校閲者の能力を100%活かす、LINE独自の「校閲システム」とは
こんにちは!LINE校閲チームです。
前回はチーム誕生の経緯や校閲にかける思いなどをお伝えしました。
今回は私たちが実際にどのように校閲業務を行っているのか、その裏側をご紹介できればと思います。
紙とペンは不要?主な校閲道具は…
皆さんが「校閲」と聞いて思い浮かべる"道具"は何でしょうか?
まず、校閲対象の「ゲラ」があって、指摘を書き込む「赤ペン」、必須の「辞書」、インターネット検索に重宝する「パソコン」…などでしょうか。
LINE校閲チームがメインで使う道具はたった1つ。パソコンだけです。校閲時に紙とペンを使うことはほとんどありません。
もちろん、辞書や用語集などの「紙の資料」も適宜参照しますが、単純な言葉の用法確認にはオンラインの辞書サービスを利用しており、基本的にはパソコン1台で校閲が完結するように作業しています。
厳密には、ノートパソコン1台では作業効率が悪いので、ほとんどの校閲者は上の写真のように1、2台のモニターを併用して校閲業務を行っています。
この「パソコンだけ」での業務を可能にしているのが、独自に開発を重ねている「校閲システム」の存在です。
-校閲システムとは-
LINE校閲チームが独自に開発している"校閲補助ツール"。編集側のニュース配信システムと校閲側のシステム連携により、1日あたり約400本(※2020年8月現在)の記事がリアルタイムで入稿される。校閲作業はもちろん、指摘があった際の編集部への連絡や、修正が反映された記事の確認まで、一連の校閲業務はほぼすべてシステムを通して行われる。
校閲者の能力を"最大限活かす"ためのツール
「ペンを使わない」という話をしましたが、単に作業の点から言えばWordなどのソフトでも校正作業自体は可能です。自動で校正を行うソフトはこれまでも多く開発されていますし、AIを活用したサービスも各所で開発が進められていると記事などで目にします。
しかし、内容の正誤に比較的規則性のある「校正」は自動化できても、記事の文脈を正しく理解し、時々の社会情勢を頭に置きながらスピードを持った判断が求められる「校閲」にはマンパワーが欠かせません。
LINE校閲チームが開発している校閲システムは、校閲者がその能力を最大限発揮できるよう、システムで100%判別可能な必要最低限の「校正」作業を補助し、「校閲」作業に集中できるよう工夫されたツールなんです。
システムが補助する「校正」作業は、カタカナや記号の自動判別、日数・年齢・金額の計算、それに編集部が記事を調整した箇所の差分表示などです。
システム上で「全角カタカナ」は青色の下線、「半角記号・数字」は赤色の網掛けで表示されるようになっていて、マウスオーバーで説明が吹き出し表示されます。
例えば、漢字の「力(ちから)」とカタカナの「カ」、漢数字の「一(いち)」と長音記号の「ー」のように、人の目では瞬時に判別が難しい文字や記号もシステムに予め記憶させることで簡単に見分けることができます。
ニュースでよく見かける「○日ぶり」という表現の日数や年齢などの確認もシステム上で計算が可能です。
LINE NEWSなどのニュース校閲においては正確性とともにスピードも重視されます。システムの「校正」補助によって、校閲者の知識や判断が求められる「校閲」に集中することができ、結果としてスピードにも好影響を与えています。
1つのシステムで複数サービスを一元管理
そして、校閲システムのもう1つの特徴が「汎用性」です。
チームの校閲業務対象であるサービス「LINE NEWS」「LINE MOOK」「livedoor ニュース」「BLOGOS」にはそれぞれ編集部があり、記事のフォーマットも異なりますが、校閲システムは汎用性を考慮して設計しているので、各編集部のシステムと横断的に連携が可能です。
各サービスの記事は1つのシステムで一元的に管理され、校閲者は同一のシステム上で作業することができます。
チームでは常時5、6人が校閲業務を行っていますが、次々と入ってくる様々なサービスの記事を一覧で確認することができ、各人がどの記事の校閲を行っているかも把握できます。都度、人が記事の振り分けをする必要はなく、タイムリーに着手できることもメリットです。
指摘連絡文もシステムで自動生成
校閲をして出た「指摘」を編集部に連絡することも、なるべくシステム上で完結させようと取り組んでいます。システム上から直接、編集部と連携するチャット窓に指摘を飛ばせる仕組みです。
指摘の書き込みは校閲者が行いますが、記事タイトル・URLなどを含めた「指摘連絡文」はテンプレートに沿ってシステムが自動生成してくれるため、指摘のたびに一から連絡文を作成する手間と時間が省けます。通知ボタンを押せば、編集部にタイムラグなく送信されます。
そして、編集部が指摘箇所の修正を行うと、更新記事が再度システムに入稿されます。その際、差分表示も行ってくれます。更新前後の記事が並び、変更された文言が赤字(削除は青字)で比較表示されるため、修正確認も簡単です。
年間20回以上のバージョンアップ、「新しい校閲のカタチ」を探ってます
業務の裏側として「校閲システム」の一部機能をお伝えしてきました。ですが、このシステム、実はまだ完成していないんです。実際に機能を使ってみた校閲者の意見も吸い上げながら、年間20回以上ものバージョンアップが行われています。
校閲チームには、私たち校閲者のほかに校閲サービスの企画を行う専属のディレクターがいます。社内外の開発エンジニアと連携しながら、どうすれば校閲者にとって使い勝手の良いシステムになるのか、日々検討と実装が重ねられています。ディレクター、エンジニア、そして校閲者。それぞれの立場から、人の力にシステムの力を掛け合わせた、新しい校閲のカタチを探っている途中です。
今この記事を書いている校閲者の私も、便利な校閲システム(手前味噌ですが…)にいつも支えられています。でも、校閲の最終判断は「人」がするわけですから、どんどん便利になっていくシステムにあぐらをかかず、校閲者としての能力を向上させねば…と勉強の日々です。
最終的には、すべてのユーザーにとって良いサービスであるように。
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