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日本地方ホテルから見る社会課題

社会課題と呼んでいいのか、古くからの文化や習慣と捉えるのか。私が感じたものを社会課題、そして1年目経営者としての視点を、こちらに書き残していきたいと思います。
2024年11月に転職活動中に1か月だけ地方ホテルで住み込みのバイトをしました。いわゆるリゾートバイトという募集に応募して採用されました。1か月の短期だと選べる案件があまりなくて、千葉のホテルになりました。ホテルのバイキングと宴会の担当でした。その時に感じたこと、考えたことについて書いていきます。


1年目、経営者が感じたこと

「お客様の視点で、配置を考えたことがないのか・・・。」

バイキングを初日に担当しました。朝夜のバイキングに配膳・下膳を担当しました。しかし、バイキングって最初にお盆をとって、お箸やスプーンをとってからスタートしますよね?お客さんがどこから始めていいのか、わからないことが多くて入ってすぐの場所でお客さんが混雑してしまうのが日常でした。
・間違って大人が子どものお皿を使っている
・お箸、お盆の場所を毎日聞かれる
・毎回同じ場所のおかずで、小皿がほしいと言われる
バイキングの配置と言えど、設備の問題もあるので、自由に変えられないにしろ、お客さんの流れをまったくつかんでいないとても利用しにくい配置だった。
何十年もこのやり方でやっているから、いいという考えなのか。マネージャーと呼ばれる人は何人かいるが肩書だけで、配置やお客様の声を拾うというのはまったくなかった。今、ビジネスを始めた私にとってお客さんが何を感じて何に価値を感じてくれているのかめっちゃ重要だけど、何十年もやっている老舗のホテルではそんなものないのか。がっかりだ。

「オリエンテーションがない」

ホテルに着いた当日には担当者がドミトリーと働くバイキングの場所を教えてくれて終了。明日はバイキング上に7時に来てね。と言われるだけ。さて、バイキングに7時に行ってみると何をするのかわからない。誰が今日私に指示を出してくれるのかもわからない。
担当者からバイキングの説明もなしにいきなり始める業務。他のパートさんや派遣さんの真似をしたり、質問して教えてもらう。
しかし、他のスタッフも「わからないことがあったら聞いてね」とも言ってくれない。これは驚いた。私は転職を5回以上しているが、最初は「わからないと思うけど、聞いてね。」「慣れるまで時間かかるけど、慌てないで聞いてね」と定型文のように言われるものだ。しかし、このホテルで1か月働いたけど、一度も言われることがなかった。みんなそんなこと言われずに、自分でなんとかしてきたから、お前もなんとかしろということなのか。
とても悲しい。
人の出入りが多いホテルだからこそ、マニュアルとオリエンテーションをしっかり作りこめば、新人が短期で即戦力に慣れるのはないだろうか。

「司令塔・責任者がいない現場・・・」

副支配人、社員、パート、派遣(私)を含めたメンバーで業務をするのだが、誰がその場をリードするのか明確ではないため、誰に指示を仰ぐのかわからず、その日の全体を把握できない。

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ユニクロでアルバイトを3年していたが、出勤時間が違っても、ちゃんと朝礼の時間はあって、その日のその時間帯リーダーが、朝礼をして、その日の目標や注意すべきこと等の連絡事項を伝える。当日社員さんが何人もいて、その時間帯の責任者が誰か明確だったので、全体をみて指示する人がいるし、私も質問できた。
ホテルには朝礼がなかった。だから、当日の全体像もわからず、社員の誰がリーダーかもわからず、「私に聞かれても~」とかいう返事をもらったりした。当日の客数も客層も毎日変わる。バイキングのお客さん数でオペレーションが変わるのに、なんとなく社員の人知っているから、一人ひとり聞かないといけなかったり、急な変更が出ても知らなかったりする。特に派遣は知らない情報が多かった。朝礼もなく、各スタッフの担当指示されていないため、暗黙の了解で動かないといけないため、派遣ではじめてホテルで働く人にとってはわからないことが多すぎる。オリエンテーションがないことにも触れたが、入ってすぐに周りからのサポートがまったくなく心理的安全性がまったくない場所だと感じるだろう。若い社員さんが続かなくて辞めてしまう、なんて聞いたので、この環境なら仕方ないだろうなと思った・・・。

人材育成の大切さ、育成計画。

ケニアでビジネスを始めると、働くお母さんにどうやって技術を習得してもらうのか、そして高いモチベーションで働いてもらえるのかを考えています。そうなると、こんなようなものを考えますよね。
・日々の目標設定をする
・長期的な人材育成計画を立てる
・成長に対して、役職を与える
・評価制度を作って昇給制度をつくる
しかし、実際の現場では日々の業務が忙しすぎて軽視されてしまいます。今考えると、ユニクロは昔からKPIを設定して、それをアルバイトまで意識させているというのは、簡単にできないことだったなと思う。店長を含めて、リーダーたちの育成をエリアマネジャーがしていたのであろう。

ホテルの現場で働く人は日々の目標や長期的な目標がなく、ただ単純作業を行うだけです。クリエイティブな仕事はありません。ひたすら毎日同じことをやるという仕事は非常に面白みのない仕事だなと思ってしまった。
本来なら、お客様に合わせて今日のお客様はこうゆう方が多いので、ここに気を付けてほしい等々連絡事項があるはずだ。特に短期で仕事に来る私のような派遣には”過去の経験”がないので、今日は福祉施設の研修旅行団体が多いなと感じても何を気を付けなければならないかわからない。
クリエイティブの部分で考えてみる。若い社員さんにバイキングの改善を投げてみてもいい。バイキングであれば、お客様の満足度をあげるために配置を変えてみるとか、感想を聞いてみるとか、ABテストを試してみるというのはできるのではと思った。社員に対して自発的に考えて行動する機会を作るのが経営者の責任ではないでしょうか。

参考URL http://www.hbs.gr.jp/?page_id=2275

極めて素人経営者の視点ではありますが、それができる企業が成長しているのではないかと。企業が大きくなればなるほど、それが難しいが、できれば、社員やスタッフが充実した時間を作ることができると思います。

ユニクロは、海外で劣悪な状況で労働者を雇っているため、私ももう買うことはないが、ユニクロでのバイトはとても楽しかったし、充実していたことを覚えています。毎日の売上目標に対して、客単価と客点数をいくつであれば、いいのか。買ってもらう点数を増やすためにかごを配ってみたり、工夫することもあった。バイトの私が他の若手のバイトを育成を担当したり、いろんな取組みがあったのを今でも覚えている。

地方の人材不足

参考資料

日本の人材不足は、よくニュースでも取り上げられていますね。
原因としては以下のようなものが例として挙げられています。https://furusatokengyo.jp/media/howto/p10597/

  • 東京や大阪などの大都市に人口が集中している

  • 採用活動に費用(コスト)をかけることが難しい

  • パート職からフリーランスへの働き方の変化があるから

  • 採用活動に時間を投資できない

  • 従業員の離職が多く発生している可能性がある

ホテルは、かなり田舎でスーパーやドラックストア等のない場所でした。車での生活が基本で、隣町に行かないとスーパーがなくて、見るからに街には若者が少ない状態でした。子どもがどんどん少なくなっている地方で、ホテルを就職先に選んでくれる人が少ない。そして、就職してくれたとしても、同じような若い世代がいなければ、浮いてしまうし、上記の通り、親切に教えてくれるような環境であれば、辞めてしまいますよね。悪循環・・・。客さんだけでなく、スタッフにとって魅力的な場所にするということは本当に重要。

ホテルの場合は季節性という部分も置きくなります。夏は海の近いホテルでは満室になりますが、2月とか寒くて海風が辛い時期はお客さんが少なくなります。スタッフの人数は1年中同じだと、困るわけです。そこで派遣さんが役に立ってますね。私のように1か月、2か月で仕事に行くわけです。

外国人労働者の受け入れ、難しさ

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ホテルで感じたことは、外国人の労働者の方にとって、決して環境はよくないということです。

人材不足の中で、社員として採用されるのが、外国人の方々。私のいたホテルでは、ベトナムやフィリピン、中国からの方が働いていました。一人に聞いてみましたが、日本語学校に通った後に学校から紹介されて就職したそう。日本語のレベルに寄って就職できる会社も変わるようで、他の日本語と英語ができる学生は、東京の高級ホテルに就職できたとか。

そんな話を聞いた後に、千葉の有名ホテルのフロントで日本語が拙い方が担当してくれ、こうゆうところで働ければ、キャリアとしてもいいし、給与も良いのではないかと想像しました。

ホテルでは、外国人の労働者に対するケアはまったくなかった。日本語が完璧にできるわけではないので、コミュニケーションの中で、噛み合わせないことも多くありました。私はそれは仕方ないと思いますが、ホテルの古いメンバー(年配の方)は、それにイライラしたり、きつい指摘をすることがありました。同じ同僚ではなくて、”外国人”としての扱いをしているように感じました。私は外国人でなくても、他人と違う環境で生きていれば違う価値観になるし、意見も変わると思う。
また、習慣や文化の違いももちろんあります。ホテルには宴会場もあって、お座敷で食事を提供しなければいけませんが、正座なんて今の日本人でもきつい姿勢ですよね。正座をしながら、料理を提供するのが、できないと言われたら、それまでですよね~。

日本の女性、こんなにも低い立場。無視される人権。

参考資料

今回のホテル仕事における一番のカルチャーショックは、お客様からの女性に対するセクハラ。セクハラを超えて、性暴力か・・・
団体のお客さんは、バイキングではなくて、貸し切りの宴会での食事がある。その中で、お客さんによっては、”コンパニオン”を呼びます。コンパニオンなんて言葉久しぶりに聞いたけど、今の時代にもいるんだとびっくりしたけど、宴会でお酒を注いだり、お話相手をする方です。全員女性でした。短いスカートを履いた派手めの女性たち。お客さんがコンパニオンの体をべたべたさわり、お酒の勢いで胸を触ることも。これにはびっくりして、動けなかった。助けないといけないのかと思ったが、コンパニオンは適当に流していた。日常茶飯事だという。

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後日、宴会場の外にいただけど、酔っぱらったお客さんが、「これくらいの体形の方が健康的で好みだよね~」とおしりを触られた。

私はびっくりしすぎて、何もできなかった。声も出ないし、動けもしないし。すぐに手を払うことさえもできなかった。電車の痴漢にあった人が声も出せなくてってよく聞くけど、こうゆうことなのかと。

カスタマーハラスメントなんて、言葉があるけど、お客さんに対して「やめて下さい。これはセクハラです」なんて言える環境ではなくて、他のスタッフの様子を見るとこれは日常的なことだそう

私は勘違いしていたようだ。日本も女性の社会進出が進んでいろんな変化があると思っていたが、見えづらいところに、女性の人権が無視されていて、それを言えない状況。そして、組織(会社)は、守ってくれない。
そんなひどい社会なのか、日本は・・・。

私は、セクハラや性暴力に対してどのように対応すべきか、教育を受けていないということも、改めて今回わかりました。今まで痴漢とかにあったことがない私は今回極めて不快なことをされたのに、何もできなかった。周りの女性社員は何もしなかった。周りの人がそのような場面でどうしたらいいのかも、わからない。これが日本のジェンダーギャップが低い証拠なんだなと。

性的欲求は普通のモノ。これがビジネスになるのか普通のことか。

今回、コンパニオンを呼ぶような男性を呼ぶことが残念だなと思ったけど、性欲というものは人間の基本的な欲。いつの時代にも、世界中のどこにでも、あるもの。風俗がない国なんてない。宗教上禁止、法律上禁止されていても、陰には存在する。もしもっとジェンダーギャップが無くなる世の中で、男女平等に近づいてきたとしても、人間の欲というものは無くならない。コンパニオンという仕事はどんな時代になっても無くならないのか。

一緒に宴会に入った女性が目を付けられて、「いいじゃん、電話番号教えてよ~」「俺の好みだから、マスク取って顔見せてよ~」と絡まれていて、「いや~恥ずかしいので~」とか言ってごまかす姿を見て悲しくなった。お客さんに対して、”従業員”で”女性”であるその人は、はっきりNOと言うこともできずに、お客さんのご機嫌を取りながら、セクハラをかわさないといけない。なんて悲しい社会。私は比較的はっきり断っていたら、お客さんの機嫌が悪くなることもあった。セクハラとカスタマーハラスメントの両方を受けながら、こんな職場で働くなんて耐えられない・・・。

が、きっとこのような環境はすぐには無くならない。だったらせめて、相手の合意なしにセクハラ・性的な行為をするのだけはないように、コンパニオンやホステスが守られる世の中になってほしい。宴会を対応するときに、危ないお客さんがいたら、男性スタッフや他のスタッフと交代できる体制だったり、スーパーバイザーが少し入って見守ってくれる等々の社員を守る体制が最低限必要ではないか。
今後社会で”欲”がビジネスの中で、規制を含めて、人が守られているのか。どうなっていくのか見守っていきたいと思います。

福祉施設の旅行としての人気の場所

プラスの発見は、このホテルは福祉施設の利用者さんの宿泊の受け入れをかなりの数やっているということである。知的・身体障害を持つ人たちが施設の方の支援を受けて、泊まりに来て、ご飯を食べ、温泉に入り、帰っていく。これはすごいと思った。障害のある方に1人以上の介助者が付いて、旅行に行けるなんて、ケニアでは考えられない。10人の要介護者がいれば、15名くらいのスタッフも一緒だ。このホテルは宿泊者要望に応えて料理を変えたり、みじん切りで提供することも対応している。とある施設の方は、「こちらのホテルに毎回お世話になってて~」と話してくれた。スタッフが特に障害のある方の対応に対する研修を受けているわけでないが、車いすの方もいる中でバリアフリーで受け入れをOKしてくれるホテルは逆に少ないのかもと思った。もし都内からあまり遠くなくて、泊まれる小旅行の場所というとこのような地方のホテルが良いのかもしれない。

最後に

ということで、マイナスの面をたくさん書いてしまいましたが、ホテルで一緒に働いた方には感謝。びっくりするような社会課題がたくさんあるし、一緒に働いている人の価値観や意識の低さは感じたけど、いろんな人がこの世の中にいるんだなと感じた。
残念ながら、このような老舗のホテルが日本の経済を引っ張っているだろうし、まだまだニーズの高いサービスである。高齢者のバス旅行とかで訪れる方も多くて、老舗の大きいホテルに泊まれるということも、きっと喜びなんだろう。私(37歳)世代からすると昭和な感じな雰囲気で、魅力的ではないけど、高齢者世代にとっては老舗のホテルで、価値のあるものなんだろう。日本は超高齢社会。お客さんはまだまだいるのだろう。



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