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先生が質問に答えるスキル

高校生に授業をすることを仕事にしています。授業実践と教職経験について、教員向けに主に公民科について発信しています。

先生が生徒の質問に答えるスキルというものがある。ヘルプデスクの業務に似ているかもしれない。相談と質問は区別したいが、質問も相談だと思って対応した方がうまくいく。

質問する生徒は上手に質問できない。わからないから質問しているので、的を得た答えやすい聞き方をすることはない。知りたいことを質問するために使っている言葉が、ズレていることはよくある。
質問の前提がそもそも間違っていることもある。誤解から生じた疑問は珍しくない。質問の前提が思い込みの場合もある。質問に答えても、前提となっている思い込みのせいで納得してもらえないことがある。

生徒は質問のプロではない。

つまずいて壁に当たって見当違いな方向を向いて質問している。

最初からこう思って質問を受け付けるとよい。

わかりにくい聞き方をしてくる
誤った前提を持っている
勝手な思い込みがある
誤った言葉を使って質問してくる

聞きたいことじゃないことを質問してしまう生徒もいる。ひと通り説明し終えて納得してもらえたかな?と確かめると、聞きたかったことはそれではない!と言われる。教員が誤って噛み合わない応答をした可能性もあるが、ストライクに答えていても違うと言われる。生徒がそもそも、聞きたいことをうまく表現できていないから、答える教員が誤解することもある。

質問の目的と質問文の内容が合っているかを確認する必要がある。

質問に答えるスキル
1質問の目的を確かめる
2質問文に使われている言葉が正しく使われているかを確かめる
3質問の前提となっていることを確かめる
4生徒の思い込みや誤解がないか確かめる

教員は質問に即答したがる。

生徒が尋ねたことをこういう意味か?と復唱して確かめる手間を省いて、いきなり質問に答えようとするのは、親切ではない。上の1〜4がいつでも必要ということではないが、適宜会話の中に挿んで対応するのがいい。教育実習生にもよく言う。教室で挙手して発言した生徒の発言は必ず復唱してから次に進めることが大事だ。

生徒の理解に合わせて答える。

生徒が知らない言葉や用語を使わないで解説する。言葉を知らない生徒に出会うと語句を教えたくなるが、それは質問への回答から逸れる。便利な言葉や用語、定義の説明は後回しにする。質問に答えようとしているはずが、まるで授業のように話されてしまうと一番知りたいことにたどり着くまでに時期がかかる。いわゆる話の長い先生だ。

言葉には狭義と広義があり、使っている人によって意味の範疇が異なることがある。質問に答える側は相手の知りたいことに合わせて答えるべきだ。「そういう意味ならどういうことになる。」質問した生徒の言い方を引用して答えるのも方法の一つだ。先生の答え方が理解できるように再教育しない方がいい。

注意はほどほどに

質問に来た生徒に言ってしまう。

ちゃんと聞いていなかったのか。
教科書は読んだのか。
今ごろ何で。
勉強が足りていないんじゃないか。

わざわざ聞きに来てくれた。他の先生ではなく私に聞きに来た。生徒は答えがわからなくてモヤモヤしている。こう捉えて穏やかに対応してほしい。もちろんタイミングが悪い場合もある。こちらがうろ覚えの場合もある。
はじめに書いたように、とりあえずは生徒の質問内容の確認を丁寧にして、また後で時間をとって回答するのがいい。

パソコンの操作やエクセルの使い方を詳しい人に質問すると、こちらの質問と噛み合わない応答をされたり、余計な説明があったりして、嫌になることがある。短い返答だと知りたいことがわかった気がしない。求めている形で答えてほしい。生徒も同じだ。求めている形で回答するためには、求めている形を知ろうとしなければならない。素早い応答だけでは不十分だ。授業中にすでに説明したことであれば、先生はまた同じことを言わされるのかと、面倒に感じるが、もう一度同じ説明をせず、生徒の求めている答えを探るべきだ。生徒も同じ説明を求めているとは限らない。説明が好きな先生は、もう一度説明することが面倒じゃないかもしれないが、大事なのは生徒の求めに合わせて答えることである。

先生は知識人だ。
先生は物知りだ。
先生は説明できる。
先生は自分の説明に自信がある。

生徒は上手に質問するわけではない。
生徒はわかっていない。
授業と同じ説明を求めているとは限らない。

先生が質問に答えるにはスキルが必要だ。
質問に答えるスキルは授業をするスキルとは異なる。

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