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日本の移民/難民について「多文化共生を身近に考える」

国内外の難民ニュースについて取り上げる本シリーズ。
前回に引き続き、今回取り上げるのは、National Geographicの「ソウルフード巡回の旅」いちょう団地編です。

いちょう団地は多くの言語が飛び交う、多文化を感じることの出来る場所です。
そんな多文化が集う、いちょう団地の今に迫っていきます!

◆いちょう団地って?

記事にあるとおり、いちょう団地は横浜市と大和市にまたがる県内最大の公営団地で、住民の4分の1が外国籍の住民です。

1978年に日本がインドシナ難民(※)の受け入れを始め、大和市側に定住促進センターができたことも外国籍の人が多いことに関係しています。

※インドシナ難民:ベトナム戦争後、1975年ベトナム、ラオス、カンボジアが社会主義政策に移行したことにより、経済制裁や迫害により自国から他国へ逃れた人々。約140万人の人々が難民として世界に定住しました。
(一般財団法人 アジア・太平洋人権情報センターホームページより)

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日本は1978年から2005年にかけて、11,319人のインドシナ難民を受け入れました。(内、全体の約75%にあたる8,656人はベトナムからの難民の方々でした)

定住促進センターでは、難民に心身のケア、日本語・文化の授業を提供していました。その後定住促進センターを卒業した難民の方々が近郊の県営の団地に暮らすようになりました。

現在のいちょう団地では、難民として来日した人々、その子ども、また、労働者として来日した家族等10カ国以上の人々が暮らしているそうです。

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(いちょう団地一部)

◆他文化と向き合う

今でこそ、多様な文化背景を持つ人々が試行錯誤しながら一緒に手を取り合い暮らしている様子や、ベトナムレストラン、韓国料理店が多い多様な食文化が集うスポットの一つとして紹介される等、ポジティブなイメージで語られることも多いいちょう団地ですが、以前は文化の違いなどから住民間で対立が生まれることがありました。

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(6カ国語で書かれた団地のルール)

多国籍の人々が住む団地の問題として、よく取り上げられるのが、「ゴミ捨てマナー」です。日本人はゴミを分別して捨てなければならないことを知っています。しかし、そのルールを知らない人々が分別せずに捨ててしまうと「マナーが悪い」と思われてしまうのです
日本の当たり前が、他国から来た方々にとってはそうでないことは多くあります。異なる文化背景を持つ人々が共生していくためには、一様に「マナーが悪い」と判断するのではなく、個々の文化の違いを認めあい、なぜ、その問題が発生するのか、どうすればお互いが気持ち良く生活できるよのかを話合うことが大切だと言えます。

いちょう団地でも、共に暮らす中でお互いが歩み寄り、団地内の自治会でお互い意見を出し合ったり、祭りなどのイベントを開催したりして、積極的に文化交流をすることで相互理解が促進したそうです。

◆さまざまな文化と共に育つ子ども達

いちょう団地近郊の公立小学校では、生徒の半分が外国にルーツを持つ子ども(※)です。

※外国にルーツを持つ子ども
国籍にかかわらず、父・母の両方、またはそのどちらかが外国出身者である子ども

外国ルーツの子ども達について書かれた記事はこちら↓

小学校の子どもたちは文化の違いがあることが当たり前の環境で育っています。

小学校では、日本語を学習中の生徒が日本語を母語とする生徒と一緒に勉強ができるようカリキュラムが工夫されています。たとえば、少人数の日本語の授業の実施、日本文化を学ぶサポート、日本語が苦手な生徒のための各言語の通訳の派遣など、生徒一人ひとりにできる限り寄り添った学習の支援を行っています。

また、それぞれのルーツのアイデンティティを守るために、校内に各国の文化を紹介するコーナーがあり、数カ国語での挨拶表現が掲示してあるそうです。

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(団地の中にある、2014年に閉校した横浜市立いちょう小学校の外壁。様々な国の言葉が描かれています。※現在、近隣の小学校と合併し、飯田北いちょう小学校となりました。)


いちょう団地のように、団地に沢山の外国籍の方々が住む例は全国にあります。政府の推進する外国人労働者や研修生の受け入れ拡大により、日本では、ますます外国籍の人々が増えていき、いちょう団地のような地域が増えていくでしょう。

これからは「日本」と「日本以外」という切り分けではなく、また「日本」の社会に外国人が馴染むではなく、様々な文化が一つの個性として共に生きていけるような社会造りが重要だと考えます。

いちょう団地では毎年10月、「いちょう団地祭り」が開催されています。
お祭りでは、各国の伝統的なイベントが開催される他、様々な国の屋台料理を食べることができます。昨年は新型コロナウィルスの影響で中止だったそうですが、今年開催される場合は、ぜひグルメを堪能しに遊びに行ってみてはいかがでしょうか!?


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最後までお読みいただき、ありがとうございました! 次回も難民、移民に関連したニュースの解説を配信します。

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執筆: 里見 春佳(Living in Peace)
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