働かざること山のごとし
長くなりすぎたお昼寝を遮ったのは、市内の局番から着信でした。
先週受けた面接の合否の連絡。
すぐに出る気にはなれなくて、スマホが鳴り止むのをじっと待ちます。
無職になって2ヶ月。正確には業務委託契約が終了した形でしたが、主たる収入源の喪失でした。
よくも悪くも働いてる感が少ない仕事だったので辞めた直後は実感がなくのんびりしていましたが、さらさらと減っていく預金残高は心のやらかい場所を確実に締め付けてきました。
(まずは目を覚まそう…)
冷蔵庫に向かい母が送ってくれた杜仲茶をぐびぐび飲みながら、そういえばこれはなににいいお茶なんだっけ?とふと考えます。
「杜仲茶ともち麦と海苔がいいんだって」とだけ聞いていたことをいまさら思い出しました。
へえ、まあいいならなんでもいか、とそれぞれをなんとなく摂取していましたが気になって調べると胆汁の質をよくする食品なんだとか。
去年胆石がみつかって胆嚢をまるまる切除してしまった身でも効果があるのでしょうか…?
あ、電話電話。
ながーい夏休みの終わりが来るのか。
はたまた、来ないのか。
どっちでも嬉しいし、どっちも好ましくないなあと思いながら折り返します。
先週の面接では、はっきりいって手応えはありませんでした。
管理職らしいひょうひょうとした担当者との面接は20分でほどなく終わります。
緊張はしていませんでしたが、気が利くようなこともいえず…
建物の外に出たときの爽快感はたまりませんでした。
蒸し暑い夕方の夏空は、今年いちばん輝いていましたね。
なにも成し遂げていないのに、こんなにもやってやったぜ感を味わえる自分すごい。
そう、電話だ。
代表電話から担当者を呼び出していただきます。
……長い。保留が長いよう。ゆうに3回はメロディがまわったころ、聞き覚えのある落ち着いた声に切り替わりました。
「すみません。お待たせいたしました。先週は面接にお越しいただきましてありがとうございました。」
うわー、全然よめない。
ここまで来ても合否の気配は感じ取れません。そんなものですかね。
「〇〇の部門で採用させていただければと考えておりますがいかがでしょうか?」
おっ?さ、採用?
採用かーーなるほどーーーー。
と、心のなかで謎の態度を取ります。
次回のオリエンテーションの日時を伺い電話を切りました。
ふう。採用されてしまった…。
食い扶持が決まって胸をなでおろしつつ、新しい仕事への一抹の不安が通り抜けていきます。
気にかけてくれていたパートナーに一報を告げると「お赤飯だね。」とすぐに返信がありました。
この二ヶ月間、のびのびと無職な日々を謳歌してきたつもりでした。
それでも深夜静かに積もる雪のように、将来への、具体的にはお金の不安がこんなにもあったんだと大きな安堵が物語っていました。
自分へも仕事へも期待しすぎず、やりすぎず、やらなすぎず。
ほどほどにがんばりたいと思います。
明日コンビニに行こうかな。
久しぶりのお赤飯はきっととびきりおいしそうです。