娯楽に溺れる
寝る前に本を読むと一度に200ページほど読んで
気がついたら毎回朝の3時。
ああ、またやってしまった。
こんな時間まで本を読んでしまった。
朝早く起きようと決めて熟睡のために使い捨てアイマスクも開けたのに。開けてから一体どれだけの時間が経っただろう。
すっかり冷えている。
今更つけても温もりはない。
こんな時間に寝たらきっと起きるのは12時くらいだろうな。
あと何時間で日が暮れるかな。
起きたらやることを大量にこなして、お昼も味わうのは一口目だけなんだろうな。あっという間に夕方になって、夜になって、今日こそ早く寝るということを言いつつまた同じことを繰り返すんだろう。
ああ、時間がない。
人間は時間にうるさい。
人間は時間を作った。
人間は時間を作った気になった。
人間は時間の中で生きている。
人間は時間のせいにする。
人間は時間の奴隷だ。
勝手に作ったルールで勝手に苦しんで勝手に自分を無くしてえいやこら。
時間とか場所にこだわらず好きな時に好きな場所で仕事を。
巷でよく聞くフリーランスのサムネイル。
結局あいつらも時間の奴隷だ。
時間が欲しいから、自由な時間が、時間だ、時間があれば、時間を手に入れる、時間を買う…、そしたら自由な時間が手に入る。
まるで無限前周り。
時間という幻へのアンチテーゼを考えてみた。
ああ、僕もすっかり時間の奴隷だ。時間のことをまた考えている。
仕事を辞めてみようか、学校をサボろうか、朝何度でも寝てみようか。いつものように寝る前に読書をして朝まで楽しもうか。
うん、
自分が時間という毒に侵されていることを再確認してしまう。
一瞬でもいいから嫌な記憶を忘れたい。お酒を飲もう。
ちょっと違う。
一瞬でもいいから、僕は時間を忘れたい。
朝起きなきゃいけないのも時間なんてものがあるからだ。
時間を気にしなければ僕は自由なんだ。
お酒を飲もう。本を読もう。スマホを持たずに散歩をしよう。恋人と好きなところに行こう。お店で流れている知らないミュージシャンの音楽に身を委ねてみよう。ださい踊りを披露しよう。娯楽という娯楽に溺れよう。
自分が奴隷ということを忘れられるように。
今は踊ろう。時間が僕を迎えに来るまで。