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読めない本の話
※地震や津波の話をします。
阪神淡路大震災から30年。
当時わたしが住んでいた京都の家も揺れた。
ロフトベッドに寝ていたわたしは突然激しく揺り起こされた。
一体何が起きたのかと思った。
経験したことのない激しい揺れ。
普段は朝に弱いタイプだが、もう完全に目は覚めていた。
住んでいたコンクリート造りのタウンハウスに被害は無かったが、通っていた学校の柱にはヒビが入っていた。
それを覚えているということは、その日学校に行ったのかもしれない。
もうひとつその日の記憶として残っているのは、当時仲の良かった友達の家で見たテレビの中の光景。
神戸の街に何十本もの火柱が上がっていた。
現実だとは思えなかった。
あれから30年。
今でもゴォォッという小さな音が怖くて、いつもキュッと身構えてしまう。
本棚の中に読めない本がある。
最後まで読みたくない、というか。
東日本大震災で84名が亡くなった大川小学校について書かれた本。
もう何年も前に手にして読み始めたが、少しだけ読んで、そこから先を読めなくなってしまった。
大川小学校は大きな地震の後、さらに津波に襲われた。
本の中には地震が起きる前から、恐らく津波が去った後のことまで書かれている。
わたしが本を読み進めると、地震の前にそこに生きていた人たちが津波にさらわれてしまう。
本の中でまで津波にさらわれてほしくない。
そう思うと、どうしても読めなくなった。
さっき本棚からその本を取り出して、初めの何ページかをめくってみた。
そして、本棚に戻した。
メルマガ登録しているアーティストさんから届いた今日のメールに、こんなようなことが書いてあった。
震災は忘れたころにやってくるから、震災を知らない子どもたちに少しの知識でも伝えておきたい。
そうしないと亡くなった方が報われないですよね。
目に留まった何かが自分へのメッセージだと聞いたことがある。
今日わたしに宛てて送られたメッセージ。
本を最後まで読まなければ、「亡くなった方が報われない」ように感じた。
本棚のその本を、手に取った。