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犬と猫のチョコレート中毒

2月はバレンタインシーズンですね。
近年では、自分用にチョコレートを用意する「ご褒美チョコ」も話題になっています。
1年で最もチョコレートが身近になるこの時期に特に注意したいことは、犬や猫のチョコレート中毒です。

犬や猫にチョコレートを与えてはいけない理由や、中毒症状、誤まって食べてしまったときの対処法についてご紹介します。

■チョコレートなどに含まれる「テオブロミン」

チョコレートの中には、カフェインとよく似た物質のテオブロミンという成分が入っています。テオブロミンは、チョコレート、カカオ豆、カカオ豆の外皮、コーラ、茶にも存在しますが、特にチョコレートカカオ豆には多く含まれています。
テオブロミンをヒトが摂取するとリラックス効果をもたらすことが知られています。

ヒトの場合は、のチョコレート等で日常的に摂取するテオブロミンであれば体には害を及ぼすことはありません。
しかし、犬や猫にとっては少量でも命の危険に関わる成分なのです。

■テオブロミンは犬や猫には危険!

犬や猫はヒトや他の動物に比べて、摂取したテオブロミンを代謝(解毒分解)する能力が非常に低いため、チョコレートなどを誤食した場合、テオブロミンの作用が強く出てしまい中枢神経や心臓に害を及ぼすような 、中毒症状を起こします。

犬ではテオブロミンを分解排泄する能力は17.5時間でやっと50%分解排泄すると言われています。ヒトの場合の50%分解排泄までの時間は6時間と言われているので、犬や猫ではヒトよりもテオブロミンが体内に長く残ります。
そのため、作用が強く出てしまうのです。

■テオブロミンによる中毒症状

テオブロミンによる中毒はチョコレートを食べ始めて数時間から半日ほどたってから発症するので、チョコレートを間違って食べてしまって一見大丈夫そうに見えても、あとから中毒症状が出てくる可能性があります

テオブロミンによって中毒を起こした犬や猫は、チョコレートを食べてから4~5時間後くらいから嘔吐、下痢、喘ぎ、落ち着きのなさ、失禁などがあらわれ、さらに震え、頻脈、心臓のリズム障害、こん睡、けいれんの症状が出て、突然死に至ります。


なお、チョコレートによっても含まれているテオブロミンの量は違い、苦みの強い、いわゆるビター系のチョコレートは含有量が多いので犬や猫が食べないように特に注意しておく必要があります。

図38

■チョコレートを食べてしまったときの対処法

緊急を要しますので、速やかに動物病院に連絡し、獣医師さんの診察を受けましょう。
「いつ、何を、どれだけ食べたのか」をしっかりと伝えることが大切になります。特に、チョコレートの種類は必ず伝えましょう。

■犬や猫にチョコレートを食べさせないための予防策

①犬や猫が届くところに置かない
ゴミ箱も開けられないようにフタつきのものにするなどの対策をとりましょう。

②ヒトが食べているものを与えない
チョコレートが含まれているクッキーやアイスも厳禁です。

③包装紙はすぐに処分する
包み紙の内側にもチョコレートが付着している場合がありますのですぐに捨てましょう。

④調理器具を片づける
家庭でチョコレート菓子を作った場合は調理器具を台所に放置せずにすぐに洗いましょう。

⑤チョコレートが含まれた他の食品にも注意する
チョコレートを含んだケーキやお菓子、菓子パン類、キャンディ、朝食用のシリアルなどにも注意が必要です。


「ちょっと目を離したすきに」、「『あっ』と思った時には、もう遅くて」といったようなわずかな不注意が誤食事故につながっています。
誤食事故を予防するとともに、万が一事故が起きた場合にはすぐに通院できるよう普段から動物病院を探し、備えることが重要です。


参考文献)
大島誠之助・左向敏紀,禁忌食(その2)―チョコレートとイヌ・ネコの健康,ペット栄養学雑誌,15(1):36-38,2012


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