介護保険の在宅サービス⑦
福祉用具購入
介護認定を受けていれば利用できるサービス
介護保険のサービスには、要介護度別の上限のある単位数とは別枠で利用できるものがあります。
住宅改修
福祉用具購入(特定福祉用具販売)
市区町村等の独自サービス
今回は福祉用具購入についてです。
特定福祉用具販売
特定福祉用具
心理的に他の人が使用した後では利用することに抵抗があるポータブルトイレやシャワーチェア等、経年劣化で元の形態や品質が変わってしまう恐れのある福祉用具の購入は、介護保険の給付対象となります。
・腰かけ便座
・自動排泄処理装置の交換部分
・簡易浴槽
・入浴補助用具
・移動用リフトの吊り具の部分
※ 介護度によって購入対象にならない
ものがあります。
特定福祉用具は一年間の購入限度額が決まっています。毎年4月1日から翌年3月31日までの年間10万円が限度額です。基本的に同一年度で同じ品目の購入はできませんが、翌年には再度購入が可能です。介護認定を受けている方は、負担割合に応じて1~3割負担で購入できます。介護保険を使った住宅改修と同じく、特定福祉用具購入については、都道府県の登録事業者から購入する必要があります。担当のケアマネージャーがいる方はケアマネージャーを通して購入します。ケアマネージャーは身体機能のアセスメントを行い、特定福祉用具が必要であることが記載された居宅サービス計画書(ケアプラン)を交付します。支払い方法は市区町村によって異なり、いったん全額支払い、後日負担割合以外が戻る償還払いか、負担割合のみ支払う受領委任払いになります。
「腰かけ便座」には、和式便器の上に洋式便座をのせて腰かけ式に変更したり、洋式便座が低すぎる場合に高さを補う補高便座などがあります。一般的なポータブルトイレも「腰かけ便座」の品目に入ります。ポータブルトイレは種類が多いのですが、要介護者にはひじ掛けのないタイプの使用はお勧めしません。そもそもトイレまで移動できない場合に使用するため、立位も不安定な方が支えのない状態で方向転換したり後ろ向きに座ることは至難の業です。父親が使用していたポータブルトイレを使っていた利用者さんは、80代後半の重度の円背がある腰椎圧迫骨折後の方でした。ある時、夜間ポータブルトイレを使用している時に使っていた手すりが外れたと話され、木箱の木片で作ったような手作りの手すりを見せて下さいました。在宅で使用するポータブルトイレはひじ掛けタイプとの思い込みがあり、見せられた木片の意味が分からず、しばらく絶句してしまいました。聞けば、木片の手すりを部屋の柱に釘で打ち付けて支えにしていたとのこと。ポータブルトイレはどこかと尋ねると、「廊下にある。昼は廊下で使用している。廊下には支えがないので、後ろにひっくり返って大変なんや。」ポータブルトイレを見せてほしいと伝え、しぶしぶ了承して見せて下さったのが、座面のみのポータブルトイレでした。そのお宅は昔ながらの工場兼住居で敷地面積が広く、トイレや浴場は靴を履いて移動しなければならない場所にあったため、ポータブルトイレで排泄しているとのことでした。福祉用具購入で手すり付きのポータブルトイレの購入を提案しましたが、「昼と夜で場所を移動させるので、今あるものが軽くて動かしやすい。」との返答。住宅改修は希望されない方でした。廊下には福祉用具貸与で手すりを置くことを提案しましたが、要望なし。室内に三方を壁に囲まれた洗面台のある空間があったため、夜間はポータブルトイレをそこに設置し、壁を支えにすることを提案すると、「そうやな。そしたらこの手すりはここの柱につけるわ。」と言われてしまいました。