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つぶやき日記#13 ー ガレージ・ハウスって言うんですね

今年の初め、
友人宅の前が道路工事となった。
都内ではよくあることで、
この時の工事は下水道やガス管ではなく、
道路と歩道の補修という物であった。

街並みが綺麗になるから、ありがたい。

静かだけど一応幹線道路というものに面しているお家で、
その気になればお店を経営することもできる。
つまり、一階に路面店舗もしくはオフィスがついている。
もう使ってないので、シャッターは閉め切っていた。
こういう、昔ながらの小さな区画に
70年代風のビルが立っているのは、
都心に多い。

で、工事を眺めていたら、
あら、大変。

歩道と車道をスムーズに繋いで、
自転車や自動車が行き来できる「切り下げ」が、
どんどん失われていくのだそうだ。
自分の家の前もよく見てみたら、
以前、お金をかけて「切り下げ」にした部分に、
段差のあるブロックがどんどん並べられ
「切り上げ」られていく。

急いで居住する区に連絡すると
「都がやってます」
という返事。
慌てて都に連絡すると、
担当者が言うには、
「でも、実際に、車の出入りをさせてませんよね。
そういうところの切り下げは全部潰して、
飛び出しや
横断歩道のないところでの横断を
やめさせるために、
全て切り上げて、
ガードレールを設置して、
その内側に植樹をします」
と、言う返事だったそう。

一見正しいようでいて、
そこに暮らす人たちの現状は把握されてない。

彼女の家の前の歩道は、
その1ブロック先の歩道から、
突然幅が半分ぐらいに狭くなっている。
元々、人の流れがギュッと絞られて、
近所の小学生の登下校時には混雑し、
親や教師が注意喚起している。
しかも、
その歩道のブロック50メートルほどの長さに面している店舗物件などへ
自転車やバイクで乗り付ける人は、
狭い歩道の中を
自転車なら(本当はいけないんだろうけど)乗ったまま、
バイクなら降りて引きずって、
店、または自宅の入り口があるビルまで行く、
という現状。
その間、
バイクを引きずって歩く人と行き交う、
子供たちやベビーカーを押す人もいるわけで、
どうにも心配だという。

最近、自転車の法律が変わって、車道を走ることになっているが、
どれくらいの人が、これを完璧にできているのだろうか。
自転車に乗ってる時も、車を運転している時も、
怖くてたまらない、と感じるのは私だけ?

自転車が走るべき歩道沿いの車道スペースに、
荷上げ作業中のトラックなどが停まっている場合。
切り下げがあれば、
自転車は一時的に歩道に入ってやり過ごせるが、
切り下げがなくてガードレールだと、
停まっている車を、右側に大きく出て追い越す形になる。
この時、
後ろからは車が来ているわけで、
追い上げられてるようで怖い。
逆に車を運転している時は、
前を行く、頼りない自転車が
自分と接触したらと考えて怖い。

しかも、
全て切り上げてガードレールをはめ込んでしまうと、
切れ目となる50メートルの両端からしか、
自転車やバイクで入ることができない。
歩道沿いの家や店に行くために
バイクや自転車を引っ張って歩く人と、
狭い歩道の上を行き交うことになる。

と、
口を酸っぱくして説明しても、
「こういう方向で歩道を美化していますから」
ということで突っぱねられる。
ただし、
「実際に車が出入りする、ということになれば、
切り下げのままで美化してあげます。
私たちは意地悪でやっているのではありません」
という言い分だそう。

店舗部分が歩道より一段高くなっていたのが、
「絶対に車庫として利用していない根拠」
にされたらしいので、
そこの部分の水道メーターを移動させて、
入り口を斜めスロープにして車が入れるようにして、
シャッターも付け替え、
車庫の奥に居住部分を作って
住まうことにしたという。

「わかりました。切り下げのままで美化します」
と言ってもらうためには、
近所の工務店さんに設計図などを書いてもらい、
各種書類を取り揃えたそう。
当然、工事費は安くなかったので、
「この歳でローンを組んだ」
というから、お疲れ様である。

工事が終わってみると、
同じ歩道沿いのお店経営者から、
「うちの前、切り上げられちゃったから、
お店に来る人は、
オタクの前の切り下げから通してもらいますね」
などと言われるそう。
自分のところだけ頑張って切り下げた結果、
周りに使われて損しているような気がするらしい。
それに、
車庫となった部分は狭くて、
幅の狭い軽自動車でなければ、
その横を通って住居部分に行けないらしい。
お金がかかった割に、
決して豪華な車庫ではないようだ。

そういうわけで、
期せずしてガレージの奥に住むことになった友人。
そのことを、
世間話として、
知り合いの留学生に話した。
すると、
彼女は日本のMBAを取りに来ていて、
(時代は変わりました。
MBAといったら日本人が海外留学で取得する物だったのに、
今では日本のMBAを求めて
海外から来るらしい)
「企業とのコラボ研究で、
ガレージハウスのマーケティングについて調べているところ」
という。

そんな分野が日本の居住スタイルに確立しつつあるのを
知りませんでした。

でも、考えてみれば、
最近は路面駐車で車が襲われるケースが激増している。
ガレージにちゃんと仕舞えば、
愛車を守ることができるのかも。

それに
日本の昔の家屋には大きな土間があって、
外空間と中空間が、
同じ屋根の下、段差を上がることでつながっていた。
最近では、靴を脱ぐ部分として「玄関」はあるけれど、
バリアフリーの名の下、
それすら消滅してきているように思う。
元々格式のある家の入り口だった「玄関」と、
農作業などを行う、
それこそガレージみたいな場所だった「土間」では、
成り立ちも違うかもしれませんが、
広い玄関に、
荷物や自転車やバイク、それに使う工具なんかを置けてしまうのは、
とっても便利そう。

どこの国に行っても玄関があると思っていると、
大間違いで、
日本のように、
ちゃんと入り口となる部分が玄関として確保されているのは、
現代住宅ではむしろ少数派かも。
ドアを開けると、そこはリビングであった、
というのが多い。
豪華住宅や、ヨーロッパの歴史ある住居は違いますけど。

年を取ると、
確かに上り下りこそ難儀だが、
三和土(たたき)があって、
靴を脱ぎ着するスペースがある玄関というものに憧れます。

友人の場合は期せずして、
都の道路美化工事の結果、
ガレージの奥にある住居に住むことになり、
結果的にガレージハウスになっただけですが、
特に土地に余裕のある郊外の生活では、
これからの時代にあったコンセプトなのかもしれない。

参照:

やっぱり、時々若い人、
あるいは自分と違う世代の人と
話してみるのは重要だ、と思う。
世間がどんな方向に行っているのか、
気づかせてくれます。


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