コロンビア大学ALP 私のNY滞在記３６５日 IELTS合宿
２ヶ月間、ニューヨークに滞在するといっても何もしないで毎日ぶらぶらするわけではない。
最大の目標パーソンズへ正規入学するという夢に向かって、一歩ずつできるところから進めていく。
そのためにやっつけなくてはならない最強の敵はIELTSだった。現在マイスコアはオーバーオール６がMAXだった。大学卒業後初受験で5.5のスコアをつけてから１年半も経っていた。
パーソンズの入学条件はオーバーオールで6.５が必要だった。
なんとしてもあと0.５のスコアが必要だった。
１年半も独学でやっていると一体自分の何がダメなのかがわからなくなってくる。IELTSだけではなくて本業のアート対策も都内のバンタン（美大専門予備校）でやっていたけれど、二つの勉強の比重も難しい。ついつい絵を描いている時間が長くなって、英語は二の次になる日もあった。
バンタンの主任教授がよくいってた。美大生の最大の関門はこのIELTSの得点だそうだ。みんな６までは自力で行くのに、そこからがなかなか抜け出せない。そうこうしているうちに時間がたって学費も生活費も徐々にキツくなっていき、しまいには計画破綻になるケース。だからバンタンでは美大受験生のために独自の英語試験対策ポータルサイトがあるのだが、このオンデマンドビデオ教材はとにかく飽きる。毎回同じテンポの予備校の授業のような動画がずっと延々流れている。無料だから文句は言えないが、あまりの単調さに、画面の前で眠ってしまったことが何度もある。
これでは私も計画破綻のケースまっしぐらだ、と焦り意を決してコロンビア大学のESLの授業をとることにした。決して安くはない授業料だったが、最終目標のパーソンズが目と鼻の先にあっていつでも覗きに行ける距離感、世界のアート最先端の街でもあるニューヨークで刺激を受けつつ、未来の自分に思いを馳せるのに決して無駄にならないはずだと思ったからだ。
何はともあれ、コロンビアのESL生として無事入学できた。
初日はオリエンテーションで、授業を受ける場所とは別の棟にある、いかにも「大学」らしい階段状の会議室に集められた。私は上から数えて８段目くらいの中央に席をとって座った。
部屋の中全部で５０名は軽く座れる感じだったが、それが割と埋まっていた。こんなに多くのクラスメイトがいるのかと思ったけれど後でそうではないことがわかった。コロンビア大学では様々な英語コースがあって私のようにESLとして短期で学ぶ者もいれば、大学進学準備コースとして１年間受けるものもいた。
その中に一際目立つ女性がいた。アジアン女性特有の肩まである黒髪にストローハットをかぶって、青いボーダーシャツにデニム、スカーフをして垢抜けていた。サングラスをしていて一瞬ハリウッドスターかと思うようなオーラがあった。
こんな人がコロンビアで英語を学ぶなんてどんな目的なんだろうと思った。
オリエンテーションが終了し、クラスごとに名前を呼ばれた。そこで初めて同じクラスになるだろう生徒がお互いの顔と担任の先生を認識した。授業初日の注意点など説明を一通り受け、クラスはビルの外に出た。
初めて会う女子のクラスメイトに声を掛け合い、お外で軽くランチでもしようという話になった。ちょうど中庭には石造りのベンチもあったのでそこに腰掛けながら自己紹介などし始めた。
1人私と同じ日本から来たゆきえちゃんという女の子がいた。年齢も似たり寄ったりで話が合うと思った。このことは滞在中ずっと一緒に遊んだ。彼女がニューヨークに来たのは、仕事のためらしい。彼女の地元は沖縄で公務員としてお勤めだった。日米関係に関する調査で政府から司令を受けて来ていたので旅費や滞在費の半分は政府から支給されているらしい。なんと羨ましい身分なのだと思った。
他にも台湾大学を卒業して大手銀行に勤めていたリユちゃん、同じ大学を卒業してすでに４０年は経つだろうジンゆんさん。歳をとっても大学で勉強するなんてすごいとみんなから尊敬されていた。
そして、あのハリウッドスター女優のような彼女とも同じクラスになった。色々話した。名前はジェニー。中国出身で元々ジャーナリストだった。長く勤めてお金も貯まったので、ニューヨークに１年は滞在するつもりらしい。ジャーナリストだったと聞いて、なるほど、その不思議なオーラはそういうバックグラウンドから来てるのかと思った。妙に落ち着いているというか動じないというか。ともかく話し方も落ち着いていて、美人だったので異性だったら相手はその堂々としたジェニーにたじたじだろうと思った。
カジュアルランチをしながら始めて会うお互いに興味津々のみんな。楽しいひと時だった。理由はみんな違うにせよ、これから同じ一つの空間で英語を勉強する仲間だ。みんなとっても頭脳明晰な人たち揃いなので良い刺激になるだろうと興奮しつつ初日を終えた。
