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校閲スキルをチームで底上げ、LINEが取り組む「校閲力向上プラン」
LINE校閲チームでは、LINE NEWSをはじめとした自社サービスの校閲を行っています。スマートフォンから誰もが手軽にアクセスできる情報を扱うからこそ、信頼されるサービスとなるように質を担保することが私たちの役割です。
品質を守る使命をはたしていくために、LINE校閲チームでは校閲者一人ひとりがスキルアップできる環境を整備しています。今回は、私たちが行う「校閲力向上」の取り組みについてご紹介します。
チームで支援へ、「校閲力向上チーム」の結成
LINE校閲チームの校閲者はおよそ20人。経歴はさまざまで、入社時に校閲の未経験者だった人も一定数います。校閲チームではLINE NEWS以外にも多様なサービスを請け負っているため、チームとして誰が対応しても質の高い校閲を提供する必要がありました。
そこで部署内で結成したのが「校閲力向上チーム」です。現場の校閲メンバー4人が中心となり、スキルアップを個々に任せるだけでなく、チームとして支援するために動き出しました。
LINE校閲チームに求められる校閲力とは?
一口に「校閲力」といっても、必要となるスキルはさまざまです。私たちの業務においては、おおまかに以下の要素で構成された総合力だと考えています。
・語句の意味や文法を正しく理解しているか
・表記や形式の統一を確認できるか
・誤字脱字を見落とさないよう注意できるか
・事実確認を適切に行えるか
・差別表現などネガティブな内容に気づけるか
・画像や記事との整合性を確認できるか
細かくあげれば他にもありますが、誤りなどを見つけて指摘するうえでは欠かせない要素です。これらを高いレベルで行えるようになることが「校閲力の向上」と考えることができます。
手作りの「スキルチェックテスト」でわかること
校閲力向上チームの最初の取り組みは、各自の校閲力を確かめることでした。苦手としているところがわかれば次の段階で対処できるからです。そのために「スキルチェックテスト」を導入しました。
-スキルチェックテストとは-
LINE校閲チーム内で約2カ月に一度、任意受験として実施される校閲力測定テスト。問題は、政治・経済・国際・社会・スポーツ・エンタメ・カルチャーなど多様なジャンルから出題される。受験者は普段の業務に即して辞書の使用やネット検索が可能。500~4000文字ほどの長短さまざまな記事が2~4本提示され、記事作成で発生しやすい誤りや、校閲者が見落としやすいミスなどがちりばめられている。
実際のスキルチェックテストの一部をご紹介します。以下の記事の誤りを探してみてください。
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(解答)
①❌ 爆発のイメージ画像(消息を絶ったという記述に対し、画像は爆発事故をイメージさせるもののため不適切)
②❌ 英航空宇宙局(NASAなので米航空宇宙局が正しい)
③❌ 原因だったことを明らかにした(「誰が」明らかにしたのか不明瞭。「原因だったことが明らかになった」などが自然なつながり)
皆さんはすべて正解できましたか…?
解答①のように、記事本文と画像の整合性は注意したいところです。LINE NEWSでも各媒体から提供していただいた記事に画像を付与する際、起こり得るミスといえます。
では、もし解答②の「英航空宇宙局(NASA)」を見落とした場合、校閲者にはどういう「スキル」が足りないといえるでしょうか。スキルチェックテストは校閲力の課題をより明確にするために、17のスキルへと細分化し、問題箇所と紐付けているのが特徴です。スキルをまとめた次の表をご覧ください。
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「英航空宇宙局(NASA)」は、わかりやすい誤字かもしれませんが、固有名詞として調べれば訂正できるため「固有名詞のミス」として設定された問題でした。単に誤りを正せるかという視点ではなく、項目分けされた「校閲スキル」をはかるテストにしています。
また、語句や文法を正しく扱うことは校閲者の基本です。スキルとして細かく要素を分解できることもあり、主語と述語が不自然につながる「主語・述語のねじれ」、助詞の「てにをは」などテストでは日本語力を問う問題も多くなります。
テストの作成では「ねらい」を持つことが肝心
テストの実施は約2カ月に1回。作成から実施までの流れは次のようになります。
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4週目までの作成期間において、校閲者にテストを受けてもらうために何を意識し、どう問題を作っているのか。ここでは3つのポイントに絞ってご紹介します。
①どんなジャンルで何を試すのか
校閲者には幅広い分野の知識が求められるため、時事系に限らずグルメ、カルチャー、美容など多様なジャンルが選択肢にあります。ただしジャンルをランダムに選ぶのではなく、「ストレートニュース系の実践的なものにしたい」「事実確認が必要そうな硬派なネタを入れたい」など作成方針を決め、過去問とのバランスも考慮して選びます。
-過去のジャンル選びの例-
専門的な分野への対応力をはかるため、コアな雑誌記事にあるような「趣味の世界」「スポーツ」分野からの出題を作成方針とした(専門用語やカタカナ多め。サッカー・野球は除く)。結果としてオートバイ、水泳、バスケットのジャンルを選択。
②問題形式を業務に近づけるか
普段の業務で「livedoor ニュース」「BLOGOS」「LINE MOOK」など体裁が異なる多様なサービスを担当するため、問題形式を固定せず、サービスの体裁に近い形式で工夫することも。より業務に活かせる実践的な問題も作ります。
-過去の問題形式の例-
普段の業務にある「動画校閲」に近づけたいという作成方針のもと、エンタメニュースを模してYouTube動画から記事を作成。動画内容と記事を照らし合わせてチェックするエンタメ問題となる。
③スキルをいかに振り分けるか
「語彙力」「誤字脱字」など一部のスキルに偏らないよう、校閲力を広くはかるバランスにも気を配ります。業務をするうえで意識や注意が必要な問題としてスキルを選択することもあれば、過去の解答を分析して低い得点率のスキルを意識的に組み込むこともあります。
一回のテストでは出題できるジャンルやスキルが限られるため、各自のある程度の傾向を抽出するにはテストの実施回数を重ねる必要があります。校閲者が「テスト慣れ」しないように意図をきっちりと持って変化をつけることも、校閲力をはかるうえでは大事なのです。
スキル分析の成績データで傾向を知ってもらう
受験者には、自己分析の参考になる個人の成績データを渡しています(※画像はサンプルです)。
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累計のスキル別の得点割合や点数推移を平均値と比較でき、苦手としているスキルを視覚的につかめるため、普段の校閲業務では気づきにくい部分として知ってもらえたら、と思っています。
テストは成長に向けた一つの手段、次なる一手へ
テストを作成したら終わり、ではありません。
テストはあくまでスキルアップに向けた一つの手段。一人ひとりの課題を分析したら、次は改善につなげるステップに移ります。次なる一手として「校閲力向上ドリル」という取り組みも始めています。
先に説明した「17」の校閲スキルのうち、主に「語彙力」「表現の重複」「ネガティブ判断」などを強化するために、LINEを活用して1日1問、問題と解答をセットでメンバーに向けて配信しています。業務の合間など隙間時間に負担なく学べる方法として取り入れています。
-校閲力向上ドリルの例-
「憮然」の本来の意味として正しいものは?
ア:腹を立てている様子
イ:失望してぼんやりとしている様子
ウ:気後れして遠慮している様子
エ:正直でない様子
正解はイ
文化庁の調査によると、本来の意味である「失望してぼんやりとしている様子」として使う人が28.1%、本来の意味ではない「腹を立てている様子」として使う人が56.7%だったそうです。
どうしたら校閲者の力になれるのか、テストの分析で明らかになった課題をどのように伝え、いかにアプローチして校閲力を伸ばしていくのか。
ニュースサービスのクオリティを校閲チーム全員で守っていくために、今後もさまざまな取り組みを続けていきたいと思います。
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