[中国]抗日神作ドラマ《亮剣》の原作小説の原作小説読んでみた①
中国の超有名神作抗日ドラマの原作小説《亮剣》を現在読んでいます。
現時点で40%ほどしか読んでいませんが当初の目的箇所を読み終わったのもあり、一旦途中経過として感想を書きたいと思います。
《亮剣》とは〜抗日神作ドラマ
この小説を原作としたドラマが2005年に公開され高く評価されています。
原作小説も微信読書の総合ランキングTOP200に入る定番作品で今でも評価が高いです。
抗日戦争ドラマを見る一部の日本人の方々の中でも他よりもかなりマシな出来で知名度がどうやら高いようです。ドラマの中で出てくる旧日本軍の怪しい日本語も有名です。現在では無料で YouTubeで見ることができます。
小説の感想を見ていると小説では戦闘シーンなどは簡単に描かれている所が多いですが、ドラマではしっかり描写されていてシーンによってはドラマの方が評価が高い所がいくつもありました。
原作小説〜事実をモデルにした小説
この小説の原作は2000年に出版された本です。作者は都梁という方でもともと作家ではありませんでした。
友達に勧められて小説を書きそれを解放軍文藝出版社に持ち込み出版されたそうです、
本に出てくる主人公などは創作の人物になりますが、人民解放軍の実際に実在した人物を何人か参考にしてるようで、類似するエピソードなどがあるそうです。
なぜ読もうと思ったのか〜傷痕文学の側面
中国の小説には抗日戦争(日中戦争)時期について書かれてる小説がいくつかあります。私は中国語の読書を2023年に始めてから色々読みましたが、抗日戦争に関連する話は手をつけていませんでした。
百度のあらすじなどを見ていると、この小説は最終的には主人公が文革で批判された後に自殺してしまう、という傷痕文学(文化大革命の批判)だという事を知りました。抗日神作ドラマとして有名であるのにも関わらず、本質的には傷痕文学であるとの落差に衝撃を受けました。
これはぜひ読んでみたいと思い、抗日戦争部分を読むのは勇気が要りましたが覚悟を決めて読むことにしました。
小説のあらすじ
1937年頃八路軍(後に人民解放軍に編入される)は李家坡という場所を拠点としており、そこへ日本軍が進軍し拠点を建てる。主人公の李雲龍は当初、予備隊として後方に回されるが、八路軍が苦戦し、最終的に突撃して巧妙な戦術で日本軍の拠点を殲滅する。
感想
まずこの小説はほんとに面白いです。作家さんの物語のリズム感が大変良くて、解説などでの中だるみが一切ないです。主人公の李雲龍の数々の戦いはもう水滸伝に出てくる英雄の活躍のようで面白いエピソードにあふれています。印象的だった部分を紹介します。
亮剣の精神〜相手が強くても立ち向かう
これは関東軍を待ち伏せしている時の主人公の言葉です。
※日本語訳は私の意訳になります。
主人公たちの八路軍は当時の日本軍と比べると軍隊としての正規の訓練も受けておらず、まともな装備も配給されず、真冬でも防寒具なしの服1枚だけという過酷な状況で侵略者の日本軍と命懸けで戦い徐々に戦果を積み上げていく。
この小説のタイトルにもなっている《亮剣》の意味はこれを指しているのではないかと思います。(なお小説の造語だと思われます。)
日中戦争時にどのような気持ちで戦っていたのか、伺い知れる箇所ではないかと思います。
名誉ある敵〜日本軍
この本を読んで一番意外だったのが、日本軍というのはしっかり教育を受けて合理的に行動し、名誉を重んじる人間として書かれていることです。よく中国抗日ドラマで出てくる卑劣なことを行う頭の悪い日本軍が登場するのをを想像していたのですが、全く違っておりました。
主人公も立派な軍人に対しては敬意を払っており、丁寧に埋葬したり、また日本軍の装備に対しても高く評価しています。
物語の中でも途中日本軍に人質として主人公の初めの妻が誘拐されますが、人質として誘拐されたのみで辱めを与えるわけではなく、まともな扱いをされています。
中国抗日ドラマでの描写をあれこれ知っている身としては、抗日神作ドラマとして名高いこの作品の原作が日本軍をそのようなまともな軍隊として描いていることにかなりの衝撃を受けました。
日本軍を表現する言葉として"训练有素"と"墨守陈规"が度々登場しています。
"训练有素"は日頃から厳しい訓練をしている
"墨守陈规"は既成の規則や方法をよく守る(古い規則に固執する)
柔軟に動くのは苦手だが普段からしっかり訓練している、というような日本軍へのイメージが受け取れました。
さっさと終わる抗日戦争パート
さらに驚いたことは、この抗日神作ドラマの原作はなんと抗日戦争パートが小説の20% 程度で終了してしまうことです。
感想を読む限りは、ドラマはこの小説の前半部分しか映像化しておらず、後半は描かれていないようです。
あっという間に抗日戦争が終わってしまい抗日神作ドラマの原作じゃないの!?卑劣な日本軍どこ??と途方に暮れました。
共産党の精神も卑劣な日本人も全く出てきません。精神的にそういうのを読むのが辛いだろうと覚悟していたのに、全くそういう箇所がなくて呆然としました。
これから一体どうなる
まだ40%まで読んでないので、これから一体どういう物語になるのか気になります。
真正面から名誉ある敵としてぶつかった日本軍、国民党軍の将校である戦友は思想面では違うので内戦では戦い合うがお互い認めあった仲、
そういう日本軍、国民党軍との関わりの先に共産党内で文革。
何度も言いますがこの抗日神作ドラマの原作としてあまりにも意外な落差に驚愕しかありません。文革パートとか読むとショックを受けそうで怖いですが、頑張って最後まで読もうと思います。
また途中経過なり、読了の際には記事を投稿しようと思います。