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趣味としての音楽制作の厄介さについて
最近ゴルフレッスンを受け始めました。私は全くの素人なので基礎の基礎からです。場所はダンロップのゴルフ用品ショップ内のレッスン施設。有名メーカーの中であれば、先生の質も担保されていると思ったからです。
立ち方、クラブの握り方、クラブの振り方を順番に教えてもらったのですが、つまりは「物理学」と「再現性」であり、いつも同じ姿勢で同じクラブを使い同じスイングをすれば、ボールは同じ飛び方をするということなのです。単純明快。
理屈はそれだけですから、あとは正しいフォームを身につけるように日々練習すれば、一定以上の実力はつくことが約束されています。
もう一点ゴルフの良いところは、野球や卓球のような直接の対戦相手が居ないことです。だから対戦相手の対策はしなくていいのです。常に自分のコンディションだけを考えて練習すれば良い。
そんなゴルフに対して音楽制作は?
音楽理論、オーディオ、DAWの知識が必要です。
必要でありながら、その正しい知識を教えてくれる人、本、動画の見分け方が難しいです。
なんとかそれらの情報を吸収しながら曲を作れるようになったとしましょう。
曲は完成した。しかし、ゴールは一体どこなのか?
まずひとつ、その曲は「正しいのか?」
よく「音楽に正解はない」みたいな言い方をしますが、これは半分正しく半分間違いです。
ひらがなと漢字をすべて覚えてきれいに書けるようになったとしても、単語も文法も無視して羅列すればそれは文章ではありません。
同様に、きれいな音を無意味に並べ立てても音楽とは認識されないただの雑音なのです。音楽のルールに則って音を並べることにより、はじめて音楽と認識されます。音楽にも「フォーム」があるのです。
ゴルフは「正しいフォームで再現性を高める」ことが本質です。その一方、音楽制作は「フォーム」がありながら「唯一無二の形を作る」ことが求められるという矛盾めいたものが本質です。
上達の道のりが、ゴルフと音楽制作では困難の度合いがかなり違うのです。
わかりやすくいうと
ゴルフは0からのスタートで、あとは練習するだけプラスに。
音楽制作はマイナスからのスタートで、色々覚えてやっと0に到達。
みたいな感じです。
さらに、評価の尺度にも大きな違いがあります。
ゴルフは、明確な数字で結果がわかります。ミスが少なければ少ないほどスコアがあがります。
対して、音楽制作は現状だと動画サイトやSNSの再生数(人気)が指標になると思いますが、その数字は楽曲の良し悪しとはあまり関係ありません。作曲技術が上がるとそれに比例して再生数があがるということはないのです。
むしろ、初めてアップした曲がそこそこ再生されて2曲目以降で数が稼げずやる気をなくす、なんて人がたくさんいることでしょう。
音楽制作は、ゴルフや筋トレのように「やれば成果が目に見える」ものではありません。
達成感を求めてやる趣味として、音楽制作は全く向いていません。達成感を求めるのであればゴルフや筋トレ、楽器の演奏が良いでしょう。
じゃあ音楽制作は趣味として薦められないかといえば、そんなことはありません。音楽制作の面白さはやはり正解のないところにあります。正解がないから、音楽をアカデミックに勉強しなくても突然大ヒットしたりするのです。
正直、音楽制作は厄介です。それでも、あーだこーだとこねくり回すことが好きな人なら、音楽制作はおすすめですし、一生楽しめる趣味だと思います。