生乳を飲むのは危険だが、牛乳由来のH5N1が空気感染する可能性は低い
流行中のH5N1ウイルスに汚染された生乳に触れることで、ヒトに感染するリスクが現実に存在するものの、ウイルスは離れた他人には、またそれほど素早くは、広がらないかもしれない、という研究報告。
感染した牛乳から採取されたH5N1型鳥インフルエンザウイルスは、マウスやフェレットの鼻に垂らすと病気になるが、フェレット間でのウイルスの空気感染(ヒトへの一般的な感染経路)は限られていたという。
研究チームは実験で、ニューメキシコ州の感染した牛から採取した生乳を比較的少量飲んだだけでもマウスがインフルエンザに罹患する可能性があることを発見した。
さらに、研究チームは、ウイルスに感染したフェレットを感染していないフェレットの近くに置き、ウイルスが空気感染する能力についても調べた。フェレットは、鼻づまり、くしゃみ、発熱など、インフルエンザにかかった人間と似た呼吸器症状を示す小型哺乳類であるため、インフルエンザウイルスが人間の間でどのように広がるかを理解するための一般的なモデルである。効率的な空気感染は、ウイルスが人間にパンデミックを引き起こす可能性が深刻に高まっていることを示す。
感染フェレットのそばに置かれた4匹のフェレットはいずれも病気にならず、研究期間中ウイルスは検出されなかった。しかし、さらに検査を進めると、研究者らは、ウイルスに感染したフェレット1匹がH5N1ウイルスに対する抗体を生成していたことを発見した。これは、曝露したフェレットが感染していたことを示唆しており、ある程度の空気感染性はあるものの、たいしたレベルではないことを示している。
「現在牛の間で蔓延しているH5N1ウイルスは、哺乳類への感染力は限られています。しかし、人間に感染しやすいウイルスに進化するのを防ぐため、このウイルスを監視して封じ込める必要があります」と研究者はコメントしている。
出典は『Nature』