さよならのかわりに
それはまぎれもなくやさしさだった。
ことばが生まれた瞬間、までは。
ずっと窓ぎわに置かれた雑誌のように、いつかの古い写真のように。
おだやかな経年変化によって、気づいたときにはちょっとだけ切なさと寂しさをまとっている。
そんな別れのことば。
「楽しみにしてるね。」
「今度行こうね。」
「次は誘ってよ?」
「元気でね。」
もらった数と、送った数。
どちらが多かっただろうか。
冬も終わりのような陽射しの川原を歩きながらぼんやりと考える。
さよならのかわりにふわりと届いたことばを、今日もそっと思いだしてはしまい込む。
そしていつか、ほんとうのさよならになったころ、なにもなかったように桜は咲くんだろうな。
春なんか来なければいいのに。
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