ちょっとした気の迷いから、17年

「あなたは、一人でやっていけるね」

別れ際の恋人に言われた言葉ではない。
なんと、会社の面接で社長から言われた言葉でして…。すかさず、「御社の面接を受けに来ているんですけれど～」と突っ込みを入れた次第。

フリーランスになって、かれこれ17年が経とうとしている。たまたま退職前に宣伝の仕事を貰い、そのままフリーランスに移行しただけで、特になりたかったわけではなくて。
その数か月後、わりと大きな配給会社が宣伝業務の社員募集を出したので、せっかくなので受けてみた。

たどり着いた会長＆社長面接。映画業界の有名人のお二人を前に、なぜだか盛り上がり、笑いは絶えず、途中で冒頭の「あなたは、一人でやっていけるね」と社長に言われたのでした。今すぐ宣伝ができる人が欲しい配給会社と、すでに3ヵ月先まで仕事が入っている私。どうしたって交わらない。面接が終わって外にでると、人事担当の女性に「新記録です。30分越えたのは伊藤さんだけ。普通は10分か15分なんですよ」と言われましたとさ。そしてもちろん、落ちました。

それからずっとフリーランスを続けている。
そして、ことあるごとに思う。面接のお二人の判断は本当に正しかったと。さすがに面接は数知れずやっていらっしゃるので、見る目が確か。私はあの会社にも向いてなかったし、そもそも会社勤めはできるのだけれど、あまり向いていない。あの時に面接を受けたのも、ちょっとした気の迷い。今ならわかる。
そして「あなたは、一人でやっていけるね」の一言が、フリーランスになりたての私にどれだけ、力を与えてくれたことか。ご本人はきっと覚えてもいないと思いますが、本当にありがたい一言でした。

#面接 #映画 #フリーランス