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「7つの習慣」の全体像
本講座は、スティーブン・R・コヴィー博士による名著『7つの習慣』の内容やエッセンスをお届けし、実際にそれを自分の人生の中でも実践していこうという講座になります。
第1回の本稿では、そもそも「7つの習慣とは?」といった基本的な内容の全体像や、なぜこの「7つの習慣」が世界中でこれほどまでに読みつがれ、この講座でも取り上げるのかについての理由をお話していきます。
できるだけ簡潔に、はじめての方でも分かりやすく取り組めるように解説していきたいと思いますので、続きの更新もお楽しみに、どうぞよろしくお願いします。
「7つの習慣」とは
7つの習慣は、著者であるスティーブン・R・コビー博士がアメリカ建国200年の間の成功哲学に関するあらゆる主要な書籍を研究する中で生まれた、自己実現や成功、人生の効果的な生き方についての決定的な習慣です。
私はこの「習慣」という言葉については、それを超えた概念だと個人的に思っていますが、まずはこの概念がどのような動機と目的地を目指して使われているのかを説明します。
コヴィー博士は、現代の社会に必要とされることの中で「自立が必要だ」という意見が大勢を占めているが、さらに「相互依存の能力」が必要だと「はじめに」で語っています。
自立は重要だ。それどころか不可欠であり、達成しなければならないものである。しかし私たちの社会は相互依存で成り立っているのだから、自立という土台の上に、相互依存の能力を身につけなくてはならない。何であれ重要な成果をあげるにはどのようなスキルにもまして、相互依存の能力が必要なのである。
この相互依存の能力を身につけるためには、大きく分けると3つの段階があります。
【第1段階】私的成功…「依存」から「自立」へのアプローチ
【第2段階】公的成功…「自立」から「相互依存」へのアプローチ
【第3段階】再新再生…「相互依存」の習慣を日常に再生させる
第1段階の「私的成功」は、行動規範や判断基準が自分にはなく、他者や環境、その他自分以外のものから受け取ってしまう「依存」の状態から、「主体的である」(第1の習慣)こと、「終わりを思い描くことから始める」(第2の習慣)こと、「最優先事項を優先する」(第3の習慣)ことを通じて、「自立」へと到るアプローチです。
そして、第2段階の「公的成功」は、自分の深い願いや判断基準が己から発せられた「自立」の状態を、他者との相互依存で成り立つ世界で効果的に能力や人間関係を発展させていく「相互依存」のステージへと上げるアプローチです。
そこでは、「Win-Winを考える」(第4の習慣)ことや「まず理解に徹し、そして理解される」(第5の習慣)こと、そして「シナジーを創り出す」(第6の習慣)ことが求められています。
そして最後の第3段階「再新再生」は、第1から第6の習慣で身につけた相互依存のパラダイムを日常の生活、自分の人生に落とし込み、連続した成長を続けていくための習慣です。
そのために必要なことが「刃を研ぐ」(第7の習慣)ことです。
この7つの習慣は独立しているものではなく、相互に結びつき合っている体系的なものであると、コヴィー博士も次のように述べています。
「7つの習慣」は、断片的な行動規範を寄せ集めたものではない。成長という自然の法則に従い、連続する段階を踏んで、個人の効果性、人間関係の効果性を高めていく統合的なアプローチである。依存から自立へ、そして相互依存へと至る「成長の連続体」を導くプロセスである。
そして、「7つの習慣」と「依存、自立、相互依存」パラダイムの関係を「成長の連続体」で表したしたものが以下の図です。
![](https://assets.st-note.com/img/1737167854-YKDuwZ5EzbaAUGnvIkSLr1td.png)
このような「依存」⇢「自立」⇢「相互依存」へと到る連続した成長のサイクルを実現する実践群が「7つの習慣」だということです。
また、コヴィー博士は「習慣」の定義を、「知識、スキル、意欲の三つが交わる部分」としています。
何をするのか、なぜそれをするのかという理論的なパラダイムである「知識」と、どうやってするのかという「スキル」、そしてそれをしたいという気持ちや動機を示す「意欲」の3つすべてを満たす部分が習慣だということです。
その意味でコヴィー博士のいう「習慣」は、考え方やマインドセット、価値観などを含む、かなり広い意味の習慣だということです。
世間一般でよく認識されている習慣は、例えば「歯を磨く」「運動をする」「読書をする」などといった行為のことを指します。
しかし、これらの行為は「知識」や「スキル」にしか焦点を当てていない場合も少なくなく、それをしたい「意欲」も含めた有機的なつながりをもっていなかったり、相互の関連が薄かったりする場合もあります。
そういったものは、博士のいう「習慣」とは呼べないこととなります。
自分の人生を自分で決定するという「主体的である」(第1の習慣)姿勢を持ち、成し遂げたいことの「終わりを思い描くことから始める」(第2の習慣)ことで理想の自分、目指したい姿をイメージ・計画します。
そして日々の生活の中で優先順位を持ち、「最優先事項を優先する」(第3の習慣)ことによって小さな思いの種を蒔く行動を積み重ねます。
その行動が積み重なり、自分の願いや目標に向けて自らが自分の価値観に従って動いていく「自立」が達成されます。これが「私的成功」です。
そして、「自立」した個人が他者と関わるときに「Win-Winを考える」(第4の習慣)ことで、個人の利益だけでなく相互依存の社会を生き抜く足場となります。
実際に他者と共存・共栄していくときに必要な姿勢として、「まず、理解に徹し、そして理解される」(第5の習慣)があります。自分が相手に理解されようと望むのではなく、まずは相手を徹底的に理解しようと努めるのです。
そうすることで、相手も私に対する信頼感をもち、私のことを理解しようとしてくれるでしょう。
そのような信頼関係を結んだ私と他者の1+1の結果が、3にも5にも10にだってなる相乗効果があげられるようになります。その相乗効果が「シナジーを創り出す」(第6の習慣)という意味です。
他者とのシナジーを作り出した状態を「公的成功」と呼びます。
この「公的成功」を一度でも作れれば、私達の人生の在り方や効果性に大きな影響をもたらしますが、それを継続的に生み出せるように「刀を研ぐ」(第7の習慣)のです。
刀を研ぐとは「人格を高めること」であり、人間の本質的な4つの要素である「肉体、精神、知性、社会・情緒を鍛えること」です。
これらの要素を不断の努力で日々鍛えることによって、私達の人生が素晴らしく好転し、数々の目標や成功を収める力を手にすることができるのです。
「7つの習慣」の優位性
ここまでは、「7つの習慣」の全体像や「相互依存」へと到るアプローチの概要について述べてきました
ここからはなぜ私がこの「7つの習慣」を取り上げてこの場で解説したり、実践できるように講座を組んだりするのかという理由を3つ話させていただきます。
理由① 人間の本質、人生の根本に立ち返った「原則」であること
「7つの習慣」は、昨今の多くの自己啓発書にあるような1人の経験、あるいは特別な状況における成功談のようなものではないということです。
コヴィー博士が、アメリカ建国200年の成功哲学、人生哲学について研究を重ねた集大成であるため、多くの人に還元可能な「原則」となっています。
本書の中では、コヴィー博士がさまざまな講演やコンサルタントの仕事、ご家庭や相談などを受けて体験した事例を数多く紹介されていますが、それらも全て「7つの習慣」という「原則」に従って成功したり、失敗したりした具体的なエピソードが紹介されています。
帰納的に個人の体験から抽出された成功法則ではなく、膨大な研究結果から演繹的に導き出された規範性の高いものだということがいえます。
つまり、多くの人がこの「原則」に従って行動すれば、自分の願いや目標が実現する可能性が高いということです。
逆を言えば、この「原則」を知らないがゆえに間違った方向に進んでしまったり、効果的でないことを繰り返したりしてしまう人が多いのです。
このことだけでも、「7つの習慣」を学び、実践する意義は大いにあると思っています。
理由② 体系的であること
2つ目に、「7つの習慣」が独立した実践ではなく、相互に関連し合い、段階的、系統的に示された指標であることです。
いわば、私たちが自分の目標や夢、効果的な人生に向かって歩んでいくときの「地図」だということができます。
今の自分はどこにいて、どこに向かうべきかという羅針盤やコンパスのような働きをしてくれます。
人生が何か上手くいかない・解決策が見えないときには、どこかの習慣や考え方ができていなかったり、間違ったりしている可能性があります。
それを見つけ出す手がかりとして、本書は繰り返し見返して自分の歩みを振り返る地図として、常時携帯しておくことをおすすめします。
コヴィー博士も「はじめに」で次のように言っています。
あなたが学んだことを愛する人たちに教えてあげてほしい。そして何よりも、学んだことをすぐに実践してほしい。実行に移さなければ、本当に学んだとは言えない。知識を持っていてもそれを実行しないのは、知っていることにはならないのである。
理由③ 目指す目的地が素晴らしいこと
最後に、本書が目指している最終目的地である「相互依存」というパラダイムの魅力です。
現代社会は、GDP(国内総生産)という経済指標で物事を考え、判断することが未だに多いです。
そもそもGDPは、1934年に経済学者のサイモン・クズネッツによって戦時中に政府が戦車の購入費を捻出するために導入された経済指標として発案され、「一定期間内に国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計」と定義されました。
その戦時下における軍需量を測る経済指標を、90年以上経った現在でも多くの人がコンパスにして生きていること自体がおかしいと言わざるを得ません。
「相互依存」はそんな目に見える経済的価値以外の目に見えない豊かさについて、個人レベルで実現可能な道筋を示してくれています。
そのような理念が現在、さまざまな形で少しずつ社会に台頭してきています。
例えば「贈与経済」は、「見返りを求めずに他者にモノやサービスを与える経済」を意味する言葉です。
重なりのなかったところに重なりを作り、「してあげる」と「してもらう」行為を交換するという舘岡康雄氏が創設した「SHIEN学」という学問もあります。
ブータンのGNH(国民総幸福量)という指標も有名でしょう。
こういった相互依存や他者との豊かな関わりを生むという魅力的な最終目的地が設定されていることが、私が「7つの習慣」を取り上げる一つの大きな理由です。
おわりに
以上、本稿ではスティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』の概要を全体像がわかるように解説していきました。
また、この連続講座でなぜ「7つの習慣」を実践したらいいと思うかについて、私の考えも述べてきました。
本書の出版から30年以上経ち、多くの関連本も出版されているため、すでに多くの方が手に取ったり、読んだりしている名著だと思います。
私は今回初めて読み、その内容の深淵な原則中心の理論をより深く理解するアウトプットの場と実践に向けた修行の一環としても本稿を執筆しました。
読んだことのない方にとっては、「7つの習慣」の核となる考え方を理解する一助となり、すでに読んだことがある方にとっては、内容を復習し直して新たな気づきが生まれることを願っております。
次回の第2回からは、「7つの習慣」実践講座として、第1の習慣「主体的である」から順に解説し、みなさんの生活や人生、仕事の中で取り組んでいけるようなエッセンスを組み込んだ内容にしていきたいと考えています。
次回からもぜひ、お楽しみに!