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『映画:希望のかなた』★LIPカルチャー部

こんにちは!
Living in Peace(以下、LIP)難民プロジェクトです。

「LIPカルチャー部 ★難民問題が学べるイチオシの作品では、難民問題に興味を持ち始めた方、より詳しく知りたい方のために、毎月1回LIPメンバーがおすすめカルチャーをご紹介しております。

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さて、第2回目、ご紹介するのはこちらの映画です!


◎作品紹介

【希望のかなた】
・アキ・カウリスマキ監督/制作/脚本
・2017年製作/フィンランド/98分
2017年ベルリン映画祭にて上演され、観客のみならず批評家からも圧倒的な評価を受け、監督賞を受賞。大変評価の高い作品です。
同監督は2011年に製作した「ルアルーヴルの靴みがき」という作品でも、フランスの港町で生活をする移民の少年を取り上げており、ヨーロッパの移民・難民問題への問題意識が垣間みえます。

◎あらすじ

貨物船に積まれた石炭に紛れこみ、フィンランドの首都ヘルシンキに行き着いた主人公、カリード。
彼は故郷シリアの内戦に巻き込まれすべてを無くした為、妹と共に国境を越え、ヨーロッパにたどり着いたシリア難民である。
越境する際に混乱に巻き込まれ妹とはぐれてしまった彼は、妹との再会を叶えるべく、激しい差別や暴力を受けながらもヘルシンキでの生活を始める。
それと並行して、ある中年男性の物語も同時に描かれる。家庭に問題があり、家をでたヴィクストロムは新しい生活を始めようとレストランの経営を始める。
そこからカリード、ヴィクストロム2人の人生が重なり、物語は進んでいく...

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◎見どころ

作中では、主人公の壮絶な過去、ネオナチによる激しい差別や残虐な暴力シーンなど、フィンランドやシリアの現状を批判したシリアスなエピソードが盛り沢山ですが、感情の起伏の見えない登場人物の表情や演技によって淡々と物語は進んでいきます。
日本の映画やドラマに慣れている私としては
「そこもっと苦しい感じじゃないの?!」
「今、涙流すところじゃないの?!」
と無粋なツッコミも何度か浮かんできましたが、その単調な演技によってリアルさが一層強調されていました

その一方で、フィンランドの街中で出会う優しい人々の助け合いが、コミカルに、丁寧に描かれています。
家庭をなくしたヴィクストロムを筆頭にホームレスの人々、無給で3ヶ月働く人々、捨て犬がカリードを助け「妹に会いたい」という彼の願いを静かに応援するのです。
社会の"主流"から外れてしまった人々が、互いに優しさをお裾分けしているかの様な描写にはグッとくるものがあります。

◎最後に

※少々ネタバレ含んでます!これからご覧になる方ご了承ください...

わたし自身、難民問題に関心を持ちLIPで活動しておりますが、個々の物語を持っている方々を”難民”と一括りにされたものとして捉えてしまい
一人ひとりの具体的な姿や人生を知ろうとする意識が足りていなかった
様に思います。
本作品で登場人物の人生を物語として追随していく中で、
「カリードにはどんな過去があったのだろう」「どんな思いでフィンランドまでたどり着いたのだろう」「これからどう暮らしていくのだろう」と、想像を膨らませることができました。
呆気なく迎える、希望のないラストシーンでは、カリードの人生が今後も不安定なまま続いていくという事が残酷なまでに描かれていますが、この映画をみた人たちが、どこかで生きている誰かの人生を想像し、苦しみや悲しみに少しでも思いを馳せられるよう願っております。

最後に、カリウマスキ監督が「希望のかなた」に込めたメッセージで締め括りたいと思います。

私がこの映画で目指したのは、難民のことを哀れな犠牲者か、さもなければ社会に侵入しては仕事や妻や家や車をかすめ取る、ずうずうしい経済移民だと決めつけるヨーロッパの風潮を打ち砕くことです。
(略)
そんな企みはたいてい失敗に終わるので、その後に残るものがユーモアに彩られた、正直で少しばかりメランコリックな物語であることを願います。一方でこの映画は、今この世界のどこかで生きている人々の現実を描いているのです。(アキカリウマスキ監督からのメッセージ/希望のかなた公式サイトより引用)

以上、11月のおすすめ作品でした。
来月もお楽しみに!

執筆:星島(Living in Peace)

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