スポーツは、「サビ」をもたらす。マネーフォワード×横浜Fマリノス 取材後記(澤山モッツァレラ)
スポーツがある日常とは、「サビがある日常」なのだと理解した。
マネーフォワード社が横浜Fマリノスとトップパートナー契約を締結するにあたり、同社代表取締役社長CEO辻庸介氏にインタビューさせていただいた。詳細は記事に譲るが、印象づけられたのはスポーツがもたらす熱狂のチカラだった。
申し遅れました、澤山モッツァレラと申します。LinkSportsさんに主に編集とSNS領域で、コンサルとして関わらせていただいています。
澤山モッツァレラ
https://twitter.com/diceK_sawayama
■非日常的な熱狂は、今こそ求められている
特に感銘を受けたのは、このくだりだ。
>このパートナーシップを社内で発表したところ、これ以上ないくらいに盛り上がったんです。
(中略)
>21日の冠試合(J1リーグ第33節 名古屋戦をMoney Forward DAYとして開催)には、20枚のチケットをF・マリノスさんから用意していただいて、最初は抽選にしようかとも思いましたが、もっとたくさんのメンバーと見たくて…。「もう会社で出すよ!」と200名分確保していただきました。リモートワークが始まってから、初めてスタジアムで顔を合わせる社員も多いはずです。みんな全社総会なんかはめんどくさがるのに、人間は本当に正直ですよね(笑)。
特にコロナ禍の日常において、スポーツにおける得点シーンや勝利の瞬間、優勝決定した瞬間ほどのカタルシスが存在することはまれだ。企画が思い通りハネた、(今回のように)大きな契約がまとまった、チームとして意図した通りの結果が出せた……そうしたことはあるが、多いわけではない。
カタルシスとは、楽曲でいうところの「サビ」だ。Aメロ、Bメロを経て盛り上がる箇所を「サビ」というが、日常のほとんどはAメロやBメロだ。うまくサビに繋がればいいが、そうも行かないケースも多い。
比較すると、スポーツには「サビ」の機会が何度もある。サッカーは得点が入りづらいが、それゆえ爆発力は凄まじい。同社の反応から、「非日常的な熱狂」は今こそ求められているものだと強く感じた。
■マネーフォワードさんの決断は、福音をもたらすか
業界に長く関わる中で、「スポーツのチカラ」という言葉には新規性を感じなくなっていた。
「スポーツのチカラ」に甘えている部分も、正直あった。実際、人気選手のインタビューは特に工夫しなくとも読まれる。「人気スポーツだから見に来るだろう」「見せてやろう」という態度の現場は今でこそ少ないが、かつては珍しくなかった。
そしてコロナがやってきて、厳しい入場制限が課せられた。スポンサー企業には、ビジネス上のメリットより「地域への貢献」文脈で支援している会社も多い。「定量的なメリットを出せないチームは、早晩潰れてしまうのでは」と危惧している。
マネーフォワードさんの決断は、スポーツ界全体への福音となるかもしれない。スポーツチームをサポートすることで、社内にある種の連帯が生まれる。チケット枚数にもよるが、スタジアムでの交流も発生する。そうでなくとも、共通の話題には事欠かなくなる。
「定量的なスポンサーメリットをどう出すか」という課題は残る一方、こうした定性的なメリットも決して無視できない。辻社長も述べているとおり、
>新しい生活様式のなかで、社会にも人にもストレスがかかっていますよね。みなさん、ワクワクすることの大切さを実感しているのではないでしょうか。
こうした「ワクワク感」、つまり「サビのある日常」をもたらすチカラは、スポーツ特有のものだと改めて理解できた。
希望を捨てず、スポーツに向き合っていこうと思える取材でした。マネーフォワード様、横浜Fマリノス様、CFGの皆さま、ほか関係者の皆さまに深く感謝いたします。