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夏とカレー

夕立が上がると待ってましたとばかりに点火した。具材を炒めてスパイスと塩できめる。後悔するのはわかっているのにチリペッパーを入れる右手が止まらない。煮込んでいる間に窓を開けると、雨上がりの匂いが鼻をくすぐる。出そうになるクシャミをこらえようとするけど、1人なんだからええやんと思い直して思いっきりクシャミした。

米を少なめによそった皿にカレーを盛り付けた。窓辺に座りこんでカレーと1対1で向き合う。匂い、色、重みを全身で感じ取る。気休め程度の息をふきかけ熱々の一口を頬張った。舌が熱さに耐えられず、ゆっくり味わう暇もないまま喉元を流れてしまう。全身が一気に熱くなり汗がふきだす。

窓から入ってくる風に気づいて外に意識を向けた。鳥のさえずり、室外機のうめき声、包丁とまな板のトントントン。混じり合う音を聴いて妙な安心感を覚える。Tシャツで汗を拭いながらカレーを頬張る。

まだまだやれる気がする。


「400字エッセイ」書いています。

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