派遣先都合による派遣契約の中途解除はできる?!その条件、派遣先/派遣元がすべきこと、有給、失業保険までを徹底解説!!
派遣先都合によって、派遣契約を中途解除されてしまうケースはあるんでしょうか?!
派遣契約の中途解除は、派遣先による会社都合や、派遣社員のスキル不足など何らかの理由で中途解除されてしまう場合があります
中途解除により、有給や社会保険、休業手当、失業保険など、どうなるのか気になる部分が多いかと思います
この記事では、派遣先都合の中途解除について、その条件や派遣先、派遣元がすべきこと、派遣社員の有給、社会保険まで重要なポイントを丁寧に解説していきます
この記事で分かること
・派遣先都合による派遣契約の中途解除の条件は?!
・派遣先、派遣元がすべきこと
・派遣社員の有給、社会保険、失業保険について
派遣先都合の派遣契約の中途解除について
昨今、派遣先の都合で、派遣契約を中途解除されて相談にくる派遣社員の方が増えています
その一因に、新型コロナが各業界に大きく影響をもたらしていることが挙げられます
派遣労働者の派遣契約の中途解除は可能なの?!
そもそも派遣契約の中途解除はできるものなのでしょうか?!
原則、派遣契約の中途解除はできません
ただし、やむを得ない事情がある場合のみ、条件付きで解除できることとなっています
派遣契約と派遣社員の労働契約は別物であり、派遣契約が中途解除されても派遣元との労働契約は残ります ※この点は後述します
派遣先の都合で中途解除する場合
それでは、派遣先の都合で中途解除する場合、どのような条件が必要で、派遣先/派遣元に課される措置はどのようなことがあるのでしょうか?!
派遣契約が中途解除できる条件とは?!
そもそも、原則は派遣契約の中途解除はできない、こととなっていますが、やむを得ない事情がある場合はそれが可能となっています
それでは、そのやむを得ない事情とはどのような場合のことでしょうか?!
■派遣先企業が経営危機、倒産リスクがある場合
派遣先企業が業績不振で経営危機に陥り、倒産リスクがある場合は、やむを得ない事情に該当します
会社は経費削減などでやれるだけのことを尽くし、他の方策が尽きた場合、やむなくリストラ(人員整理)で社内の人事と派遣社員の人員整理も行わなければ、倒産の危険性が高まる場合、それはやむを得ない事情に該当します
ただし、それを行うに当たっては、社内の従業員、また派遣元への丁寧な説明が必要であります
■中途解除に値する問題が派遣社員にある場合
この点は非常にデリケートな扱いになります
派遣社員に起因する理由が、「やむを得ない事情か否か」で判断が分かれます
例えば、
企業の機密情報を漏洩してしまった
犯罪を犯してしまった
欠勤、遅刻、早退が非常に多い
仕事を遂行するのにスキル不足
明らかに情報漏洩や犯罪に関わる部分は「やむを得ない事情」との判断がなされますが、他の理由については、程度や状況により、判断が分かれます
「コミュニケーションが取りづらいから、中途解除したい」なんて理由は中途解除に値しない理由となります
いずれにしても、3者(派遣先、派遣元、派遣社員)がしっかりと話し合い、客観的な見知での判断が求められます
■猶予期間を儲ける為に事前に告知した場合
派遣先企業が派遣契約の中途解除をしたい場合は、「やむを得ない事情」と共に、事前に派遣契約の解除の申し入れが必要となります
これは後述する、派遣先の講ずべき措置に関する指針でもあります
派遣元に中途解除の理由を丁寧に説明、合意を得て、予め相当の猶予期間をもって、派遣契約の中途解除を申し入れることが必要です
派遣契約書の項目【労働者派遣契約の中途解除における派遣労働者の雇用の安定を図るための措置】の中に、対象部分の記載があります
※同様の項目が就業条件明示書にもありますので、ご確認くださいませ
その申し入れが遅れると、派遣元から派遣社員に支払う給料等の損害賠償請求が派遣先に発生することもあります
中途解除する場合は何日前までの告知が必要?!
派遣先の都合で派遣契約を中途解除する場合は何日前までの告知が必要となるでしょうか?!
前述の「あらかじめ相当な猶予期間」とはどの位の期間を指すのでしょう?
答えは30日以上前です
そもそも契約は双方の同意があれば、契約解除は可能ですが、ここでは相当の猶予期間をもって契約解除の申し入れをすることが求められます
中途解除の際の派遣先、派遣元が講ずべきこと
やむを得ず派遣先都合により、派遣契約の中途解除になる際は派遣先、派遣元に講ずべき措置が義務づけられています
派遣先が講ずべき措置
派遣先都合により、派遣契約の中途解除をしたい場合、派遣労働者の交替要請等の対応をしながら、中途解除の申し入れや、派遣元への損害賠償等など、派遣先に求められるものがあります
■あらかじめ相当の猶予期間をもって中途解除を申し入れる
派遣先はやむを得ない事情により、派遣契約の中途解除をしたい場合は、派遣元に対してあらかじめ相当の猶予期間(30日前以上)をもって契約解除の申し入れを行い、了承を得ることが必要です
仮にこの申し入れが遅れた場合は、派遣元が派遣社員に支払う賃金(休業手当/解雇予告手当等)を損害賠償として、派遣先が派遣元に支払う義務が生じるケースがあります
■派遣元(派遣会社)に中途解除の理由を明示、了承をもらう
派遣先の派遣契約の中途解除に当たり講ずべき措置として、中途解除理由の明示義務があります
派遣元が派遣先に対して、中途解除の理由を求めた場合、派遣先がその理由を明示する義務があります
その理由をもって、派遣元が派遣社員に対して丁寧に説明をします
■新たな就業機会を確保する
派遣社員の方にとって派遣契約が解除されてしまうと、職がなくなり、困ってしまいます
そうならないように、派遣先はグループ会社、また関連会社などで就業できるようにあっせんをし、派遣社員に新たな就業機会の確保を図ることが求められます
これは派遣元とも連携をして、新たな就業先を確保し、雇用の維持を図ります
■派遣元に生じた損害の賠償を行う
派遣元への損害賠償の支払いが発生する場合があります
派遣元とも連携して、新たな就業機会の確保を図ることができない場合、派遣元が派遣社員に支給する賃金(休業手当/解雇予告手当等)の負担を派遣先が賠償することが求められます
また、解雇予告については、解雇日の30日前までに告知しなければならず、派遣先の申し入れが遅れる場合は、遅れた分の賃金相当額を派遣元に対して賠償します
※派遣契約書にも謳われています
※派遣先の講ずべき措置について、詳しくは厚労省HP(派遣先の事業主の皆様へ)
派遣元が講ずべき措置
それでは、派遣元にはどのような対応が求められるのでしょうか?!
■新たな就業機会を確保する
前述の派遣先の措置と同様に、派遣元でも新たな就業機会の確保が求められます
派遣元は、数ある派遣先企業の中で、対象の派遣社員に合った派遣先を探し紹介をする、または派遣契約を中途解除した派遣先のグループ会社等を紹介してもらう、などで新たな就業先の確保が求められます
■派遣社員に損害賠償を行う(休業手当/解雇予告手当)
派遣元が新たな就業先の確保に努め、それができない場合は休業等により雇用維持を行ったり、それができないケースの時は解雇予告手当を支払い、損害の賠償を行うことが求められます
休業手当の支給
派遣先都合で中途解除になり派遣先での就業が困難となった場合でも、派遣契約期間は残存しています
その為、派遣元はその期間を休業として扱うことで、休業手当を支払うことで雇用の維持を求められます
※派遣社員の休業保証/休業手当についてはこちらの記事で詳しく解説しています
解雇予告手当の支給
新たな就業機会の確保も困難で、休業による雇用の維持もできない場合、派遣社員を解雇することがあります
解雇には解雇要件が必要ですが、それを満たした場合は労働基準法に沿った対応を行います
少なくとも30日前までに予告するか、それができない場合は、その期間分の解雇予告手当の支払いが必要となります
※派遣元の講ずべき措置について、詳しくは厚労省HP(派遣元の事業者の皆さまへ)
派遣契約と派遣社員の労働契約は別物
ここで注意しなければならない点は、派遣先によって派遣契約が中途解除されても、派遣社員と派遣元の雇用契約は存続している、ということです
派遣契約が中途解除されても労働契約は継続
つまり派遣契約と労働契約は別物です
派遣社員の方が派遣就業を始める際に、就業条件明示書と労働条件通知書を交付されます
その就業条件明示書に派遣契約条件が記してあり、労働条件通知書は労働契約を記したものになっています
派遣会社によっては、【就業条件明示書(兼)労働条件通知書】、といった形で1枚で対応されているケースもあります
※就業条件明示書についてはこちらで詳しく解説しています
つまり、派遣契約と労働契約は別物なので、派遣契約が中途解除になっても、労働契約は継続しています
保険や有給取得権利も継続している
労働契約が継続しているので、派遣会社に雇用されている状態です
ゆえに、雇用保険、社会保険、有給、福利厚生に至るまで有効である、ということです
派遣先企業に勤めていないからといって、それらが無効になっている訳ではありませんので、安心してください
労働契約が終了するまで、保険加入されていますし、有給、福利厚生の利用ができます
※派遣社員の雇用保険/社会保険については、こちらで詳しく解説しています
派遣元の都合で労働契約を中途解除する場合
今までは派遣先都合で、中途解除されるケースを見てきましたが、派遣元の都合により中途解除されるケースはどのような形があるのでしょうか?!
派遣元都合の中途解除の注意点
■就業規則、雇用契約書に従い対応する
まず派遣元の都合により、雇用契約を中途解除することは可能です
それには一定の理由が必要です
有期雇用であれ無期雇用の派遣社員であっても、雇用期間の有期、無期は問いません
その場合は、就業規則の解除条項、雇用契約書に従って対応する、こととなるでしょう
事前に就業規則の内容は確認しておきたいところです
■中途解除の理由
契約期間途中の解雇には厳しい条件が定められています
有期雇用の場合は「やむを得ない事由」が必要要件となっています
例えば、経営危機に陥り、人員削減、整理解雇の必要性、解雇対象者、解雇手続きの妥当性がしっかりと説明できれば問題ないでしょう
例えば、以下のような場合があります
企業倒産
派遣会社が合併で、他の派遣会社に吸収される
支店の移転で、営業エリアが変わる
派遣事業の廃止
事前に想定できることについては、契約満了にて終了することができますが、1年更新などある程度の契約期間で設定している場合、中途解除になってしまうケースがあります
中途解除された際の有給、失業保険等について
それでは、派遣社員の方が中途解除されてしまった際の、有給、保険等はどのような対応になるのでしょうか?!
有給について
中途解除されてしまい、その時点で有給が残っていれば、契約期間内であっても、派遣契約期間が過ぎても雇用契約が存続していれば、有給使用ができます
ただ、「一つの派遣契約が終了し、新しい派遣契約までの期間が空いてしまう場合、有給が消滅してしまう」、といった派遣会社もあります
事前に派遣会社の規定の確認をしておきましょう!
雇用保険、社会保険について
雇用保険、社会保険については、派遣先の契約がなくなっても、派遣元との雇用契約が存続している限り、加入状態は続いています
保険は雇用契約に結びついています
原則、雇用契約期間の最終日まで対応していることになります
※派遣社員の雇用保険/社会保険については、こちらで詳しく解説しています
失業保険について
派遣先都合の派遣契約の中途解除によって、派遣元との雇用契約も解約されれば、それは会社都合による退職、といった形となります
失業保険の条件を満たしていて、特定理由離職者として認定されれば、7日間の待機期間後、直ぐに失業保険を受け取ることができます
中途解除の後の行動について
休業手当、解雇予告手当や有給消化、失業保険の申請までやり、今後の立ち回り方ですが、2パターンあります
同じ派遣会社で仕事を待つ
派遣会社の対応が良く、派遣会社の福利厚生や待遇など、在籍していることに大きな価値があると感じられれば、辛抱強く仕事の紹介を待つのもありでしょう
しかし、派遣担当者のフォローやサポートに満足していない場合や、派遣会社に所属しているメリットを感じられない場合は、離れる選択をしても良いでしょう
別の派遣会社を探し就業する
上記のように、今の派遣会社に所属しているメリットが感じられなければ、移籍をしましょう
派遣会社は大手をはじめ、中小の派遣会社もそれぞれ特徴があります
そこにいる派遣担当者も様々です
自分に合った派遣会社を探すこともとても重要なことです
これをきっかけに、新しい派遣会社に所属して働くのも良いでしょう
※派遣会社の複数登録についてはこちらの記事で解説しています
大手派遣会社だからといって、そこにいる派遣担当者が素晴らしく対応が良い、訳ではありません
派遣会社選びのポイントは、①派遣会社の待遇/福利厚生、②派遣担当者の対応、です
派遣担当者との相性もあります
中小の派遣会社でも非常にマメに丁寧に対応してくれる派遣担当者もいます
一概には言えませんが、リンクとしては、派遣担当者の対応の良さに重きを置いた方が良いかと思います
何かあったときに非常に頼りになるので、重要なポイントです
派遣社員の都合で中途解除したい場合
今までは、派遣先の都合により契約が中途解除されるケースを見てきましたが、最後に派遣社員の都合で中途解除したい場合はどのような対応をすべきでしょうか?!
こちらについては、派遣社員の即日退社の記事で詳しく解説しているので、そちらを確認してください(^^)
即日退社はオススメはしていませんが、やむを得ない事情で契約を解除したいケースはあるかと思います
是非、ご確認くださいませ
まとめ
派遣先の都合による契約の中途解除は、派遣先も望むところではありません
しかし、仕方なく、やむを得ない事情で、そうせざるを得ない状況が発生してしまった場合は致し方ありません
派遣社員の方もその状況になってしまった場合は、派遣元にしっかりと説明をしてもらい、お互い納得した形で、次の職場へと気持ちを切り替えたいものです
いずれにしても、中途解除となってしまっても、慌てず落ち着いて冷静な対応を心がけたいものです
中途解除については、予兆があるケースがあるので、常日頃、派遣先と派遣元とのコミュニケーション、情報共有はまめに取っていくことをおすすめします
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