海外出版ニュース 5.14.2020 再開秒読みの米書店が抱える不安と期待

イギリスのニュースが続いたんで、次はやっぱりアメリカの状況。ニューヨーク・タイムズが全米各地の書店を取材していて参考になる。以下は大雑把にその内容を紹介。英語じゃ読めねーしありがたや、と思う人は♡だけでなくサポートお願いします。

他の国と違って、アメリカは州ごとに法律が違うので、Covid-19感染対策にもかなりの違いがある。が、やはり人口の多い都市部で最初に感染拡大が起こったわけで、これはその土地が保守かリベラルかというのはあまり関係ない。違いはそこの州知事がトランプに追従するバカかどうかなのだ。

テキサスのIntrabang Books(床面積約56坪)では、ロックダウン中の3月から、客を店内に入れず、なるべく多くの本を外から見られるように陳列して、事前注文の受け取りをやってきた。テキサス州では、以前の25%のキャパでなら営業可になったので、床に客同士の感覚を示す印をつけるなど内装を変え、レジに消毒液を据え、店員はマスクと手袋でガードした上で5月1日から開店したという。だがこの店はどちらかといえば楽観的な方だ。

もっと規模の小さい店では、これまで通り客が自由に棚を周り、書店員と本の話をするやり方は下手したら命取りになりかねない。断腸の思いで開店を先延ばしにしている本屋も多い。開店するにしても、予約制でマスク着用必須などの制限を設けている。そうでなければ、注文した分の配達あるいはピックアップのみ。

チェーン店はもう少し積極的だ。ブックス・ア・ミリオンは先週、書店員マスク着用、客同士の間隔をあけ、レジには透明の仕切りをつけた上で200店舗を再稼働させた。その一方で、入店制限
人数や、客のマスク着用についてはポリシーがばらばらだ。

バーンズ&ノーブルは10の州で31店舗を再オープン、さらに今週5州20店舗を予定している。こちらも内装を変えて、顧客同士に接近しないよう促し、州が義務付けているところではマスク着用。さらに一度棚から取り出した本はそのまま戻さず、指定のカートに置いてもらい、5日経ってから棚に戻すという。ジェームズ・ドーントCEOは「店が広い分やりやすいし、本は他の商品と比べて扱いやすい」という。「売り上げは落ち込んでいるがファッション業界ほどではないしね」

B&Nもアマゾンも流通倉庫で感染が発生しており、ニュージャージー州にあるB&Nの流通倉庫では従業員の死者が出ている。だが3月からマスクと手袋の着用を義務付け、従業員数を減らし、定期的に消毒をしているという。

だが、この10年で微増し、明るいニュースとなっていたインディペンデント書店のリバイバルはみごとに消えてしまった。クラファンや非営利団体からの救済金も投入されているが、どうなるかはわからない。オンラインの売り上げが増えたといっても、穴埋めにはとうてい足りない。アマゾンに対抗して設立されたBookshopを通して売れば、本の希望小売価格の25%が入ってくるが、直接手渡しで売った時の利益にはかなわない。この先、店を再開したとしても、以前と同じ客数は期待できないし、インディペンデント書店の強みだった著者イベントも開けない。行政指導もなく、何がベストなのかはその店で個別に考えてやっていくしかないのだろう。

全体で見ると、本の売り上げそのものが落ちているわけではない。NPDブックスキャンの数字では5月2日までの1週間の売り上げは5%増となっており、これはおそらくアマゾンや他の大手リテール(アメリカではウォルマートやコストコのような大型店でも本は売られている)、念頭から5月までの売り上げを見ても昨年度比で2%落ちているだけだ。


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