座位による炎症の軽減には軽い身体活動がMVPAよりも効果的
小児期から思春期にかけて座位時間が増加すると軽度の炎症が増加するが、軽度身体活動(LPA)が有害なプロセスを完全に逆転させる可能性があるようだ、という英国ブリストル大学などからの研究報告。中強度から高強度の身体活動(MVPA)にはそのような効果はみられなかったという。
軽度の炎症は、心血管疾患、代謝疾患、神経疾患、筋骨格疾患からがんに至るまで、生涯を通じていくつかの疾患と関連している。さらに、軽度の炎症が、思春期および若年成人における早期の血管損傷の一因となる可能性があることが最近報告されている。
ブリストル大学の研究「Children of the 90s」(エイボン親子縦断研究とも呼ばれる)のデータを使用した本研究には、11歳の792人の子供が含まれ、24歳まで13年にわたって追跡調査された。座位時間、LPA、MVPA の加速度計測定値は、11 歳、15 歳、24 歳で収集された。炎症のマーカーである高感度 C 反応性タンパク質は、15 歳、17 歳、24 歳で測定された。
13年間の追跡調査中に、座位時間は小児期の1日あたり約6時間から、思春期には1日あたり9時間に増加した。LPAは1日8時間から3時間に減少したが、MVPAは小児期から思春期まで1日約50分で比較的安定していた。座位時間が増えると、部分的には血圧が上昇することにより、炎症が著しく悪化することが観察された。血圧の上昇は、座位時間と炎症との関係のわずか 8%のみを説明した。
小児期から思春期までのLPAは炎症の軽減と関連していたが、体脂肪量が増加すると軽度身体活動の効果は30%減少した。小児期からの MVPA は炎症の軽減と関連していたが、総脂肪量の増加により MVPA の効果は 80% 減少した。脂肪量の有意な影響により、炎症に対する MVPA の影響は大きく中和された。
「炎症の悪化に対する座りっぱなしの時間の悪影響を逆転させるには、小児期からのLPAがMVPAよりも優れている可能性があることを初めて確認しました。健康的な体重の子供でも生理学的に総脂肪量が増加すると、炎症を抑えるMVPAの効果が著しく鈍くなったのはむしろ驚くべきことです」と共著者で東フィンランド大学のアンドリュー・アグバジェ医師は述べている。。
「私たちは最近、LPA が MVPA よりも青少年の心臓の健康を促進することも報告しました。これらの調査結果は、LPA が幼い頃から病気を予防する縁の下の力持ちである可能性があり、この点で MVPA よりも 2 ~ 3 倍効果的である可能性があることを強調しています。」
出典は『Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』