
※5:アルバム「Egology」の楽曲。日本のリアルな「B」達にJapanese Hip Hopperとしての在り方を訴えかける作品。Youtubeにはアルバム紹介のクリップはあったので、是非拝聴あれ。
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![L.I.T. -Hip Hop Development Group-](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/18707261/profile_86443029c7e860ea8818e74eefbdf4ad.png?width=600&crop=1:1,smart)