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「電気サーカス」を読んだ

 「電気サーカス(唐辺葉介)」を読んだ。とても面白い話だけど、かなり露悪的な「電気サーカス」なので、万人におすすめできる感じではないなあというのが全体としての感想。

https://www.amazon.co.jp/dp/B00GU6A8YG/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_Dmw9FbYGW5QCM

 向精神薬乱用やら、(当時の)合法ドラッグやら、酒びたりやら、セックスやら、暴力やらがガンガン行き交う最悪シェアハウスの住人の破滅人間の話を、そのまま小説という形にしたという感じだった。
 テキストサイト華やかなりし頃の、インターネットがまだアングラだった頃の空気感がそっくりそのまま出ていて、何だか懐かしさすら感じてしまう。正確には、自分よりもう少しだけ上の世代の空気感だと思う。

 自分の身に覚えのある破滅感が醸し出されている文章を見ると、ウッとなってしまう。何にウッとなったかをさらけ出すのは自分をさらけ出すことと同じなのであんまり言わないが、破滅したことがある人なら刺さるであろうトゲが至るところに散りばめられている。
 この恐ろしく性格の悪い人たちの話はとても面白いなあと思うが、この小説を面白いと思わないタイプの人間の方が生きやすいんだろうな、と思う。もしくは、この小説の中身を完全な別世界として眺められる人間として生きたかったな、と思う。

 電子書籍で買ったので、文章だけをダーっと読んだのだが、cakesの方にはポップな絵がついている。この絵を見ながらなら、別世界の「サーカス」として眺められるかもな、とちょっと思った。
https://cakes.mu/series/328
 文章だけでは、ちょっと生々しすぎる。きちんと芝居がかった形に仕立ててはあるけれども。

 作中のとあるシーンで、主人公の水屋口がこう語っていた。
>寒いのも濡れるのも、厭なものはなんだって、どうでもいいやって諦めてしまえば、そのうち不快を通り越して良い気分になるって……わかるかなあ。僕はそういうのが案外得意なんです。寒くて顔の皮膚とかこわばって、すると不思議とワクワクしてきて。
 ここのところとか、実に刺激ジャンキーらしいなあと凄く共感してしまった。まあこれをずっとやってると身体ぶっ壊れるし、身体ぶっ壊れるとたのしくないから、最近はちょっと意識的に痛みやつらさを認識しようとしているけれども。


 最後まで読み切ってから真赤の行動をもう一度ちょっと見返してみてると、また違って見える。何回か読んだほうがよさそうだな、と思う。

人間の資本が増えます。よろしくお願いします。