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日本はアリバイ社会

点検をしたらハンコを押す。日付とハンコがあれば立派な記録だ。トイレの清掃やフィルター点検、定期点検などよく見る日本のハンコ文化だ。IT化やDXが進んだ職場では過去のものかもしれないが、公的な文書を扱う部署では、ハンコ文化はまだある。ふと思う。

偽造は容易だ。  

ハンコがあれば何か事実が存在するということになる。誰かが点検したとか、承認したという印だ。多くの詐欺事件で文書偽造は手段として使われてきた。もちろん、署名文化でも同様の事例はある。

コロナ対策というアリバイ
手指消毒、ソーシャルディスタンス、アクリル板

あるお店に貼り紙があった。当店は定期的に店内の消毒をしています。本当にしているかどうかわからないが、来店客への安心のために必要なのだろう。レジ前の足跡マークや、アクリル板の設置など推奨されたが、効果的な設置とは思えないものもよく見る。効果よりも設置したという事実が大事なんだと思う。貼り紙がコロナ禍で増えた。

お客様に注意はしたくないけど、お客様同士のトラブルは困る。店員は注意しないのか!と言われると注意せざるを得ない。そこで貼り紙の登場だ。ご遠慮ください。とか、必ずお願いします。と書いて貼っておけば呼びかけたことになる。クレームが来るたび、店側の姿勢を見せる貼り紙が必要になる。消毒していますの貼り紙も、消毒はどうなってるんだ!というお客様の声が発端かもしれない。

車内アナウンスは録音や合成音声に

注意を呼びかけたり、協力を求めるアナウンスは以前からあったが、コロナ禍で録音や合成音声への置き換えが進んだ。優先席や乗り降りの際は降りる方を…とか、駆け込み乗車はおやめくださいとか。マイクを持って人間が言うと、言っている人の発言や意見だと受け止められる。俺は駆け込み乗車をしていない。お前が早く扉を閉めたんだ。注意するのか!とクレームをいただく。車掌はマニュアルや規定に従ってアナウンスしただけだと言い逃れたい。ならば録音が好都合、言っているのは私ではない、私は声の主ではない。注意しないのか!というクレームもかわせる。お願いや注意は貼り紙や録音がいい。会社として必要な対応はしてますよ!というアリバイができる。

〇〇防止研修や再発防止研修、セルフチェックシート、研修動画の視聴、eラーニングなど、社員教育や従業員の指導はしてますよ!というアリバイづくりも同様だ。

極めつけはコンビニやスーパーのレジだと思う。発明者はアリバイづくりの天才だ。アルコール飲料を購入すると、レジでタッチ画面に表示された「私は20歳未満ではない」というイエスボタンのタッチを求められる。もはや店員は何も言わない。客も黙って押す。割り箸やクーポン、ポイントカード、レジ袋についてのコミュニケーションはあるのに、20歳未満かどうかの確認は無言で済まされる。アリバイ社会は進化している。

効果のある対策かどうかよりも、怠らず確認をしたかどうかが責められる。だから、目的や効果よりも、事実確認をしたという事実づくり、問いただされたときに示せる根拠文書や記録、こちらに落ち度はないと主張できる事実づくりが日本では発展している。過去○日間に海外への渡航はしていません。これまで同居の家族に陽性者や濃厚接触者はいません。という項目にチェックをつけてたくさんの書類を提出した。書類を作成する側を経験した人も、大勢いると思う。同意しますをたくさん選んできた。

私たちの社会はアリバイ重視だ!



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